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69話 華麗なる黒猫さんのBefore After Show !!

ご意見・ご感想をお待ちしております。

  皆さん、ようこそ『激的Before After』へ。


  司会はこの私、佐沼 健三です。


  それでは、本日の改造(リフォーム)の物件をご紹介します。身長約2メートル・体重数百キロ、鍛え上げられた筋肉の鎧を纏い、獰猛な黒豹の顔を持つ獣人族の戦士リカム=ミケール君です。


  改造(リフォーム)前のリカム君は、正に男臭と獣臭がプンプンする筋肉ダルマですが、こちらが今回はどのように改造(リフォーム)したのでしょうか?


  それでは早速ですが、改造(リフォーム)後をご覧下さい!!


  まず、注目すべきは、あの2メートル越えの身長が約160センチ程まで縮み、体重も50キロ程度まで軽くなりました!体つきも筋肉の塊だったのが女の子のようなプニプニボディに!?巧みの技が光ます!!更に一番の注目点はその顔!!あのギラギラした獣の黒豹の顔が、勝ち気で、あどけない少女のような顔付きに!?


  何と激的なBefore Afterなんでしょうか!!野性的な獣人系男子が可憐なスポーツ系少女への変化!!素晴らしい仕事です!!正に奇跡と言える変身(リフォーム)です!!


  さて……そんな奇跡的な変身(リフォーム)を、もう少し見たい所でしょうが、お別れのお時間が参りました。


  それでは、また次回、お会いしましょう!それでは、さよなら、さよなら、さよなら!!












 ◇◇◇◇



「はっ?!な、なんだ今のは?!」


  なんだかよく分からないが、何処かのスタジオみたいな場所で私が司会を進行していたようなイメージが?


  夢か?錯覚か?幻覚か?


「あっ!パパ気が付いた?」


「んっ?麗香?」


  フッと横を見ると、麗香が覗き込むようにして私の顔を間近で見ていた。


「麗香……どうしたんだ?」


「どうしたんじゃないよ!突然叫んだと思えば、白目を剥いて気絶するんだもん!心配したんだからね?」


  気絶?はて、私が気絶をしていた?

  何故に私が気絶なんて………。

  という事は、先程までの妙なイメージは夢だという事か?まぁ、それならば納得だな。


「すまない……何か私のキャパを越える事態が起きたような気が………確か………」


「ニャニャ?気が付いたかニャ、ケンゾウしゃま!」


  すると、横から更に麗香に似た雰囲気の黒髪少女が現れた。そして、その頭には………。


「猫耳………リカム君?」


「そうだニャ!やっと思い出したと思えば、いきなり気絶するんだもんニャ!心配したニャんよ?」


  と、腰に手を当てながら心配そうな顔で私を見てくるリカム君。


  そうか………夢じゃなかったか………。


  現実だったのか……。


  リカム君がこんな少女のように………。


「しかし、アタイのことを忘れてしまうニャんてショックだったニャよ!いくら1日しか会っていなかったからと言って酷いじゃニャいか?」


  いや、当然だろう?変わりすぎだろが!

  なんでガチムチ筋肉獣人が猫耳少女になっているんだよ?


  整形とか、そんなレベルの問題じゃないぞ!体型……骨格からして変わっているぞ?!変身(トランスフォーム)レベルだよ!!


  最早、別物だよ!別の生物だよ!


  玉か?玉を抜かれた影響なのか?


「……いや、余りにも変わり過ぎていて分からなかったよ………」


「ニャハ?確かに最近、少し痩せたからニャ?」


  痩せたってレベルじゃないよ!どんなダイエットだよ!


「あらあら?確かに顔も丸く可愛くなったわねぇ?」


  丸くというか骨格からして変わっているんだよ妻よ!獣の頭蓋骨が人のものになっているんだよ!


「確かに確かに、言葉使いとか仕草が女の子みたいになったかも」


  仕草以前に気付くべき点があるだろリリちゃん!顔とか体とか!


