70話 智将ガルハダ
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そこにいた存在は一言では説明できないような存在であった。
異様なまでの雰囲気………異様な姿………。
そのどれもが、これまで見てきたあらゆる存在よりめ禍々しいものであった………。
姿形は人間と酷似している。
しかし、その人間離れした青白く血色の無い肌が彼を人間ではないという事を物語っていた。
更には、頭から生えた2本の捻れた赤黒い角、腰から生えた蝙蝠のような翼、黒く長い先端が矢尻のような角、それらが彼をハルン君同様の悪魔という存在であるという事を示していた。
だが、それらの独特な特徴でさえも、彼の個として持つ雰囲気には、多少の彩りを飾る程度でしかなかった………。
彼の『個』としての特徴………。
まず、体長は約2メートル程………。
その肉体は鍛え上げられた筋肉の鎧を纏っていた。膨張し、今にも張り裂けそうなその筋肉は、かつて見たリカム君のものよりも凄まじい肉体である。
艶のある紫の髪をオールバックにし、髪と同じ艶のある口髭を蓄え、鋭い目付きに金色の瞳を宿した妙に脂ぎったゴツい顔………。
何故か上半身は裸で、首からは金のネックレスを下げ、明らかにサイズ違いの黒のレザーのピチピチホットパンツを履き、そのパンツには黒いサスペンダーが付いている。腕と足には指先が空いた黒のアームカバーとレザーカバーを装着し、肩には用途不明な黒のトゲ付き肩当ても付けている。
更には、付けているサスペンダーの隙間からは月と太陽を模した金色のニップレスを乳首に付けている。
これらの特徴を総合すると、かつてのロックバンドのク〇ーンのボーカルによく似ている容姿であった。
とてもファンキーでワイルドだ。
………成る程、『濃い』と言っていたのはこういう事か………確かに『濃い』。
そんな、最早どこからツッコメばいいのか分からない存在が、腰に手を当てて堂々と立っているのだ。
しかも、私の10センチ程前の超至近距離
で。
………距離感近。
身長差故に、私の顔の前には調度彼の胸板があり、その近さで彼のムンムンとした熱気がモロに伝わってきて不快だ。熱くて男臭い。
戸惑いながら顔を上げてみると、調度顔を下げて此方を見るガルハダ?という目の前の異様な存在と目があった。
「えっと………あの………」
「ンフフフフフフフフ。お初に御目にかかりまするぅ。吾が輩、魔王様の忠実なる僕にして、僭越ながらも魔王軍四天王が一角『空王』を名乗らせて頂いています、ガルハダ=デモニッシュ=マーキュリーと申します。以後お見知りおきを、我が主の父君よ」
ガルハダと名乗った男は、礼儀正しく丁寧に挨拶をした後、片方の口角だけ上げてニタリと笑ったと思えば、突然に目の前で跪いてきた。
いきなりの事に驚いていると、彼は私の片手を取って………。
「親愛の証に………」
と、言って手の甲にチュっとキスをしてきた。
「………………………」
こういう挨拶の仕方は見たことがある。よく映画やなんかで貴族とかが挨拶でやっているやつだ。しかし、それでも私の記憶が確かならば、これは男が女にやるものであり、男同士ではやらないはずでは?
では、魔族特有の挨拶なのか?
