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63話 聖王国議会3

よろしければ、ご意見・ご感想をお待ちしています。

「キンチョーラ…‥……なんだそれは?聞いたこともないな」


「何かの魔法か?」


「いや…‥…『持ってこい』と言っているから魔法ではなく何らかの道具だろう…‥……古代魔道具(アーティファクト)の一種かもしれぬ」


「しかし聞いたことがないな…‥…新たに発掘された物かもしれぬが…‥…だが、話からするに12師団長もが恐れる程の物であることは違いあるまい…‥……」


  静寂から一変し、議場をザワザワと議論の声等が飛び交い、皆が自分の考えや意見を話している。


「しかも、アキコなる者を連れて来いと言うことは、その者が古代魔道具(アーティファクト)の使い手なのだろうか?」


「分からん…‥……ケンゾウなる謎の者の話といい、我らが知らぬ間に何かが起ころうとしているのかもしれない…‥……」


  そんな話も出る中、シャリンと錫杖の鈴の音が響き渡ると、皆が議論を止めて一斉に音の発信源である塞き止めてへと向いた。


「皆さんお静かに。リョセフ騎士長報告ありがとう、席に着きなさい」


  そう指示されたリョセフは、優雅に一礼をして席へと着いた。


「さて、まずは一度話を整理しましょう。ミャケロ博士とリョセフ騎士長からの話ですが…‥……負傷した12師団長に、何かを探している様子…‥…そして語られたケンゾウとアキコなる二人の人物の名前…‥……類似点が多くありますが、皆さんはこれをどう考えますか?」


  聖皇から投げ掛けらた質問に、皆が一度顔を見合わせ、やがてヒステ大司教が口を開いて己の考えを話した。


「恐らく…‥…そのケンゾウとアキコなる者が何らかの鍵を握っているのでしょう。最初は魔族による情報撹乱で、架空の者を語っていると考えましたが…‥そんな事をしても魔族になんの益もありますまい。予想ですが…‥…その謎の者達がハルンとイノセリアを打ち倒した…‥……そして2体は命からがら逃げたが、それでは恥だと復讐する為に個人でその者達を捜索していたのでは?」


「いや待て!ならば何故ハルン達はそのケンゾウなる者を『様』と敬称でよんでいたのだ?」


  ヒステの予想に、フレイス大司教が異論を述べる。そして、更に続ける。


「私の考えでは…‥……そやつらは新たな魔族の強者ではなかろうか?魔族内で何らかの内部抗争があり、そのケンゾウなる者達がハルン達を散々に打ちのめし実力を見せた。そして、ハルン達を使い魔のように使い、何かの捜索をさせていた。こうではないか?」


「いや、しかし…‥……」


  フレイスの考えに対し、他の者も議論を述べてザワザワと話し合いがはじまった。


  しかし、そんな中、フレイスの考えにヒステもなるほどと思う所もあった。


  確かに敵を『様』付けするなどおかしな話である。


  ならば、やはりケンゾウなる者達は魔族の手の内の者達なのか?


  だとすれば、あの12師団長クラスを打ち据える程の者である。早急に対策を練らねばならない。


  しかし、一体何を探させていたのかも気になる。まして、師団長を使い魔の如く使役して探させるなど余程の物に違いない。


  では探させていたのは、そのキンチョーラなるものだったのか?それなら、それを先に見つけて奪取すべきではないだろうか?だが、形も効果も…‥…存在さえ不確かなものをどう見つける?


  ならば、やはり少しでも情報を収集するかとを優勢すべきではなかろうか?そうすれば、もしかしたら此方に戦況が傾くかもしれないのでは?