「戦闘力・に・ついても・変化・が・あり・マス。私・の・測定眼(サーチアイ)・の・鑑定・結果・では・筋力量・が・若干・減り・パワー型・から・スピード型・へと・変化・して・おり・マス」


  エル=ムー……君の測定眼(サーチアイ)はとんだ節穴のようだな。あれで若干(・・)の筋力量の変化ならば、奥様方がスーパーでグラム単位の肉をバーゲンで争わないよ。今一度リリちゃんに修理してもらった方がいい。


「まぁ、確かに何か変わったかなと思っていたけど、いつも見ていたから気にしていなかったよ」


  我が娘よ………お前はどれだけ鈍感なんだ?


「いや……ちょっととかってレベルの変化じゃないんじゃ………」


「あらあら?お父さん、細かい所を気にしちゃ駄目よ?『男子三日会わざるば刮目して見よ』とも言うじゃない?男の子なんて少し見ない間に変わるものよ?」


  刮目した結果が変わり過ぎなんだが?進化の過程をすっ飛ばしているぞ?


  後、彼は今や正確には男の()になっているのだが?他ならぬ妻の手で。


「そうだよパパ。気にしても仕方ないよ」


「いや……まぁ……うん………」


  もう、あれだな………。これ以上言っても仕方がなさそうだな………。


  完全に私の方が少数派のようだし、何を言っても無駄だろう………。


  だったら最早、流れに身を任せてしまおう。


  うん、それが楽だな………。


「うん、分かった……ちょっと疲れていたのかもな……君はリカム君だ……うん。久し振りだね………」


「ニャハハハ!やっと納得してくれたかニャ?それじゃあ、改めて久し振りニャ、ケンゾウしゃま!!会えて嬉しいニャ!」


  思い出してもらえたのが嬉しいのか、リカム君はニコニコと満面の笑みを見せてくる。


  うむ……。こうやって見ると、普通の少女にしか見えないんだが……男なんだよな……。


  というか、私はさっきは男にペロペロと顔を舐められていたのか………それも、ちょっとでも悪くないと……思ってしまった………。


  なんたる………。


「あれあれ?パパ、なんか顔色悪いけど……どうしたの?」


「あらあら?リリちゃん、放っておいていいのよ。大方嫌らしい事を考えた末に、酷い目にあって意気消沈したんでしょう?」


「ママ、ママ、凄いね!見ただけで分かるんだね!」


「伊達に長年夫婦やってませんからねぇ。それに、前に部長さんに誘われて、知らずにニューハーフパブに行って帰った時もあんな顔をしていたから」


「へぇー、意外。パパってそんな所に行ってたんだ。もっと淡白かと思ってたわ」


「あらあら?お父さんだって男だもの、そういうお店にも行くわよ」

 

「えー……よく怒らないねママ」


「普段は厳しく、たまにガス抜きという甘い飴を与えるのが、亭主の手綱を握るコツよ。覚えておきなさい麗香」


「はーい、勉強になるわママ。早速魔王君にもそうしてみるわ」


  妻よ………。内緒で部長とニューハーフパブに行ったことは謝るが、目の前で意気消沈している夫を無視して、娘に亭主の扱い方をレクチャーするのは止めてくれないか?聞いていて何とも言えない暗い気分になるよ。


  後、魔王君すまない、止められなかった。故に、君もいつか手綱を握られることになるだろう。他なら妻の手で進化した麗香(きょうさい)によって。


「………それで、リカム君………今日はどうしたんだい?」


  何とか意識を建て直し、顔を上げて近くにいたリカム君へと何用かと問いかける。すると、彼は真面目な顔になったと思いきや、シュタっと目の前で正座になると、頭を下げだした。


「ど、どうしたんだい?」


  突然の事態に戸惑う私を無視し、リカム君は頭を伏せたまま、床に口が付いて喋り辛いのか、くぐもった声で語りだした。


「ケンゾウしゃま!この度はアタイの同胞たるイノセリアが大変な失礼をしてしまい、申し訳ありませんでしたニャ!!今は諸事情により来れませぬ奴に変わり、アタイが変わって謝罪しますニャ!どうかお許しく下さいニャ!」


「えっ?」


  イノセリア君の変わりに謝罪?もしかして、魔王君が言っていた彼の同僚がリカム君なのか?それで、彼が謝っているわけなのか?