そう思い、無言で魔王君を見れば、彼は無言で首を横に振っていた。更に、麗香達の方を見れば、麗香は心底気持ち悪そうな顔で此方を見ており、リリちゃんに至っては正視に耐えぬと視線を逸らす。
それらが物語っているのはこれが普通の挨拶ではないという事だ。
そう結論づけ、視線をガルハダ君へと移すと未だにキスをしていた。
止めてくれ、離してくれ。無駄にキスが長いよ。こういうのって一瞬じゃないのか?なんで、恋人との別れを惜しむ並みの時間のキスをしているんだ?しかも、無駄に唇が柔らかいの腹立つ。
「あの……もう、いいんじゃないのかい?」
流石に尋常では無い寒気に襲われ、意を決して離してくれるように頼んだ。
それはもう懇願とも言える程に。
すると、彼は手の甲から口を離し、ニヒルな笑みを携えたまま、私へと視線を向けた。
「おやおや?申し訳ありませぬ。ついつい貴方様との出会いに感激し、長めの挨拶となってしまいました」
そう言いながら、スッと立ち上がり軽くウインクをしてくる。
すいません。トイレに行っていいだろうか?吐いてくる。
「ンフフフフ。しかし、ケンゾウ様。軽い私の挨拶で照っている御様子。ンフフフフフさては………童貞ですね?ンフフフフフとても愛らしい」
しかし、何をどう勘違いしたのか、腰に手を当てニヒルな笑みで告げてくるガルハダ君。
……彼は一体何を仰っているのだろうか?
照ってる?童貞?突然何を言い出すんだ?
そもそも、私が童貞ならば、麗香達は一体どこから来たんだ?コウノトリが運んできたのかい?
こいつは何だ?どういう事だ?と、責めるように魔王君を見れば………。
またもや首を横に振っていた。
「ンフフフフフ。ですが、気にする必要はありませぬよ?生物は生まれた瞬間は皆童貞なのですぅ。それが遅いか早いかだけの違い………。恥じる必要はございません」
恥じてない。童貞じゃない。
「ンフフフフフ。しかし、我が主の奥方様の父君が童貞というのには些か驚愕を致しました。ンフフフフ、両手を上げての驚愕です。これは日記に書かずにはいれませぬな」
それでは君の我が君の奥方はどこから生まれたんだい?無から生まれたのかい?後、日記に書かんでいい。何故に他人の日記に私の童貞情報を書かれなければいけないんだ。
「ガルハダよ……それぐらいにせよ。義父上に失礼であろう?第一、義父上は童貞ではあるまい。そうでなければレイカはどこから生まれたのだ?」
流石に見かねたのか、呆然とする私に変わり魔王君が言いたい事を言ってくれた。
よくやった魔王君!流石は未来の義息子。
そんな指摘を受けたガルハダ君は、片手を目を覆うように当て、天井を仰ぎ見て………。
「これは」
手をどけながら魔王君へとスッと視線を合わせ、ニヒルな笑みを見せ………。
「手厳しい。………ンフフフフフ」
なんだこいつ。
本当になんだこいつ。
これまで50年近く生きていて、これ程までにクエスチョンマークが出てくる存在がいただろうか?否、居ない。
これまで魔王君、ハルン君、イノセリア君、ザイール君、リリちゃん等、結構な数の魔族を見てきて、大分個性豊かな存在にも慣れているつもりであった。
しかし、そんな個性溢れる魔族達の中で、彼は外見・内面どれを取っても間違いなくトップレベルの個性の濃さだ。
トップ・オブ・個性。
そう書いて『濃厚』とよんでもいい。
今までのハルン君達がウスターソースならば、彼はドロソース………いや、煮込み過ぎてソースではなくなった何かだ。
きっと、濃すぎて喉を通らない。
それほどまでに目の前の存在は、私が関わった中で最も濃すぎる存在であり、どう対処すれはいいのか分からない異物であった。
「……すまぬな義父上よ。こやつはガルハダ。先程自身で申した通り、四天王の一角を担うと共に、我が魔王軍の参謀として名を馳せる知恵者である。戦場においては『智将』としても名高く、我が右腕として働いてくれておる。まぁ……些か個性的だが、悪い奴ではない………」
魔王君の紹介に戦慄する。
参謀?智将?右腕?この濃いのが?
智将ではなく、痴の間違いではないのか?そもそも、見た目が完全に頭脳系ではなくて、肉体系だろう?その筋肉はなんなんだ?魔王君の右腕は独立して動きそうだぞ?それに些か個性豊かって、彼が些かならば、他は無味無臭という事になりますぞ?