  ヒステの頭の中では、様々な思惑や疑問が浮かんでは消えてと、何をどうすべきかと情報を整理していた。


「…‥……やはり情報が少ないですね…‥……」


  すると、いまだに続く議論を聞きながら、聖皇はそう呟き錫杖をシャリンと鳴らし再び議論に止めを掛けた。


「皆の意見は分かりました。しかし、結論を出すにもやはり情報が余りにも不足しています。ここは、そのケンゾウなる者達の情報をより集めるようにしましょう。その者達が一体何者なのか?何をしようとし、何を探させていたのか?まずはそれを優先的に情報収集し、その報告次第でその者達に対する対策を考えましょう」


  聖皇は議場にいる者達にそう指示を出し、皆もその意見に賛同の意を示した。


「この件に関しては 混乱や憶測を防ぐ為に、今はまだ世間には広めず、情報は暗部と信用のおける冒険者等を使い収集しましょう。後は、皆が各々の管理地や任務先で何らかの情報を得たならば、速やかに知らせるように」


「承知しました。しかし…‥…もし、そのケンゾウなる者達と直接出会った場合は如何しますか?」


  ヴィルデハ将軍からの質問に、聖皇は少し思案した。


「…‥……今はまだ敵対しないようにしましょう。フレイス大司教の予想通りならば、相当の実力者の筈です。下手に刺激せず、様子を見てから対応を考えましょう」


「承知しました」


  そう結論を出し、将軍達も情報が少な過ぎる故に判断を下せないでいたので、皆が素直に聖皇の指示に従う事となった。


「さて…‥……この話はここまでにして、次の報告としましょうか。次は…‥…今回特別に呼んだ部隊…‥…暗部のクセーモノ団長ですね」


  そう聖皇が述べると、一同にざわめきが起きた。


「暗部ですと?あの特殊部隊が来ているのか?」


「ほう…‥……暗部が議会に参加するなど久しぶりですね…‥……」


  皆がそんな呟きを漏らす中、聖皇に呼ばれた暗部の者…‥……端の方の席に着いていた真っ黒なロープに全身を包み、顔には奇妙な白い仮面を被った、尋常ならざる雰囲気を醸し出す異色の者が席から立った。


  暗部…‥……聖王国において影で暗躍する聖皇直轄の組織であり、密偵や情報収集や操作…‥時には暗殺等の汚れ役を請け負う、正に聖王国の闇ともいえる組織であり、国にはなくてはならない組織であった。しかしながら、その任務の黒さから国からは存在しないとされ秘匿され、その存在は国の上層部しか知らない秘密組織である。


  そして、聖皇を除くその存在を知っている者にさえ、顔等を秘密とし、徹底的に内部情報を封鎖している部隊でもある。一説には、聖王国でも癖のある者や、表に出せないような犯罪者を雇用しているという話もあるが定かではなかった。事実、この目の前の暗部の団長が男か女か、若いのか老人なのか…‥…そんな些細な事でさえ、誰も知らないでいるのだ。


  だが、このクセーモノ団長の実力は相当なものであると上層部では有名であった。故に、これでも暗部の中では比較的に名の知れた方であった。


「はい…‥…それでは、暗部が得た情報を報告します」


  そして、くぐもった男か女か判別できない不思議な声で、クセーモノ団長が報告を開始した。


  ヒステ大司教やフレイス大司教は、暗部が…‥…しかも団長が運んできた情報故に、どれだけの重要かつ貴重な事が報告されるのかと、緊張した面持ちでクセーモノ団長の話へと耳を傾けた。


「まずは…‥…四天王の一柱…‥……死王の情報ですが…‥……」


  一同は先の件もあったので、いきなり重要そうな死王の情報からきたものだと思いながら静かに聞き入る態勢となる。


  しかし次の瞬間、その静寂が破られる事となった。


「死王が名前を、リリ=リリメシュリー=リリメームから、リリ=サヌゥマに改名したらしいです」


「「「…‥……ハッ?」」」


  誰もが、そんな間抜けな声を上げる。


  ただ、ゾルック大司教だけは眉をひそめて、他の者とは違った様子を見せていたが…‥…。


「今…‥……何と言った?」


  呆然とした顔でフレイス大司教がそう尋ねると…‥……。


「死王が、リリ=サヌゥマに改名したとのことです」


  と、変わらぬ口調で再び答えた。


「意味が…‥……意味が分からぬ…‥……」


「ですから…‥……つまりは名前を一部変えたということです」


「いや!そこは分かっておるわい!!」


  意味が分からないと嘆くフレイス大司教に、クセーモノは意外と丁寧に説明に入ったが、論点が違うということにフレイスからの怒声が飛んだ。


「私が言いたいのは急に何故に名前を変えたかという事と、何故この場でそれを報告したかという事だ!」


  それは皆の心の代弁であり、当然の疑問であった。


  魔族の情勢や対応策を話合う場で、何故に死王が名前を変えたなどというどうでもよさそうな情報を…‥……それも暗部の者が持ってきたのか…‥……誰もが疑問に感じる事である。


