57話 性犯罪者?への父の怒り!
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「リリちゃん、もっとオムライスがあるけど食べるかい?」
「うんうん食べるー!」
「母さん、オムライス御代わりだ!」
「あらあら?分かったわ!これは作り甲斐があるわ!リリちゃん、遠慮せずに一杯食べてね」
「ウンッ!!」
「リリちゃん、ジュースは飲むかい?」
「飲む飲むー!」
「ハッハッハッ!どれ、どれおじちゃんが注いであげよう」
「おじちゃんおじちゃん!ありがとう!」
「ハッハッハッ!いいんだよ!」
「何だか、孫ができたみたいでいいわねぇ」
そんな幸せそうな家族の団欒風景が、リビングの扉を開けた向こう側に広がっていた。
テーブルの上に広げられたオムライスやハンバーグ、ポテトサラダにポタージュスープといった洋食メインの夕飯。
忙しそうにしながらも、どこか楽しそうに料理を運ぶ母親。
自身の晩酌をしながら、笑顔で甲斐甲斐しく幼い子供の面倒を見る父親。
そして、そんな父親の膝の上で、口の周りをケチャップまみれにしながら美味しそうにオムライスを食べる子供…‥……ではなく、今回の騒動の犯人である四天王のリリ=リリメシュリー=リリメーム。
「なに…‥……これ?」
流石の麗香もそれしか言えなかった。
何せ、反逆者であるリリを討伐し、家族を助ける為に、緊迫した空気の中で覚悟を決めて気配のするリビングに来てみれば、当のターゲットが人の実家で…‥…人の親の膝の上で…‥……我が物顔で飯を喰っているのだ。
意味が分からないのも当然だ。
(えっ?何でアイツは人の家で飯食べてるの?何でパパとママは当然のように受け入れているの?てか、何でアイツは昔の私の服を着てるの?)
この状況もそうだが、リリが何故か麗香が昔着ていたピンクのパーカーと、ショートのパンツを履いていることにも強い疑問を覚えた。
「レイカ…‥……すまぬが状況を説明してくれまいか?」
麗香の肩に手を置きながら、魔王が状況説明を求めてきた。
いや、知らないし。
麗香の心の中は、その一言に尽きた。
この場で誰よりも状況を知りたいのは麗香その人、本人であった。
「は~い、リリちゃん。オムライスの御代わりよ、次はケチャップで何を描こうか?」
「じゃあ、じゃあ…‥…骸骨♪」
「骸骨ね!任せてちょうだい…‥と、できた」
「わぁ!すごいすごい!骸骨だ!頸椎の接続部まで再現してある!すごいすごい!」
どんなチョイスでどんな絵を卵の上に描いたんだよ!と、魔王達は興味を持ったが、今はそれどころではないと判断し、一度落ち着くことにした。
「ハハハハ!流石は母さんだな!私が描かれたら、リアル過ぎて食欲を無くすよ…‥……って麗香?」
そこで、やっと父親の健三が、リビングの外にいる麗香達に気が付いた。
「あっ…‥……うん…‥……どうも…‥……久し…‥……振り…‥……です…‥……はい…‥……」
「何故に敬語?」
気が動転しているのか、父親に対する麗香の言葉と態度には、普段と違うぎこちなさがあった。
「んっ?…‥……ひっ?!魔王様!レイカ様!」
そんな中、健三の膝の上でオムライスを楽しんでいたリリが、魔王達に気付き驚愕の表情を浮かべた。
「リリよ…‥…見つけたぞ」
すると、動揺している麗香の脇を抜けて、魔王が前へと歩み出してきた。
その目は鋭く、健三の膝上のリリを睨み付けていた。
それに、背後にいたハルンとイノセリアも魔王へと続いて行った。
「義父上よ…‥…夜分に突然の訪問、誠に申し訳ない。しかしながら、火急の用事があった故に許して欲しい」
魔王は健三の前まで来ると、ゆっくりとした動作で礼をし、いまだに健三の上に座っているリリへと鋭い更に視線を送った。