んっ?智将?あれ?ガルハダ?これってどこかで聞いたような………。
確か………あれは………。
『義父上よ!!少しは、思考せよ!!決断の早いことは良いが、諦めの早い事は愚策であり、己の無知を表す事になるぞ!そんな事では、我が魔王軍の智将である、参謀ガルハダのように、軍を統率して戦えはせぬぞ!』
『お任せください。必ずや目標を手にしてみせましょう!何より、人間如き我が主であるガルハダ様と同じ『知将』を名乗ることが、いかにおこがましい事か、ガルハダ様に変わり教えてあげましょうぞ!!』
思い出したァ!!アイツだ!
初めて魔王君が我が家に訪れて食卓を囲んだ時、飲んで酔った魔王君が愚痴っていた…。
名前を覚えてくれない残念な智将!!
ハルン君が時折名前をだす上司!
そうか!あれか!あれが目の前の濃い奴なのか!!
「ンフフフフフ。これは、これは我が君。付け加えてのご紹介………恐縮ですぅ。そう、恥ずかしながら智将と呼ばれておりますが、それほど大した者ではございません。どうぞ気軽に接して下さいませ」
大した者だよ。別の意味で。
気軽にも接っする事ができそうにない。というより、余り関わりたくない。
「まぁ………はい」
取り敢えず、当たり障りのない言葉で濁しておこう。
「ンフフフフフ。よろしくお願い致します、ケンゾウ様。しかし、何故か知りませぬが、貴方様には私と同じ紳士かつ伊達漢な雰囲気がある………なんとも他人とは思えませぬなぁ?」
他人です。間違いなく他人です。
何だ紳士で伊達漢って?意味が分からない。それに、私は貴方程に濃くありません。濃くないよね?
フッと麗香達を見ると、麗香、エル=ムー、リリちゃんの順で横に並び、手を横に振りながら『ナイナイ』としてくれていた。
何とも救われた気分だ。
「ンフフフフフ?おやおや?そこにいますは淑女リリではありませんか?お元気でしたかな?何やら吾が輩の愛弟子が世話になったようで?それに、随分とお痛が過ぎたと聞きますが?」
私の視線から、目ざとくリリちゃんを見つけたガルハダ君が、目を細めながら睨みを利かせだした。
あー………リリちゃんが我が家に来た時のことを言ってるのかな?同じ四天王ということだし、何か思うことがあるのだろうか?
しかし、彼の言い回しに何とも言えぬストレスを感じるのは私だけだろうか?
「や、やぁやぁ……久しぶりだねガルハダ。お陰様で元気にやらしてもらってるよ?ま、まぁ、お痛をしたのは反省してるけど、ハルンについて大したことはしてないよ?というか、君は部下の監督が行き届いていないんじゃないかい?何だかやたらとパパとママに迷惑をかけているようだけど?」
な、なんだかリリちゃんが、やたらと険のある言い方をするな………。顔も笑顔だけど、どこか引きつっているし………もしかして仲が悪いのだろうか?
「ンフフフフフ。確かに。そうですね、此度は吾が輩の監督不行き奥方様の父君に多大な迷惑をかけてしまいましたねぇ。それについては深く謝罪致します。どうかお許しをケンゾウ様」
と言って、ガルハダ君は私へと頭を下げてきた。
だが、頭を下げすぎて額が膝に付いている。
体柔らか?!前屈みたいになってるけど、これって謝罪しているのか?どう見ても馬鹿にしているようになってるけど?
「それは!それは!『閉本の構え』?!本を閉じた様子を横から見たのを模した最大級の謝罪の態勢?!あっさり認めたけど、どうやら本当に反省しているようだね………」
これって本当に謝罪していたのか?土下座みたいなものなのか?不快感しか残らないぞ?
