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62話 聖王国議会2

今回短めです!よければ、ご意見・ご感想をお待ちしています。

「どういう意味だ…‥……それは?耐性を得た?悪魔が…‥……魔人が、ホーリ=シードに対する耐性を得ただと?」


  ミャケロからの報告に、フレイス大司教はハッキリとした不機嫌な様子をみせた。


「馬鹿を休み休み言え!貴様も知っているだろ!確かに何かに対する『耐性』という能力は存在する…‥…しかし、それを得るのは生半可なことではない!そうであろう!?」


  怒りを露にするフレイス大司教に、ミャケロはオドオドと恐れた様子見せながらも、答えた。


「は、はい…‥…『耐性』という能力…‥…これを得るには大きく分けて3つの方法があります。1つは、何らかの神より賜った加護により得る耐性…‥……これは、勇者の方々等の一部の者が持つもので、神の敵対者たる魔族が持てるようなものではありません。あとの2つは…‥…幼少の頃から慣れさせて得るか…‥……過剰に摂取した上で、死の淵から這い上がり得るかのどちらかです…‥……」


  例えるならば毒への耐性。


  前者であれば、毒への耐性能力を得る為に、幼少期から食事に毒を少量ずつ入れ免疫を強化する事で耐性を得ることができる、時間がかかるが安全性が高い方法である。


  そして後者の方は死ぬ程の多量の毒を受け、死の淵より自力で毒を攻略して強制的に耐性を付ける方法であるが、これは最早論外とされている方法であり、短時間で習得できるが、死の危険性が高い上に耐性を得たとしても何らかの後遺症が残る可能性が高い方法である。


  この後者の方法は、自分から耐性を得る為にやるというよりも、何らかの事故や戦闘の後の結果的に得たという、無意識的に習得しているというのが一般的であった。


「そうだ!!ハルン=ルーンは少し前には普通にホーリ=シードが効いていたという報告があった故に、耐性を得る訓練をしていたという可能性は低い!だが、死に至る直前までのホーリ=シードを摂取し、耐性を得るなどもっと低い可能性だ!そもそも、ホーリ=シードは限られた人族の地域でしか採取されず、その数と使用方法も厳正に管理されている!もし魔族の手に渡っているならば、何らかの報告がある筈だ!それに、悪魔にとっては劇薬中の劇薬であるアレを体内に摂取し、死のリスクを負ってまで耐性を得るなど、ある筈がない!恐らく貴殿の聞き違いが、奴による情報の撹乱であろう!」


  フレイス大司教からの言葉に、ミャケロも正論であると感じているのか口をつぐんだ。


「確かに…‥…フレイス大司教の言う通りですね…‥……アレは悪魔にとっては劇薬…‥…摂取すれば死ぬ可能性の方が高いですからね。それに、ホーリ=シードが奪われという報告は上がってきていませんから…‥…恐らくは効果を無効化、または薄める力を持った古代魔導具(アーティファクト)を手にしたのでしょう。まぁ、それも問題ですがね…‥……」


  ヒステ大司教もフレイスを肯定し、ハルン=ルーン当人が耐性を得るなど考えられないと意見した。


「それよりも…‥…私の気にかかるのは…‥……ハルン=ルーンが述べていたという『ケンゾウ』なる者の名です。一体何者なのでしょうか?」


  ヒステからの疑問にフレイス大司教を除いた一同が難しい顔をした。


「くだらん!それもブラフであろう!架空の人物の名を上げて、こちらを撹乱しようとしているに決まっている!」


  腕を組ながらフンと吐き捨てるフレイス大司教に対し、ミャケロがビクビクとしながら手を上げた。


「あの…‥…その可能性はないかと…‥……」


「何故そう言える?」


  ミャケロからの反論に、フレイスはギロリと睨みながら問い掛けた。


「あの…‥…確証はないんですが…‥……あの時にケンゾウなる者の名を呟いた際のハルン=ルーンは…‥…その…‥…酷く怯えた顔をしていました…‥…それこそ、顔色が土気色に変色するぐらいに…‥……」


「それこそ演技かもしれぬだろ!?奴はこれまでに、その頭脳と策略で幾つもの都市や城塞を落としているのだぞ?こちらを惑わす為に、演技の1つや2つ平気でするかもしれぬだろう!」


「しかし…‥…あれは演技には…‥……」


「まだ言うか!!」


  オドオドとしながらも、ミャケロもここは退けぬと反論を述べるが、フレイスもまた退けぬと言い合いを始めた。


「二人共、およしなさい」


  それな二人の言い合いを、聖皇が優しくも威厳の感じられる声で止めると、二人は直ぐ様に言い合いを止め、「見苦しい所を…‥…申し訳ありませんと」と謝罪の言葉と共に一礼をした。


「フレイス大司教もミャケロ博士のどちらの言い分も良く分かります。しかし、現時点ではどちらにも判断がつきません。ですので、今の所はそのケンゾウなる者の詳細については保留としましょう。ですが、一応は皆が頭の中に留めておき、何らかの情報があったならば直ぐに知らせるようにしましょう」