  しかし、ゾルック大司教だけは眉間に指を当てて、何かを思い出そうとしていた。


「…‥…??そう申されましても…‥……今回暗部が得た情報では、これが一番の情報でしたので…‥……」


  何故に皆がそんなに疑問に思うのか…‥…心底分からないといった様子で、クセーモノは小首を傾げてキョトンとフレイスの方を見ていた。


「いや…‥……他にもあるだろ!!魔族がいつ攻めてくるとか!どこかを狙っているとか!そういう重要な話が!」


「いえ…‥……そういうのは特に?」


  腕を組んで、頭の上に『?』マークが浮かんでいそうな感じで不思議そうに言い切るクセーモノに、フレイスは天井を仰ぎ見て、何かを諦めたよえな表情を見せていた。


「分かった…‥……それで…‥……改名した理由は何なんだ?」


「…‥……さぁ?気分かなんかじゃないですか?」


  フレイス大司教は再び天井を仰ぎ見た。


  えっ?何コイツ?これが暗部なの?あれ?おかしくね?暗部っていったらもっとこう緊張感があって、誰も知らなさそうな情報を出してくる秘密組織とかじゃないのか…‥?


  などと、フレイスの頭の中はそんな思いで一杯になってしまっていた。


「報告はそれだけですか?」


  フレイスとは正反対に、聖皇は全くの動揺も見せない態度で、更なる情報はないのかとクセーモノへと問い掛けた。


「そうですね、後は…‥…東の森のゴブリン達の間で棍棒にリボンを付けるのがブームとか、帝国で今エルフ喫茶が流行っているとか、勇者キシルールが魔王のお茶汲みをしているとか、グリーンベアの睾丸が効果抜群の精力剤になるとか、公国の一部の女性の間でアマゾネス系メイクが流行ってるとか‥……」


「ちょっと待て!!」


  つらつらと指を折りながら情報を述べていたクセーモノに、フレイス大司教が勢いよく立ち上がりながら待てを掛ける。


  その目は見開かれ、驚きに顔を染めている。


「今、もの凄く重要な情報が紛れていなかった?!」


「重要な情報…‥……?…‥………‥………‥……エルフ喫茶ですか?…‥……お好きですね」


「違うわぁ!!」


「では、精力剤ですか?お盛んですねぇ」


「もっと違うわぁ!!!」


「それでは伝説の槍『カラボルグド』が闇マーケットに売りに出されていることですか?」


「それも違うわぁ!!だが、それはマークしとけ!!」


  ゼィゼィと息を切らしながら叫ぶフレイスに、クセーモノはポリポリとローブの上から顔をかきながら、困ったような様子をした。


「それでは何ですか?何か重要な情報がありましたっけ?」

 

  段々と砕けた口調になってきたクセーモノに苛つきを感じながら、フレイス大司教は叫んだ。


「キシルールだ…‥……勇者キシルールが魔王のお茶汲みをしてるとかという話だ!!」


  額に青筋を浮かべながら叫ぶフレイスに、クセーモノはポンと手を叩く。


「そっちですか?」


「そっちですか?…‥じゃないわ馬鹿者が!!勇者だぞ!!勇者の情報なんだぞ!?魔族への殲滅作戦以降に行方が分からなくなっていた勇者が…‥…お茶汲みしていたという情報なんだぞ?!当然であろう?それが何故に死王が改名したなどという情報よりも優先度が低いのだぁ?!まして何故にゴブリンのリボン情報などと同列扱いなのだぁ?!」