「ンフフフフフ。部下に否があったのは事実。ならば、それを認め頭を下げることは将として立つ者の務めであり義務。それができない者が将となれば軍は乱れ瓦解する。故に、吾が輩如きの頭ならば幾らでも下げよう!幾らでも謝罪を述べよう!幾らでも恥をかこう!何故ならば、吾が輩は将であるからだ!」
「うっ………」
何とも男気が溢れ、凄まじく正論らしい正論を述べるガルハダ君に、リリちゃんも思う所があったのか、たじたじとなっている。
このガルハダ君………見た目に反して非常に有能なのかもしれない。魔王君も言っていたが、伊達や酔狂で智将や右腕なんて呼ばれていないだろうし、ハルン君の様子からも部下に慕われているようだし………。
実際に、このように自身の意見を述べられるし、部下の為に頭を下げられる勇気と度量があるんだからな。
ただ1つ、懸念事項があるとすれば………。
前屈姿勢のままで言っているので、どうも馬鹿にされているようなのが極めて残念だ。
「あの………ガルハダ……君?頭を上げてくれないかい?例の筍のことなら、リカム君にも言ったが気にしてないからね?」
私がそう言うと、ガルハダ君はガバァと態勢を戻し、そこから仁王立ちとなった。
「ンフフフフフ。愛弟子から聞いていましたが、聞きしに勝る器の大きさ………吾が輩感服致しましたよケンゾウ様」
「そ、そうかい………」
誉められて悪い気はしないが、その熱い瞳を向けてくるのは止めて欲しい。ただでさえ、先のリカム君のことで満腹だというのに、これ以上ははち切れてしまう。
「ンフフフフフ。先程は貴方様を童貞と申しましたが訂正致しましょう」
そうかい、ありがとう。元から童貞じゃないが。
「貴方は好色家だ」
「嬉しくない!」
何だ好色家って?!何で童貞から好色家になるんだ?!こいつの頭の中はどうなってるんだ?!
「ンフフフフフ。そう照れずともよろしいですよ?伊達漢たる者、皆は心の中に狼を飼っていますからねぇ?かく言う吾が輩も、心に巣くっていますからねぇ。まぁ、吾が輩クラスになれば、心に龍、股間に紳士ですがねぇ…ンフフフフファファファファ!」
何だか大笑いしているが、何がおかしいのだろうか?凄く腹を抱えて笑っている。
背後では魔王君が頭を抱えているが。
妻を除いた女性陣も、酷く冷めた視線を送っている。特にリリちゃんなんかは、睨み殺さんばかりの視線を送っている。
この視線の中、平気で笑っている辺り、彼は相当な大物なのかもしれない。
「ンファファファ………んっ?おや?そちらにおわすは奥方様の母君ですかな?」
今まで大笑いしていたガルハダ君が、リビングで呑気に茶を啜っていた妻へとロックオンされた。
「あらあら?そうですよ、麗香の母の秋子です。いつも娘がお世話になっています」
妻よ凄いな………。あの濃いのを目の当たりにして全く臆した様子も見せていない。
肝が太過ぎだろう?トラックを牽引できる程に太くて丈夫だろう。
「ンフフフフフ。これは、これは、ご丁寧に紹介頂きありがとうございます母君様。こちらこそ奥方様には手取り足取りナニ取り大変お世話に成っております」
ナニを取ったって?麗香よ一体彼のナニを取ったんだ?と件の娘に目を移せば、必死の形相で否定していた。どうやらナニは取っていないらしい。もし、取っていたら公然不倫宣言である。
それから、彼は恐らく私と同じ挨拶をするつもりなのだろう。彼は妻の元へ歩みでて跪づき、その手の甲をとろうとして………。
「あらあら?ごめんなさいねぇ?私、夫以外に体のふれあいは許さないのよ」