「リリよ…‥……取り敢えず、義父上達に手を出していない事は褒めてやろう…‥……いや、良かったなと言うべきか?」
手を出していれば殺していた。
遠回しにそう言ったのだが、リリは直ぐに理解したらしく、顔を若干青醒めさせながら、健三のスウェットの端をギュと握った。
「ふん…‥……いつものニヤついた顔はどうした?まぁ良い、これ以上は義父上達に迷惑が掛かる故に、あとの話は城にてゆっくりと聞こうか?」
魔王はそう言いながら、更に前へと進んできた。
「い…‥……いやだ…‥……」
それに対し、リリは更に健三へとしがみつき、彼から離れまいと抵抗の姿勢を見せた。
「ほぅ…‥…抵抗するか?それならば此方にも考えがあ…‥「ちょっと待ちなさい」るぞ?」
抵抗するならば、無理矢理にでも連れていってやると、リリに手を掛けようとした瞬間、魔王の言葉を遮って健三がリリの肩に手を当てながら割り込んできた。
「義父上?」
普段見たことの無い、険しい義理の父親の様子に、さしもの魔王も戸惑いを隠せなかった。
「実は私も、魔王君に話があったんだ…‥……だが、その前にやらなければいけない事が、あるんだ…‥……リリちゃん、悪いがちょっと降りてくれるかい?」
魔王に話がある。
尋常成らざる空気に、魔王も緊張したが、義父上が何を聞きたいのかと疑問と同時に興味を持った。
リリは最初、不安そうに健三を見ていたが、健三が彼女の頭を撫でると直ぐ様膝の上から降り、トコトコと秋子の背後へと隠れてしまった。
そんなリリの姿は、普段魔王達が知っている常に歪んだ笑顔を浮かべ、外道な性格で、四天王の『死王』としての威厳や凶悪な威圧感は微塵も感じられず、外見と同様の幼い子供のような弱々しさを感じられた。
リリが膝の上から退いたことをか確認した健三は、ゆっくりと立ち上がると真っ直ぐに魔王を…‥……いや、その背後にいる者を睨んだ。
魔王は魔王で、こんな険しい顔の義父の顔は見たことが無く、どうしたのかと戸惑いを隠せないでいた。
後、健三の背後で義母 秋子が、何やら笑顔で包丁とギザギザした板…‥…擦り降ろし金を取り出していたのも、魔王達の動揺に拍車をかけた。
「話は聞いたよ…‥……ハルン君」
「ぺっ?私?!」
静かに睨んでいた健三が、突然ハルンの名を口にしたことに驚いた魔王だったが、呼ばれた当人はまさか自分がこの空気の中で呼ばれるとは思っておらず、つい驚愕し過ぎて裏返った声が出てしまっていた。
「君だよ…‥…リリちゃんから聞いたが…‥…随分と楽しんで(淫行的な事)いたらしいじゃないかい?」
「えっ?えっ?楽しむ?聞いた?ま、まさか私がついつい漏らして(情報)しまったことですか?!」
「漏らした?!(避妊しなかった的な)」
健三は目を見開き、今にも噛みつかんばかりの形相で叫んだ。
「ひぃ?!お、お待ち下さい!!許可なく漏らした(情報)件については謝罪しますが、私は別に楽しんでいた訳では…‥…ただ、嵌められ(リリの作戦)ていたことは分かっていたんですが…‥その…‥…心苦しかったですが、義理は返さなければと…‥……」
「…‥…オイオイ、ハルン君?随分な物言いじゃあないか?そこは許可(同意)をとっても幼い子供相手なら人として駄目な事だろう?しかも楽しんだ(性的)訳じゃない?義理(最早意味不明)を返す?心苦しい(だったらやるな)?さっきから何を言っているんだい?それにハメたのは…‥…リリちゃんじゃなく貴様だろうがぁ?!」
「グヒィ?!」
健三から放たれる尋常じゃないプレッシャーに、ハルンは恐怖したじろいた。
そこに、流石に見ていられなくなった魔王が間へと入ってきた。
「待て待て義父上よ!その…‥…状況は分からぬが、何やら互いに誤解があるのではないか?ここは一旦落ち着いて、冷静に話し合おいではないか?なっ?」
その魔王の提案に、健三は肩から力を抜きリラックスした姿勢を見せた。
