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昼下がりの二人

 


授業をサボって面白いことは何か

興味の為か軽蔑の為か、まあ偶に

聞かれるのだが


それはなんと言っても

全く違った校内を見れること

だと思う。


普通に授業を受けていれば教室や

体育館、指定の場所に浸りぱなっし

集団行動の真っ只中だから

教師、生徒

兎に角話し声の途絶えること

はない。

特にトイレの中なんて

合唱団が組めそうだ。


そんなところから一つ抜け出して、

まあ廊下なんか眺めて

みると面白い。

チャイムが鳴って、学校の世界は

動き出す。

一つのチャイムでクラスの馬鹿話や

購買のザワめきが始まり

また一つのチャイムで

静けさを取り戻す。


中々乙なもんだよ、これはこれで。


ただ最近はそんな感傷的なのは

止めにして随分な自由を

味わっている。

「月と六ペンス」「異邦人」

お気に入りの本を脇に置いて

硬いベンチで煙草を吹かす。


敬愛するサマーセットモームは

「良い習慣をあきらめるほうが

 悪い習慣をあきらめるより簡単」

と言っていたらしいが

全くそれには賛成だ。


「悪い習慣だ」


大きく吸って、吐いて、煙で深呼吸。

どうだ、なかなか健康的だろう。

勢いよく噴き出された煙は四方の

高い木々とそれと同じぐらいの

モルタルの校舎をゆっくりと登って

いき、徐々に薄くなる。

消える瞬間まで眺めるかと空を見つめていたら


......隣から出でる大きく

   黒々とした煙に飲み込まれた。


「なんだ?」

俺は唖然としてながらも煙の源を辿る。

ベンチの真横に小さな女の子が

しゃがんでいた。

まるで人形のように無機質

よく見積もっても

澄まし顔という表現が正しいと思う。


大きな目を半ば閉じ、シャボン玉を

吹くように静かに葉巻を咥えていた。

これだけなら非常に絵になるのだが

頭に蓑笠、ハードボイルド探偵と

いうより浮浪者という方が

合うだろう汚らしいトレンチコートを

着ている。


これではなんだか分からない。

多分、変人なのだろう。

ちょうど葉巻がフォームチェンジ

汽車ポッポと黒煙が吹き上げる。

その確信は強まった。


「おーい」


枝毛の多い長髪からちらりと

横目で覗く。


「焚き火でもするつもりか」

「………」

「それとも狼煙か」

「………」

「無視か」

「うん」

「そっか……」


調子が狂う。色々突っ込みたい事

があるのだが黒煙が中庭を超えて

遥か高空へ伸びているのを見て

中止した。

近隣住民がそれをみたらどう思う

だろうかはすぐに分かる。

体育教師、最悪警察、退学コースまで

一直線だ。


「疑問がある」


今度は目すら動かさない。


「黒煙を出しているのは放火魔

だからなのかそれともただの阿呆なのか」


彼女の顔がこわばる。気に入らない

そんな意味を持った表情が少しして

苦虫を噛み潰したものに変わった。


どうやら阿呆だったらしい。


「ズラかろう、灰皿はもってるか」


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