と、手を払い、ヒンドゥー教の女性教徒並みの防御を持ってこれを撃退する。
そんな妻に私は心の底から称賛を送りつつも、気恥ずかしさを覚える。
「ンフフフフフ。これは手厳しい。ですが、その身持ちの固さ………………嫌いじゃありません」
とウインクするガルハダ君。
うん、そのウインクだけで人を殺せるのではなかろうかという威力だ。充分に必殺技になるよ。
「あらあら?面白い方ねぇ。こんな年の行った人妻を口説こうだなんて。魔王さんの所にも、ユニークな方がいるのねぇ」
これまでも充分にユニークな方は揃っていた筈だぞ妻よ?しかし、悲しいかな。妻の度量のデカさでは、これまでの者達すら『多少変わった方』で終わっている。故に、今回その妻にユニークと言われたガルハダ君は、それだけ凄い個性というこどだ。免許皆伝と言ってもいい。
決して欲しい免許皆伝ではないが。
「ンフフフフフ。お褒め頂き真に光栄ですな。その期待に応えるべく、更なる精進を致しまする」
いや精進しなくていいよ。これ以上濃くなれば対処不可能だよ。
「ところでケンゾウ様?」
うぉ?!ビックリした?!突然上半身だけグルリと振り向いてきたから驚いた!!
「な、なんだい?」
「ンフフフフフ。実は吾が輩、此度の謝罪の印として贈り物を持ってきたのですが………受け取って頂けますかな?」
贈り物?まさか、また前みたいな筍じゃないだろうな?いや流石にないか?今回はその為にわざわざ謝罪に来たのだから同じ鉄は踏まないだろう。
「あ、ありがとう………な、なんだか気を使わせてしまったみたいだね?」
「ンフフフフフ。お気になさらず、それではどうぞお受け取りくださいませ。僭越ながら、吾が輩手作りのクッキーでございます」
ガルハダ君はそう言うと、ピンクの包装紙のようなもので可愛らしく包んだ小袋を差し出し、私の手に置いてきた。
「ンフフフフフ。吾が輩、恥ずかしながら料理を些か嗜むものでして、特に菓子類はこだわりを持っており、今回のクッキーは……」
ガルハダ君は目の前で料理談義を熱く始めた。だが、今の私にその話を聞く余裕はなかった。
何故ならば、彼がクッキーを取り出した場所………それは………。
ホットパンツを開いた股間部からだった。
しかも、やけにホカホカと暖かい………。
その事実に、彼が料理を嗜むという見た目に反した衝撃的な話でさえ、霧の如く霞んでしまう。
「ガルハダ君………」
「ーーという訳でして、小麦粉を……と何でしょうか父君様?」
「いや、あの………このクッキー………今どこから取り出して………」
「ンフフフフフ。それですか?驚きましたかな?実は、吾が輩のパンツの中は次元収納袋となっておりまして、あらゆる物を大きさ・量を問わず収納できるのです。しかも時間凍結魔法がかかっておりますので、出来たての料理を熱々のまま保存できるのです」
自慢気に胸を張りながら告げてくる事実に、暫し硬直する。
そうか………そのピチピチのパンツはそんな凄いものだったのか。それでは、このクッキーがホカホカなのも出来立てであって、決して股間の温もりで暖めた訳ではないんだな。
ふむ………。
なんでパンツなんだ!?なんでそんな凄い優れものがパンツなんだ?!パンツから物を出すなんて、絶対に誤解を招くだろう!精神的にも嫌だろ!!何なんだこの嫌なド〇えもんは?!ポケットの中には夢も希望無い!あるのは玉と棒だけだぞ!
見てみろ?!妻を除いた女性陣の顔を!!ゴミを見る目でクッキーの袋を見ているぞ!
普段、無感情のエル=ムーでさえ、蔑んだ目をしているぞ?!あんな目、初めてみたよ!
