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6話 娘の婚約者と風呂で語り合いました。

ご意見・ご感想をお待ちしています。

「はぁ……極楽、極楽」


  私は今、家の風呂の湯槽につかって疲れを癒していた。


  こういう風に何も考えずに温かい湯槽に浸かっている時こそが、幸せだ。


  先程までの夕食の喧騒が嘘のように静かだ。


  あの後の夕食では、色々と五月蝿かった。


  魔王がビールの時と同じように……。


「異世界の愚民がどんな物を食しているのか試してやろうぞ」などと言って、唐揚げを一口食べただけで「……我が今まで食べていたものは、馬の糞だ!!」って打ちひしがれるし、麗香が好物の卵焼きの最後の一切れが消えたって騒ぎだして、隣の魔王と喧嘩をするし……。


  はぁ……疲れる。

  夕食すらゆっくり食べられないとはな……。


  まったく、魔王も一々妙な例えをするのは、止めてくれないだろうか……食欲が無くなる。


  それに麗香も麗香だな……犯人は魔王では無いというのに……。


  犯人は例の鎌を持った人骨……面倒だから骨夫でいいか。その骨夫だというのに……。


  あいつ、麗香の隣に座ったと思ったらヒョイと卵焼きを摘まんで食べたからな……。


 あれは本当に驚いたわ。


  骨なのに食事の必要があるのか?

  それ言ったら魔王もそうか。


  それで骨夫を指差しながら教えたというのに、麗香達ときたら……。


「お父さん……まさか……」


「パパ……嘘……まだ早いよ……」


「義父上よ……少し休んだ方が……」


  って、まるで私がボケたかのような目で見てきたからな………。更には腫れ物でも扱うかのように、風呂に入って休むことを薦めらてしまったしな……。


  喧嘩も止めたし、ゆっくりできるが何処か釈然としない。


  やはり骨夫は私だけにしか見えない幻覚なのか?


  ……だよな、あんな死神らしい死神みたいな奴がいる訳がないし、他の家族も見えていないし、疲れすぎた私の幻覚なのだろう。


  そうだ、幻覚だ。取り敢えず風呂で疲れを癒そう。


  だから、律儀に黒いローブを脱いで、隣でシャワーを浴びながら体(肋骨)を洗っている骨夫も幻覚だから、いずれは見えなくなるだろう。


  はぁ、本当に疲れているな……。


  一度病院で診てもらう事も考えるか。

 

  まぁ、それは後で考えよう、今はこのゆったりした極楽のような居心地を楽しもう……。


  「義父上よ、良いか?」


  極楽終了。


  私の楽園は、脆くも崩れさっていった。


  ガラス戸の向こうから、悪魔のような……。

  いや、悪魔のそのもの……… いいや、魔王が囁くように話掛けてきた。


  「ど……どうしたんだ?何か用事かい?」


「いや何……レイカより、義理父上と親交を深めるには、浴場にて裸付き合いをし、その背を流すことで深まると聞いたのでな」


  おのれ……麗香。

  本当に恐ろしい娘に育ったものだ……。

  まさか魔王を送り込み、私の楽園を破壊しにかかるとは……下手をすれば深まるのは親交ではなく、溝になるぞ?


  しかし、どうするべきか……。


  義理の息子になるならば、喜んで流してもらいたいが相手は魔王だ。


  絶対に只では済まない。


  もしかしたら、背中どころか私の命の蝋燭まで流がされるかもしれない。


  ここは、やんわりと断るか……。


「どうしたのだ?入らせてもらうぞ」


  ガラッとガラス戸を開けて、魔王が楽園へを崩壊させるべく足を踏み入れてきた。


 魔王の体は意外にも骨ではなく、良く鍛えられた筋肉質な人間っぽい身体であった。どうやら骨なのは首から上だけらしい。ただ、妙に腕が長いことと、肌が闇のように黒いことを覗けばだが………。


  そんなあまりにも呆気なく魔王の侵入を許してしまったことに憤りを感じつつも、魔王の侵入を防ぐ防壁としては、ガラス戸には余りにも荷が重かっただろうと納得もしてしまった。


  くっ!考えすぎて先を越されてしまった!!