  聖皇からそう指示を出されると、一同は頷いて了承の意を示した。


「それで、ハルン=ルーンについては危険度を高めて、今後より情報の収集に務め動向と対策を煮詰めていきましょう。では、ミャケロ博士からの報告は以上で…‥……」


「あの…‥……よろしいでしょうか?」


  聖皇がミャケロからの報告をまとめ、次の者からの報告を聞こうとした時、1人の男が手を上げて話に割って入ってきた。


  年は20代後半程で、この席に着いているなかでは年若い方であり、淡い緑色の髪と眼鏡を掛けた知的な雰囲気が印象的な男であった。


「リョセフ騎士長!貴様、聖皇様の許しもなく発言するなど、どういうつもりだ!まして、発言中に割って入るなど言語道断だぞ!」


  聖皇の発言中での礼儀知らずとも取れる行動に、フレイス大司教が顔を真っ赤に染めながら激昂し、緑色の髪の男…‥…リョセフ騎士長へと怒声を飛ばす。


  しかし、リョセフはそんなフレイス大司教の怒声に萎縮するどころか、涼しげな顔で何事もないような顔をしていた。


「それについては申し訳ありません。しかしながら、私が報告しようとした事がミャケロ博士の報告と余りにも酷似していた為に、合わせて聖皇様のお耳に入れた方が良いと考えたのです」


「貴様の考えなど聞いておらん!たまたま手柄を上げて、この席に着くことを許されているからといって調子に乗りおって!末席は末席らしく聞かれた時だけに答えればよいのだ!それを…‥……」


「フレイス大司教お止めなさい」


  尚も怒声を上げるフレイス大司教に、聖皇からの止めるようにと声が掛けられた。


「しかし…‥……聖皇様…‥……」


「何やら合わせて報告したいことがある様子です。ここは寛大になって、彼の話を聞いてみましょう?」


「…‥……承知しました」


  そう言われては何も言えないといった様子で、渋々ながらフレイス大司教は退いたが、それでも視線だけはリョセフを睨み付けていた。


「それでは、リョセフ騎士長。お話しなさい」


「ハッ!」


  聖皇の許しを得たリョセフは、席から立ち上がり一礼をしてから報告を開始した。


「まず、ご存知とは思いますが、我々の騎士団『新緑の盾』は、現在は大陸の北東部にある大森林地帯…‥…『メルザの森』の城塞にて、付近の防衛にあたっております」


「えぇ、それは知っています。森から涌き出てくる魔物等を討伐し、塞き止めてくれているのですよね?おかげで北東部の都市は平穏を保っていると聞いています」


  そう言われたリョセフは、誉めらた嬉しさから一瞬だけ顔を綻ばせたが、直ぐに引き締めた顔付きとなって話を続けた。


「はい、聖皇様のおっしゃる通りです。我々はその城塞で、森から出てくる魔物を討伐し付近の安全を守っていたのですが…‥…ここ数年は強力な虫型の魔物が出てきており、かなり手こずっておりました」


  聖皇は確かに、最近はメルザの森で大量の虫型の魔物が繁殖しとおり、常駐している騎士団はかなり苦戦していると聞いていた。


「それも聞いています。しかし、最近はその虫型の魔物を難なく討伐していると聞いていますが?」


  しかし、それと同時に最近新たな兵器を投入したことで、一気に形勢が変わり虫共を討伐しているとも聞いていた。


「はい。虫共の対応に困り焦っている時、そこにいるミャケロ博士に助言を求めた所、対虫用の薬品兵器を頂き、それを導入しました。薬品の効果は抜群で、次々と討伐することが可能となりました」


  聖皇がチラリとミャケロの方を見ると、彼は嬉しそうな顔でウンウンと頷き、自分の作ったものが評価された喜びに、満足した様子をしていた。


「ですが…‥…先日、我々の騎士団が森を巡回していた際に邂逅した魔族…‥…12師団長が1柱である蟲族の魔物イノセリア=アブゼクトには、一切通用しませんでした」


  だが、次にリョセフから紡がれた言葉に、彼の顔色は一気に変色した。


「なっ!?イノセリア=アブゼクトだと!?あの、かつての魔王ベル=ゼブブル=アブゼクトに連なる蟲の魔族か!?奴に邂逅しただと!?」


  これまでリョセフを睨んでいたフレイス大司教だが、彼からの爆弾発言に席から飛び上がって目を剥きながら叫んだ。


「はい。騎士団の者が、たまたま森でイノセリアに邂逅し、戦闘になったということです。幸いに此方も死者は出ていませんでしたが…‥…奴に出会った騎士から話を聞いた所、イノセリアは森で何かを探しており、しかも体の所々を負傷していたとのことです」


「なっ?!」


  驚愕した声は1つではなかった。


  ミャケロやフレイスを含めた幾人かが、驚きから、無意識に声を漏らしていた。


「私も驚きました。ミャケロ博士からの報告が、余りにも似すぎていると思いましたから。しかも、奴は去り際にハルンと同じようなことを呟いていたそうです…‥……。

『こんな薬品で私は倒せるわけがない。私を倒したくば、キンチョーラを持ってくるか、アキコ様を連れてくるのだな。あっ…‥…思い出したら手が震えて…‥……』…‥……と」


  リョセフがそう言い終わると、聖皇を含めた全員が黙り込み、場を静寂が支配した。


  暫くの間、皆が何も言わずに黙っていたが、やがてフレイス大司教が静寂を破り、皆が疑問に思っていたことを口にした。



















「キンチョーラってなんだ?」



【用語解説:その23】


【キンチョーラ】

発売から数十年と、長年に渡って愛されて使われている殺虫剤。蝿や蜂、蟻や蜘蛛といったあらゆる昆虫に効果抜群であり、故に多くの主婦の味方で、ほぼ全ての住宅の玄関には1本は置かれている程に慣れ親しまれている。

秋子がイノセリアに使用したが、異世界の昆虫…‥……というより、虫型の魔族にも効果は抜群らしく、これをくらったイノセリアは、数日生死の境をさ迷っていたらしい。

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