ちょっとこのクッキー……どうすればいいんだ?食べたくないぞ?幾らアイテムなんちゃらから出したとはいえ、体がこれを食べることを拒否してしまう………。
だって股間から出したし………。
「あらあら?ガルハダさんの手作りなんですか?私もお菓子作りをよくするから、他の人が作ったのは興味深いわね」
いつの間にか私達の近くに来ていた妻が、私の手にあったピンクの小袋をヒョイと持ち上げた。
「えっ?母さん?」
「せっかくだから、私の作ったクッキーと一緒に食べましょう?」
えっ?妻よ?何をするつもりなんだ?
妻は小袋を開けながら、リビング中央のテーブル………正確にはテーブルの上にある、食後のお茶請けとして妻が作ったクッキーが乗った皿。
妻はその皿に向けて………。
『ザラザラー』
「「「「アァアッーー!?!」」」」
その場にいた状況を理解できていないリカム君以外から、悲鳴が上がった。
あろう事か、ガルハダ特製股間クッキーと妻特製クッキーが、皿の上でゴチャ混ぜにさせられてしまった。
しかも、悪い事に、ガルハダ君が作ったクッキーは妻と同じ丸いプレーンタイプのクッキーであり、一見して見分けがつかない状態となっていた。
「か、母さん………」
「あらあら?見分けがつかないわね?まぁ、食べてしまえば一緒だから大丈夫でしょう?はい、お父さん、取り敢えずコレを食べてみて?」
一枚のクッキーを摘まんだ妻は、私の口元へと運んできてアーンを強要してくる。
普段であれば嬉しいシチュエーションであるが、今の私には毒物を喰らわせようとする処刑人にしか見えない。
「ちょっと待………モグゥ?!」
断ろうと口を開いた瞬間、その隙を突いてクッキーを口へとねじ込まれた。
口の中にほどよい甘味とサクサクした食感が広がってくる。普通のクッキーの味だ。
しかし、長年に渡り妻の作る料理を食べてきた私には分かる。このクッキーの味は……。
「ンフフフフフ。そのクッキー……吾が輩の作ったものですねぇ」
「オゴェェェ!?!?」
そう、これは妻の味じゃない。
とすれば………。
奴の味だ!
「あらあら?そんなに叫んで倒れる程に美味しかったのかしら?」
叫んでない!エヅいてるんだ!
「ンフフフフフ。過分な反応有難いですなぁ。そこまで喜ばれると、作った甲斐があるというものですな」
喜んでない!苦しんでるんだ!
「それじゃあ他の人にも味をみてもらいましょうか?それで最終的にどちらが美味しいか比べっこしましょう?」
止めろ!止せ!まさか麗香達にも?!
「ンフフフフフ。それは良い考えですなぁ。流石は母君。では早速皆に食べてもらいましょうか?」
いかん!麗香逃げるんだ!!
「えっ?ちょ……ママ?!」
「えっと……えっと……あのママ?」
「あの・私・は・飲食・の・必要・は……」
「ニャ?えっと、どういう事ニャ?」
「義母上………我は………」
「ゴレヤ"バイ………」
「「それじゃ、食べて頂戴」」
その夜。佐沼家では股間特製クッキーを食べた犠牲者達の阿鼻叫喚が響き渡っていたという………。
大悪魔 ガルハダ=デモニッシュ=マーキュリー
Lv:811
称号:【智将】【魔参謀】【大魔術師】【空王】
【破壊王】【歌ウ者】【虐殺者】【超悪魔】
【魔導技師】【魔導闘士】【料理上手】
【紳士】【変態】【サスペンダー】
HP:170000
MP:28000
攻撃力【物理】:4000
防御力【物理】:3100
攻撃力【魔法】:4400
防御力【魔法】:5800
素早さ:2900
知識:3000
運勢:666
装備:【四次元ホットパンツ】【苦悶の肩当て】
【暗黒邪神のサスペンダー】【傲慢ネックレス】
【大魔戦斧オーガスト・クラッシャー】