  フレイスは己の有らん限りの叫びを上げた。


  彼が何故、ここまで必死な様子でキシルールの情報を確認したいかには理由が2つあった。


  1つは単純に勇者という聖王国の象徴たる者の安否と行方が気になっていたことであり、これは此処にいる誰もが心配し知りたいことである。


  もう1つは、彼…‥…勇者キシルールがフレイス大司教の担当の勇者だからに他ならない。


  勇者という存在は聖王国になくてはならない存在であり、国の武力と人々の希望の象徴である。故に、彼らは勇者らしい戦い方から品格・様々な礼儀作法といった、勇者として相応しい所作などが常に求められる。


  しかし、勇者の素質を持った者が、誰しも最初からそのような戦闘方法や礼儀作法ができるわけでない。その為に素質を持った者は必ず、いずれかの大司教以上の者達の下の預かりとなり、そこで戦闘方法や魔法学、礼儀作法等を学び、勇者として必要な技能を高めるのだ。


  更に、勇者を育て上げるというのは大司教達にとっては一種のステータスとなっており、自身が育て上げた勇者達が活躍し名を上げることで、育てた大司教の評価も上がるのだ。故に、大司教はこぞって勇者の素質を持った者を取り合い一流の勇者として育てて、自身の地位と名声も上げようとしているのだ。


  そして、先の戦争で行方知れずとなっていた勇者の序列第5位のキシルールこそ、フレイス大司教が育てた自慢の勇者であり、戦争以降にその行方をずっと探していたのだ。

 

  そんな理由から、必死な大司教の様子を見ながら、クセーモノはうーん…‥…と唸りながら少し何かを考える素振りを見せ…‥…。


「…‥……本人が以外と乗り気でやっていたので邪魔しちゃ悪いかと?」


  と、答えた事で、再びフレイス大司教の血圧は急上昇することとなる。


「馬鹿かぁ!?そんな訳があるまいに?!勇者がお茶汲みをさせられて喜ぶ筈があるまい?!それに、何故に乗り気だと思ったのだぁ?!」


「いえ…‥……だって本人に聞いたし…‥……」


  最初のミステリアスな雰囲気は完全に無くなってしまったクセーモノは、胸の辺りで両指をツンツンと合わせながらそう言い放つと、フレイスは表情の抜けた顔で「ハッ?」驚きの声を上げた後、震える声で呟いた。


「本人に聞いたって…‥……キシルールに…‥……会ったのか?」


「えっ?はい、先の魔王軍が大陸北西部に進軍してきた際に、何故か少しの間だけ魔王が姿を消して、軍に隙ができた時期があったので、その時に潜入した際に…‥……そう言えば、あの進軍の直ぐ後くらいでしたね。死王が改名したの?魔王が姿を消したのと、何か関係があったんでしょうかね?」


  事も無げに話すクセーモノに、フレイスはワナワナと震えながら血走った目を向けた。そして、血を吐かんばかりの叫びを上げた。


「そ、そ、そ、そんな事どうでもいいわ!!潜入に成功し、キシルールに会っていただと?な、ならば何故にその時に彼を救出しなかった?」


「いえ…‥…私も隙を見てお茶の準備をしていた彼に近付いて『助けましょうか?』と聞いたんですよ?そうしたら、向こうは隷属の首輪を付けられていて喋れないようで、身振り手振りでこう伝えてきたんですよ…‥……」


