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Ⅰ-Ⅲ


「では皆さんには、支援内容の詳細を説明させていただきます。ご要望とあらば付き人も用意しますので、遠慮なく仰ってくださいね」


「おおっ!」


 いっそう強くなる歓声。中には、ハーレムだ! と高らかに叫んでいる生徒までいる。


 もちろん俺や木島はまったく喜んでいない。過剰なぐらいに浮足立っている彼らは、傍から見るとそれだけ危ういオーラを放っている。

 実際、彼女は頭痛を堪えるような仕草をしていた。


「大丈夫か?」


「う、うん、ちょっと声が入ってきたぐらいだから……ユウ君の方は大丈夫? えっと、スキル、だっけ? それに私と同じのは入ってないの?」


「入ってないな。俺にあるのは戦うための能力ばっかだぞ」


「見てもいい?」


 特に断る理由もなく、俺は自分の元に来た紙を手渡す。

 上から項目を追っていく度に、木島の表情は面白いぐらいに変わっていった。


「え、何これ。数字が全部私の一万倍ぐらいあるんだけど……しかも神々の寵愛《EX》とか書いてあるし……ユウ君、本当に人間?」


「きちんとした人間だよ。まあ、昔に色々あったもんでね。その時のが――」


「木島さん!」


 空気の流れを断ちきったのは、今まさに移動しようとしていた幸道だった。


 笑みを浮かべながら近づいてくる彼を見て、当の木島は怯えきっている。俺の後ろに隠れて、完全に拒否する構えを見せていた。


 もちろん当人の方は、そんな彼女の態度が理解できていない。


「どうしたんだい? さあ、僕と一緒に皆のところへ行こう! クラスのアイドルである君がいれば、皆が喜ぶからね!」


「……」


 幸道が一言喋る度に、木島は疑いの色を濃くしていく。

 それはもはや敵意に近いものだった。お陰で幸道の方も、順調に表情が歪んでいる。食い縛った歯を見せて、今にも舌打ちをしそうだ。


 いや、訂正しよう。もうしてる。


「おいおい、僕が声をかけてるのに無視かい? そこの変な男と一緒にいたって、つまんないだけだろう? 早く僕のところに――」


「いやよ。それに、ユウ君は変な人じゃない。謝って」


「な……っ」


 思わぬカウンターパンチ。俺としてはヤツに何を言われようが構いやしないんだが、木島の方はそうでもないらしかった。


 いつの間にか、彼女は身体をピッタリと寄せ付けている。

 私はこの人から離れない、という意思表示。子供の時、よく一緒に遊んでいたのを思い出すような距離感だった


 もちろん、


「ふ、ふ、ふざけるなっ!」


 俺達が親しそうにすればするほど、幸道の感情は逆撫でされる。


「こ、こんなどこの馬の骨とも分からないやつが、僕より上だって言うのか!? 訂正しろ! いま直ぐにっ!」


「いやだって言ってるでしょ。ほら、向こうに構ってくれる人たちだっているんだし、早く行って」


「こ、この女あああぁぁぁあああ!!」


 ついに堪忍袋の緒が切れたのか。

 幸道の手に光が集まると、それは一本の長剣となった。


「は、はは、どうだ! 見ろ! これが僕の持つスキル『錬金』だ! タクイ、お前にはこれだって出来ないだろ? 直ぐにそこをどいて、木島さんを渡せ!」


「渡せってお前、モノじゃないんだからさあ」


「うるさい! 人に反抗するやつをモノ扱いして何が悪いんだっ! くそっ、お前も幼馴染だからって調子に乗りやがって……!」


「じゃあお前、クラスの人気者だからって調子に乗るのはどうなんだ?」


「く、く、ぐ……」


 犬歯をむき出しにして、幸道はみっともなく喚き立てている。

 こりゃあ説得は無理そうだ。武器まで手にしているし、無力化してしまった方がいいだろう。今後の予防にもなる。


 それっぽく剣を構えて、赤い顔のまま彼は言う。

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