「いや、ちょ……リカム君、頭を上げてくれないか?そんな急に土下座されても……」


「それでは許して頂けるんですかニャ!」


  土下座のまま、頭だけを恐る恐るといった様子で上げて、私を見てくる。


「いや……許すも何も、元から怒っていないから……だから、そんな風に畏まって謝らないでくれ………」


  というより、私達の辺り知らぬ所で、既にイノセリア君とハルン君は何らかの罰を受けているようなので、もうそれで充分だろう。


  もし、ここで『許さん』なんて言ったらどうなるんだ?処刑か?処刑されてしまうのか?なんかやりそうだな……だって魔王だし。


「それに、同僚とはいえ何故に君が頭を下げるんだい?」


「それは……あのイノセリアはアタイと同じザイールしゃまの配下で、共に切磋琢磨してきた仲ですニャ。獣人と蟲人という種族の違いはあれど、兄弟のように過ごしたニャ!故に、アイツの罪はアタイの罪も同然ですニャ!」


  ほう……あのイノセリア君と彼が……。友の為に身を投げ出す友情………何とも心温まるものじゃないか。魔族といえば冷たいイメージがあったのだが、そういう暖かい気持ちがあるのだな………。


「そうか……よく分かった。リカム君、私は本当に怒ってもいないし、イノセリア君を裁くつもりはない。だから、もう謝らなくてもいいよ」


  二人の男の熱い友情に感動を覚えつつ、本心からもう気にする必要はないと伝える。


「ニャニャ!ニャんと懐が深いんだニャ!ありがとうございますニャ、ケンゾウしゃま!!お礼に顔をペロペロ………」


「いらん!!」


「ニャ?!」


  気にしなくともいいという旨を告げた瞬間、リカム君は目をウルウルとさせながら、器用に正座の姿勢から勢いよく私へと両手を広げて飛び付こうとしてきたのだが、自分でも驚く程の瞬発力と力を持って彼の顔面を掴んで接近を防ぐ。所謂アイアンクロー状態だ。


  どうやら、体が彼の『ペロペロ』という単語に対して拒絶反応を示したのだろう。成る程、一度染み込んだ本当の恐怖というものは骨の髄まで染み渡り、一種の経験として蓄積され、次回へと反映されるらしいな。


