04
打ち上げはお好み焼き屋さんで、最初は文化祭の作業グループに分かれた席決めだった。
あれが大変だった、なんて苦労話をしていると少しだけ大人になったような気がしてくすぐったい。
近々期末テストも控えているけれど、みんなそのことには触れたくないのか話題にも出ない。
「ひな、安藤君と一緒だったでしょ」
「あっ、うん」
さすがに一緒に顔を出したのだから、そこはバレているのはわかってる。
猫のようににんまりと目を細めた友人、宇野きよこ―通称宇野ちゃん―の表情に、少しばかり内心で引いた。
面倒なことを聞かれるという予想しかない。
「ひなは安藤のことどう思ってるの?」
「頼れる委員長」
「もー! そういうことじゃないってわかってるでしょ!」
「そういわれても…」
「ラチあかない! ちょっと安藤! あんたアピール足りてないんじゃない?」
「ちょ、宇野ちゃん!? 何言ってんの!」
宇野ちゃんは隣のテーブルで話していた安藤君を呼びつけて説教まがいなことを言い始めた。
安藤君は苦笑いで席を移動してくる。
「俺は悪くないだろ、デートまでしてきたんだから。」
「安藤君もちょっと!」
「大丈夫よ、安藤の気持ちに気づいてないのなんてひなくらいのもんだから。」
「それもそれでいたたまれない…。私ってそんなに鈍いかな。」
「人のことっていう意味ならそうでもないと思うわよ。ただひなは自分に向けられる感情に関しては鈍すぎね。」
「宇野ちゃんキッツいよー。」
「安藤はひなを甘やかしそうね。」
ばっさばっさと告げる宇野ちゃんに苦笑いの安藤君。
私としては鈍いとはっきり切り捨てられたことに机に突っ伏して落ち込んでますアピールをする。
結果は、宇野ちゃんに鼻で笑われた。
さっぱりとしていて、物事をはっきりという宇野ちゃんのことがなんだかんだで好きだ。
あきれた風を装いつつ頭をなでてくれる優しさも大好きだ!
「ひな、全部口から洩れてる。それに気持ち悪い」
「えっ、伊藤ってそっちの気があるのか?」
「ひな…ごめん、私にはそっちの気はないわ…。ほかの人と幸せになって。」
「私にもないよ! ちょっと、宇野ちゃん逃げないで!」
すすすっとさりげないはずもないが、宇野ちゃんは別のテーブルに逃げて行ってしまった。
あらぬ誤解を生みだした安藤君を恨みがましくにらめば、微笑み返されて目をそらす。
これは完璧なる敗北である。
「そういえば、さっきお兄さんになんか言われた?」
「えっ、うぅん。たぶん一人だと思ったんじゃないかな? 一緒にって誘われただけだよ。」
「うーん、そう? あの中に文化祭に一緒に来てたひともいたね。お兄さんの彼女かな?」
「どうだろ? そうかもしれないね。」
「なんか俺すごく威嚇されたよなー。」
「シスコンなんだよ、透くん。」
「シスコンか、手強いな。」
安藤君の言葉に苦笑いする。
安藤君は優しいし、私が好きだとまっすぐに伝えてくれて、くすぐったい。
告白の返事は変わらないけれど、それでも仲良くはしたいと思う私は酷いんだろう。
心の隅っこがひんやりと温度を下げて。
ずるい私が、顔をのぞかせる。
―いいじゃん、付き合っちゃえば。安藤君は私のことが好きなんだから
そんなわけにいくわけない。
私は安藤君と同じ好きがわからない。
―好きになれるかもしれない
かもしれない、にかけて、もし同じ好きになれなかったら?
そうなったら、きっとすごく傷つける。
好きになってくれたことは嬉しい、でもだからこそ申し訳ない。
「ねぇ、安藤君、ちゃんと話そう。」
「…おう。この空気だったら、聞きたくないんだけどなー。あと30分くらいで終わるから、少し外で待ってて。」
「わかった。」
あー…早く聡い青年視点を書きたい。
悟り少女視点、私は書きにくいのです…。