  ここは、ハッキリと断るか!


「あーその、すま……」


「フム……ちょうど体を洗う所であったか。

  ならば丁度良い、その背を我が直々に流してやろうぞ」


「は?」


  私はまだ、湯槽に浸かっていただけで、体を洗う準備などはしていなかった筈だが……。


  とシャワーの付近を見るとそこには洗面器と、良く泡立てられた垢擦りタオルが……。



  骨夫ォォォォォォォォォォォォォォォオ!?



  視界の隅では、骨夫がこれから湯槽に浸かるところであった。


「ち、違う!それは骨夫が……」


「ホネオ?義父上よ、何を言っているのだ?

 先程もそうだが、やはり相当に疲れているようだな。どれ、我がその背を流し癒してくれようぞ」


  全く癒しとは正反対の存在に、力任せに湯槽から引き上げられ、バスチェアへと無理矢理に座らされてしまった。


  座らされるまでの間に見た、プラスチックのバスチェアが、電気椅子か拷問椅子に見えたのはきっと気のせいではない筈だ。


  後、幻覚だと思ってい骨夫もそうではないだろう。


  何故か私にしか見えないが、今もメチャクチャ楽しそうに頬杖つきながら湯槽に浸かって見てやがる。


「どれ、始めるぞ」


  魔王は、その手に垢擦りを持つと私の背中に当ててきた。


  あぁ、ついに始まる、始まってしまう……。


  そう感じながら、死刑執行前の囚人の如く目をつむり、その時を待っていた。


  が……。


  ゴシゴシゴシゴシ


  私の背中からは、丁度良い力加減で洗ってくる心地良さが伝わってきた。


「………………上手いな」


  素直に感想が出てしまった。


「そう……であるか?何分初めてなので慎重に擦っていたのだが……」


「いや、丁度良い力加減だ……」


「ならば良かった」


  何か思ったよりも普通だったので些か拍子抜けをしてしまった。


  何故か、普通の親子になった気分がする。


 外見意外は。


「義父上よ……聞きたいことがあるのだが」


「なんだろうか?」


  突然の魔王からの問いかけであったが、素直に受け入れられた。


 身体を預けたことで、若干の安心感を得られたらしい。


「正直に聞くが………義父上は我が怖くはないのか?」


「怖い?」


  魔王は背を洗う手を止め、真剣な表情で聞いてきた。


「そうだ。我は魔王だ、幾万の魔族の頂点に立つ者。本来であれば、人間共から恐れられ、忌み嫌われる存在である。

  その我が、今こうして同じ空間に居る……。

  義父上は、それが恐ろしくはないのか?」


  魔王は、声に若干の威圧感を込めながら聞いてくる。


  その声を聞くと、心臓が握り潰されるような感覚がして震えずにはいられなかった。


  だが、その声には何処と無く……寂しさのようなものを感じる。


  そして、偶然かもしれないがその震える声を……同じ質問を……昔聞いたことがあった。


「恐ろしいか……正直に言えば……恐ろしいし、怖くてたまらないよ……」


「そうか……」


  明らかに、落胆の入った声で魔王は当然か、とばかりに返事をしてきた。


「ただ……私はそれよりも恐ろしいものを知っている」


「我以上に……?」


「あぁ……ちょっと昔話をしようか?