  そう言いながら、彼はその時の再現をはじめた。


  それは、まず自分の首を指差してから、何かを引き裂くように胸の中心から両拳を左右に広げるような動きであった。


  これを見たフレイス大司教は、『私の首に付いた首輪を外してくれ』という意味だと瞬時に理解した…‥……が。


「ですので、私はその場を去りました」


「なんでだぁ!?!?!?」


  フレイスは天井を仰ぎ見ながら、力の限りに絶叫を放った。


「なんでだぁ!明らかに助けを求めていただろぅ!?なんで去るんだあ?!」


  最早、大司教としての威厳やなんかも省みずに叫ぶ彼を見ながら、クセーモノはキシルールの身振り手振りの再現をしながら、説明を開始した。


「いえ…‥……ですから…‥……」


  自分の首を指差し…‥……。


「『俺』」


  勢いよく引き裂くような動きをして…‥…。


「『がんばる』…‥……でしょ?」


「『でしょ?』じゃねぇぇぇぇぇ!!全然違うわぁ!?何でそうなる?完全に読み違えてるわぁぁぁ!!何でお茶汲みを頑張ろうとしてる?おかしいだろ!!」


「えっ?だって、この勢いよく腕を開く動きなんかは気合いを入れようとする表れでしょう?拳闘士なんかは試合前に良くこんな風に気合いを入れてますよ?」


「ちゃがうわぁぁぁ?!明らかに『首輪を外してくりゃああぁ』って言ってるやろがぁぁぁぁ!!?」


  言語が乱れ、狂気じみた叫びを放つフレイス大司教に、周囲の者は若干引いてはいたが、彼の気持ちも理解できるので、何も言わずに黙って二人の様子を見ていた。


「あっ!なるほど!そういう事ですか!だから去り際に振り返ったら血涙を流していたんですね?あー…‥……納得」


「納得じゃねぇぇぇぇぇ!?明らかに助けを求めていただろぉがぁぁ?!」


「ちょ!?落ち着いてくださいフレイス大司教!!」


  フレイスは、机を越えて向かいの席にいるクセーモノへと掴みかからんと動き出したが、隣の席にいるヒステ大司教が彼の腰に抱きついてその行動を阻止する。


「離せぇ!こいつは…‥……こいつは一度殴らんと気がすまん!だから離せぇ!」


「落ち着いてください!彼を殴っても何も解決しませんぞ!!ここは、キシルールが無事だったことを素直に喜びましょう?」


「ムググググググググ…‥……」


  フレイスはヒステの説得には確かに頷ける所があったので、何とか怒りを抑え込んで席に着いたが、それでも射殺さんばかりの視線だけはクセーモノへと向けていた。


「いやー…‥……こいつはやってしまいましたね…‥……ほんとすみません。次に会えたら救助しますから」


「グルルルルル…‥……」


「クセーモノ団長止めよ!フレイス大司教が人狼(ワーウルフ)みたいな横顔になっているぞ!もう下手に刺激するな!!」


  尚も飄々とした態度で挑発とも取れるような発言をするクセーモノに、ヒステは流石に刺激をするなとの叱責を放つ。


「あっ、すみません。それじゃあ…‥……私からの報告は以上です」


  そう言って席に着くクセーモノであったが、席に着きながらも、更に小さな声で一人言を呟いていた。


「いやー…‥……不味ったな…‥……キシルールさんも、そんなに待遇悪くなく働いていたしな。それに魔王はともかく、側にいた黒髪の美人さんのお付きで働いてたら、悪い気はしないんじゃないかと勘違いしてたな…‥……」


  恐らくは特に意識していたわけではなく、ただなんとなしに呟いた事であったのであろうが、それを1人の男が聞き逃さなかった。


「今…‥……魔王のそはの『黒髪』のひしんといっひゃか?ほんな容姿をしへいは?」


  これまで黙って何かを考えていたゾルック大司教が、おもむろに顔を上げながらクセーモノへと聞いた。


「えっ?あぁ、はい。遠くから監視していた際に、キシルールさんがお茶を入れていた相手なんですが…‥……この辺では珍しい黒髪に黒目の女性で、かなり整った容姿をしていましたね…‥…活発的な雰囲気に、勝ち気な顔が私好み…‥……ゴホン!!といった特徴の者でしたが…‥……それが?」


  その瞬間、議場に鈍い打撃音が響いた。


  音源は机であり、発したのはゾルックが拳を思いっきり叩きつけたからであった。


「ゾ、ゾルック大司教?」


「思いはしたそ!?やつふぁ!!ほうか、奴は来ているのか!さきほとの改名のほきから気になっていはが…‥……あの女ふぁ!!裏ひり者の魔ひょ!堕ちた勇者…‥……『レイカ』ふぁ!たひか、奴のミドルネームが『サヌゥマ』だっは!!あの女か!あの腐れ淫売の性悪女がぁぁぁ!」


