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キンキョリ  作者: 駒子
悟り少女
5/8

03

文化祭は楽しく終わり、本日は振替にてお休み。

デート、です。

人生初めての、デートです。


透くんやお父さんとかを除く異性と出かけるってことすら初めてです。


気合を入れるのも、変な期待を持たせてしまうかなと思って細身のデニムと淡い色合いのチュニック、カーディガンで完全に普段の私服だ。

髪だって学校にいる時と同じで済ます。

何をするかも教えてもらっていないので、とりあえずは両手が空くように小さめのリュック、スニーカーという格好。


待ち合わせの駅前には時間ぴったりにつくように、調整した。

待った?なんてお決まりのパターンはやらない。


「伊藤」

「あ、安藤君。」

「時間ぴったりだな。伊藤は遅れてくるかと思った。」

「そこまで時間にルーズじゃないよ! 安藤君は早めに来てそうだよね。」

「15分前には来てたかな。」

「さすがの時間前行動です」

「楽しみだったからな。」

「へ、へぇー。」


さらっと、笑顔でそんなこと言うのはちょっとずるいと思います!

思春期女子的にきゅんとしてしまった。


「あー、…スカートじゃないんだ。」

「え?」

「…私服、かわいい。」

「なっ、う、ん。ありがとうございます!」


今度は照れながらそんなことをいう。

やっぱり安藤君はずるいと思います!


「やっぱこういうの恥ずかしいな! さらっと言えたらかっこいいんだろうけど。」


目線をそらしながら頭をかいてるけど、そこもきゅんとしちゃうよ!?

いつもしっかりクラスをまとめてる委員長しか知らなかったから、ある意味でギャップだ。

透くんは褒めてくれるけどそれはなんか妹みたいなそんな感じで受け止めてたし。

安藤君、ちょっとかわいいとか思っちゃった。


「動きやすい格好してるなら、行きたいとこあるんだ。」

「どこでも行くよ!」

「じゃあ俺んちでも?」

「破廉恥!」

「おこちゃま思春期には早すぎたか。」

「失礼だな。」

「悪い悪い。」


文化祭の時と変わらない空気に、緊張がほぐれていく。

安藤君の気遣いが、嬉しいけど申し訳なくもなる。

駅前のアーケードを抜けて、ゲームセンター一体型のアミューズメント施設に入った。


「伊藤はこういうとこ苦手?」

「ううん、友達とか透くんとかとたまに来るよ。だいたいバドミントンばっかりだけど!」

「じゃあ今日はそこ以外も行ってみような。」

「お?ここアーチェリーがある!」

「やったことない?」

「ない!弓道部の体験入部くらいだよ。」

「じゃあ、まずそこから行くか。」


アーチェリーは私のまぐれ当たりでど真ん中に飛び跳ねて、パターゴルフは安藤君にひどい置いてけぼりを食らった。ゲームエリアでクイズゲームに言い合いをして、9ゴールのバスケットボールではボールがお見合いお互いに相手の邪魔をし続けた。キャッチボールエリアでは安藤君がアメフトボールを顔面キャッチと、笑いすぎて頬が痛いくらい。


時間いっぱい遊び倒して、お店を出た。

近くのコンビニで冷たいジュースを買って来てくれるという安藤君を、植え込みに座って待つ。

じわじわと痛い頬をマッサージしながら携帯で時間を確認すれば、あと1時間ほどでクラスの打ち上げの時間だ。

最初こそ緊張したし、見慣れない安藤君の姿にどぎまぎしたりしたけど、楽しかったな。


「ひな?」

「え、透くん…。」


文化祭の日からずっと避けてた人が、そこにいた。

5人くらいのグループで、たぶん遊んでたんだろう。

中にはひとみさんもいた。

グループに断ってから透くん一人が私の前に立つ。


「ひな、は誰かと一緒? 一人なら一緒においで。」

「えっと、友達と…」

「伊藤、お待たせ。」

「あ、うん」

「あぁ、トモダチと一緒だったんだね。」


友達という言葉をすごく強調された気がする。

気のせいか、透くんが笑っているのにブリザードを背負って見える。


「俺は告白したんですけどね。」

「ちょ、安藤君何言ってるの!?」

「へぇ…」

「考えてもらうためにデート中ですから、幼馴染のお兄さんは邪魔しないでくださいよ。」

「かわいい子につくのが悪い虫だと困るんだよね。」


透くんの子ども扱いに、胸がつきりと痛む。

透くんと私の間は、対等じゃない。


「安藤君、クラスの打ち上げ会場までちょっと距離あるから、行こう。」

「…おう」


透くんの脇をすり抜ける間際、


「夜、電話するから出てね。」


私だけに聞こえるように、透くんが小さくささやいた。

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