  昔、ある少女がいたんだ。見た目はどこにでもいるような可愛らしい少女が。

  でも、その少女は女の子とは思えない程に粗暴な性格をしていたんだ。

  よく男の子と混じって遊んでいたし、自分より大きい相手とも喧嘩して勝ったりしていたんだよ」


「ホゥ、随分と見所のある少女だ」


「ハハハ……小さい頃はそれで良かったんだ、『活発な女の子』で済むんだから。

  只、成長してくるとそうもいかなかった。

  彼女は大きくなっても性格は変わらず、色々と暴れ回っていた。

  本人は、至っていつも通りにしていたんだ。

  だけど、成長してくるにつれて、周りからの視線が変わってきた。

『活発な女の子』から『少しおかしい子』ってね」


「意味が分からぬ?何故そうなる?」


「簡単さ『女らしくない』。理由はこれだけさ」


  魔王は怪訝な顔をしながら言葉の意味を考えていた。


「人間の女性は、成長していくにつれて女性らしい優しさや、慎ましさを求められる。それが無いと、全員がそうではなけど、古いタイプの人間からは大概は女らしくしろ!だの、女の癖に!ってまるで異物のように扱われてしまうんだ」


「……人間とは分からぬな」


 魔王は首を傾げ、不思議そうな顔?をする。


「私も分からないさ。そして彼女も、そういう扱いを受けたのさ。彼女は自分の何が悪いのかも分からず、昔のように接して欲しくて自分なりに頑張ったけど……全て逆効果になってしまった。皆が彼女から離れ、段々と孤立していった」


「不憫な……」


「彼女が成長していくにつれて、更にそれが顕著になってきてね……。彼女自身も内面が成長してくれれば違ったかもしれないが………性格は簡単には変えられないからね。それで、ある日決定的事件が起きてしまった……」


「事件……とは?」


「こっちの世界で言えば……傷害事件という」


「ショウガイ……ジケン?」


  首を傾げながら魔王は、その言葉を呟いた。


「要するに、人を傷付けたんだ。 彼女が高校生になった頃、彼女の昔の友人が悪い男に付け回されていたらしくてね。

  なんでも別れた後もしつこくつけ回していたらしい。ある日、街でその友人が男に乱暴されそうになっている所を目撃した彼女は、後先考えずに飛び出していった。友達を助ける為に……」


「フム、弱者を助けるは強者の務め。当然だな」


  そんな事を言う魔王に、苦笑をしてしまう。


「彼女は本当に友達を助けたい一心で男に立ち向かっていった。そして、男を完膚なきまでに打ち倒したんだ……元格闘家だという体格差倍以上のチンピラの大男をね」


「ホゥ!武闘家を倒すとは!我が軍に迎え入れたい逸材だな!して、その後はどうなった?その友人は感謝したのであろう?」


  魔王の答えに私は首を振る。


「いや……その友人は、男を倒した彼女を震えながらこう言ったらしいよ……


  『化け物』


  とね、そして友人はその場から逃げ出してしまった。

  その場に残された彼女は、騒ぎを聞き付けた警察に取り押さえられた。

  そして、助けた証人がいないから傷害罪で逮捕されてしまった……。

  幸い男には前科もあり、彼女も初犯だからと直ぐに出てきたけど……。

  警察から出てきた学校で彼女を待っていたのは、多くのバッシングや蔑む声だった……。

『暴力女』

『凶暴女』

『犯罪者』……。


  上げれば切りがない程の多くの蔑称でよばれていたよ……。ただ、彼女は友人を助けただけなのにね。

 そんな彼女を家族は必死に彼女を守り、慰めようとしたけど………彼女にはその時届かなかった。

  それで、そんな日々が数日続き……とうとう彼女は……我慢の限界に達して『キレた』んだ……」

勇者 佐沼 麗香

Lv:835

称号:【勇者】【爆撃の魔女】【戦姫】【拳聖】

【一騎当千】【狙撃王】【リア充】

HP:30000

MP:500

攻撃力【物理】:4800

防御力【物理】:3000

攻撃力【魔法】:1600

防御力【魔法】:1850

素早さ:3100

知識:100

運勢:300


装備:【防刃ベスト】【修羅の手甲】【鹿皇の靴】

【グロック17】【バレットM82】【G36アサルトライフル】【無限弾倉】【手榴弾】【加速の指輪】

【剛腕の指輪】【耐魔の首輪】【バハムート】

【(株)高島屋ハートのプラチナペアリング】


加護:【戦神の加護】

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