  ナイスだ我が肉体。


「ニャニャ!?ケ、ケンゾウしゃま?お、驚いたニャ!凄まじい瞬発力ニャ!……って頭が痛いニャ!は、離してくれニャー!」


「もうペロペロとかしないかい?」


「し、しないニャー!誓ってしないニャー!」


「よし、言質はとった」


  もうペロペロをしないと誓ったことを確認してから、ゆっくりと手を離しリカム君を解放してやる。


  これでもう私の顔が、あの生暖かい舌による蹂躙がされることはないだろう。一安心である。


  というより、顔早く洗いたい。


「ママ……パパの今の反応速度……凄くない?あのリカムを一瞬で掴んだよ?」


「男ってのは自分の危機に対する防衛本能は凄いものよ。前も、お父さんを気に入って付いてきたニューハーフのジュリーさんを投げ飛ばしていたわ」


「ジュリーって、あのケツ顎?あの巨漢を投げたの?凄いね」


「ねぇねぇ、にゅーはーふって何?」


「あー………新種族かな?」


「何それ何それ!調べたい!」


「後悔するわよ。リリ」


  妻よ。私が黙ってニューハーフパブに行ったのを、それほど根に持っているのか?本当に勘弁してください。だからジュリーの事は言わないでくれ………あれは黒歴史だ。


「うニャァ……痛かったニャ。流石はケンゾウしゃまだニャ……顔が変形するかと思ったニャア………」


  いや……充分に変形しているだろ?顔どころか全体が。


「次からは飛び付かないでくれよ」


「ンニャ……分かったニャ………」


  ペタペタと自分の顔の確認をしながら、渋々といった様子でリカム君は引き下がった。


  もう2度と男に顔を舐められるなんてゴメンだからな。


  そんな事を考えていると、階段からギシギシと音を立てて誰かが降りてくる音が聞こえたかと思うと、リビングに魔王君がヌッと顔を出してきた。


「義父上よ、すまぬが此方に我が配下のリカムが来ておらぬか?あやつめ、待ちきれぬとか申して飛び出して………っと、そこにおったか。うつけめ、我が静止も耳に入れずに飛び出しおって」


  リビングに入るなりに私の前にいるリカム君を見つけると、魔王君は若干の怒気を含ませた声で彼を叱りつけた。


  その迫力たるや魔王に相応しき覇気のようなものがあり、久しく目の前の存在が魔王であると改めて実感できた。それと同時に、この畏怖堂々たる魔の化身が、娘の麗香に手綱を握られるのかと思うと、何とも言えぬ親近感が沸く。


  すると、リカム君は肉食動物を前にした小動物のようにフルフルと震わせだした。その震えたるや、携帯バイブレーションも真っ青である。


「ニャニャニャニャ!も、申し訳ないニャ!ケ、ケンゾウしゃまに会えると思うと居ても立ってもいれなかったニャア………」


  頭の上の猫耳をペタンと畳ませながら震える彼の姿が何とも哀れだ………。一見すれば少女が魔王に脅されてるように見えるが、実際は男だからな………。


「フム。焦る気持ちは分からんでもないが、次は無いと心得よ。義父上よ、すまぬな迷惑を掛けたようで」


「いや………気にしなくてもいいよ。特に問題は………無くは無いから………」


「何とも歯切れが悪いな?」


「気にしないでくれ………」


  訝しむように聞いてくる魔王君であるが、まさか男にペロペロ舐められて意気消沈してるなど言える訳もなく、気にすることがないように話を終わらせる。


  魔王君も、多少気になった様子であるが、これ以上聞くのも野暮と感じたのか、納得した様子を見せる。


  全く魔王にしておくにはもったいない程の空気の読みようだ。いや………魔王だからこそか?


「して……察するに、リカムからの謝罪は終えたようであるが?」


「はいニャ!今ほど許しを得るけとができましたニャ!」


  魔王君の問いに、シュタっと立ち上がりながら答えるリカム君。彼は一々この『シュタ』をしなければいけないのだろうか?


「左様か………ならば、義父上よ。これより義父上に部下……ハルンに変わり謝罪したいという者を此処に入れるが……構わぬな?」


  妙に重苦しい態度で言ってくるな?どうしたん………ってあれか?麗香やリリちゃん曰く『濃い』っていうハルン君の上司か?それのせいなのか?だ、大丈夫なのか?


「あっ………あぁ、別に構わないよ。部屋に入れてくれ」


  ま、まぁ、麗香達が過剰に反応しているだけかもしれないからな。実際に会ってみたら普通かもしれないからな。


  うむ、そんなに気負うことはないだろう。


「うむ、それでは入れるぞ?ガルハダよ許可は得た、入室せよ」


  魔王君がリビングの外……廊下へと向かって件の人物を呼んだ。


  んっ?ガルハダ?どこかで聞いたような?


  はて?どこで?


  そう思案している内に、廊下の床板を踏み鳴らしながら、そのガルハダなる人物が入室してきた。



「義父上よ……こやつが件のガルハダだ」

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