  目を血走らせ、震える片手で口元を押さえながら、空気の抜けた声で罵詈雑言の怒声を放つゾルックに、皆が一様に唖然とした。


「レ、レイカ?それは確か…‥……以前に異世界から召喚した勇者ですがゾルック殿の前歯をへし折って逃亡し、今は魔王軍にいるというアノ?」


  そう、召喚された際にゾルック大司教の前歯を折りボコボコにした犯人こそ、あの麗香であったのだ。


「そうは!そのレイカふぁ!!あの『黒影の戦姫』だは!きっと奴が魔族ほもの裏側へ暗躍し、なひか企んへいるにちはいない!そうに違いない!認めはくないが、奴の力は強大だはらな!きっほ奴は死王を下ひて配下にし、証として改名さへてから共にバグラムを陥落さへたのだ!!そへならは話が通る!如何に死王とはいへ奴だけでは、3日へ陥落など不可能のはふだからな!!やふが力をかひてにひがいない!!」


  口から泡を飛ばしながら、怒りと憎しみによる狂気じみた顔で、自身の予想を口にするゾルックに、先程まで同じように怒り狂っていたフレイスでさえ冷静というか、一歩引いた状態で唖然としている。


「ゾルック大司教…‥……落ち着きなさい。その異世界召喚の件は聞き及んでいますし、そのレイカなる勇者が魔王に加担しているという報告も聞いています。しかし、だからといって個人的感情から、憶測で情報をかき乱すのはお止めなさい」


  そんなゾルックをたしなめようと聖皇が叱責を飛ばす。


  だが、ゾルックは屈辱からの余りの怒り故か、聖皇の叱責にも止まることはなかった。


「ひかひ聖皇はま!たひかに私の憶測はも知れまへんが、やふは危険には違いありまへん!いまふぐに他の勇者と軍を率いて、奴を討ち取るべひでふ!!」


  聖皇の叱責すらはね除け、尚も怒りに荒れ狂うゾルックに、皆がどうすべきかと顔を見合わせた瞬間…‥……。





「控えなさいゾルック大司教」




  静かに、美しく、だがとてつもない威圧感を放つ一言により、ゾルックは瞬時に怒りを鎮火させられ萎縮した。


  そして、声の発声原へと恐る恐るし顔を向けた。


  視線の先…‥……聖皇の着く席の横…‥……そこには絶世とも言える1人の美女が立っていた。


  歳は20代程で、金髪の腰まで届く長い髪を後ろに三編みで一本に結わえ、透き通るような力強く蒼い瞳に白い肌。女神が降臨したような美しさを持ち、その身には純白のスリットの入ったドレスのような服を着ており、スリットの間から肌が見えているが、決して扇情的ではない純粋な美しさが感じられた。そして、服の上からは白銀の細かい装飾が彫られた鎧を纏っており、その姿は正に戦乙女という他にない猛々しくも美しい神々しさがあった。


  ゾルックは、そんな彼女を恐れるような目で見ながら、震える声で呟いた。

 

「ア…‥…アンヌ…‥……しゃま…‥……」


  そう呼ばれた彼女は、静かな微笑みを見せながらゾルックへと優しく語りかける。


「落ち着きましたか?ゾルック大司教」












  彼女の名は、アンヌ=ヴェル=クラリシアン


 

  聖皇が直接育て上げた弟子にして、序列第1位の勇者…‥……つまり聖王国最強の存在。


  別名『白光の女神』として人々に希望を、魔族に絶望を振り撒く史上最強の勇者であった…‥……。

 

暗部団長 クセーモノ=デアーエ

Lv:635

称号:【暗殺者】【忍者】【無音】【影法師】

【武闘家】【うっかり者】【天然ボケ】

HP:16000

MP:3000

攻撃力【物理】:2000

防御力【物理】:1500

攻撃力【魔法】:1400

防御力【魔法】:2600

素早さ:3000

知識:1300

運勢:40


装備:【隠影のローブ】【隠密の黒衣】

【隠者の仮面】【静寂の靴】【暗器道具】

【蘇生の指輪】【遠見の水晶】

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