「そうだな…‥……一度ゆっくりと話し合った方がいいな…‥……」
やっと笑顔を見せながら、そう同意してくれた義父に、魔王とハルンはホッとした様子を見せた。
「と、言うと思ったかぁぁぁ!この肉欲の性欲獣がぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
「ゴブファ?!」
だが、皆が安心した一瞬の隙を突き、超高速で飛び上がった健三は、見事な飛び蹴りをハルンの喉元へと叩き込んだ。
完全な虚を突かれ、モロに喰らったハルンは、声にならない声を出しながらぶっ飛んでいった。
「ち、義父上ぅ?!」
「ちょ…‥…パパ?!」
「ハ…‥…ハルン?!」
横で突然行われた奇襲劇に、魔王、麗香、イノセリアの3名は、目を丸くして戸惑うことしかできなかった。
そんな硬直する3名を完全に取り残し、尚も健三の動きは続いていた。
ぶっ飛んで倒れたハルンの上に乗り、健三はマウントの態勢をとった。
「ちょ?あの?!待って!ケンゾ…‥……」
「聞く耳持たんわぁぁぁ!この子供と女の敵がぁぁぁぁぁ!」
「あぶしっ?!」
「犠牲となったリリちゃんの痛みと屈辱思いを知れぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
「はぺペペペペペペぺっ?!」
「変態鬼畜ロリコンロン毛の白目紫野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉ!!」
「ごわしぃ?!」
「ちょ!パパ待って待って!ハルンが死んじゃう?!」
「安心しろぉ!殺す気だぁ!!」
「安心できない!?」
「義父上よ!止まれ!止まってくれぇ?!」
「止めてくれるなぁ!母さん塩だ!塩を持ってきてくれ!!穴という穴に擦り込んでくれるわぁぁぁ!!」
「義母上よ!持ってきてはいけな…‥……」
「お父さん塩はもったいないから、この生姜の擦り降ろしを使って下さいな」
「母さん最高だ!」
「いや最悪だ!!義母上よハルンが死んでしまう!!」
「あら?殺す気よ?」
「こっちもかぁぁぁ?!」
「ママ待って…‥……ちょ!パパ!ハルンに生姜を摺り込まない…‥……」
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ハルゥゥゥゥゥゥゥゥンンン?!」
「ハルンからメッチャ煙出てる!パパ止めてお願い!!焼けてるから!ハルンの皮膚が焼けてるから!!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「パパーっ!!パパが壊れた!!」
「イ…‥…イノセリアよ!義父上を止めよ!」
「御意!!」
「まぁ!この虫はどこから入ってきたの?スプレースプレー…‥……あった!えぃ!」
「ムッ!ナンダコノ霧ハ…‥…ゲボハァ!!」
「イノセリアァァァァァ!!」
「ママー!殺虫剤はダメッー!死んじゃう!イノセリアが死んじゃう!!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
「パパももう止めてぇー!!ハルンもう動いてないから!失神してるから!止まって!なんだか見たこともない仕方の痙攣を起こしてるか!!」
「えぃ!えぃ!えーい!」
「義母上もその謎の霧を吹き掛けないでくれ!イノセリアが見たことないくらいにビクンビクンと痙攣しておる!いや、追加の霧はいらない…‥……や、止めてくれ義母上!」
「「二人共止まってくれぇぇぇ!!」」
目の前で繰り広げられる混沌な状況に、安全地帯からそっと見ていたリリは固く誓った。
おじちゃんとおばちゃんにには逆らわず、言う事は絶対に聞こう…‥……と。
後、もう魔王の座とかどうでも良くなったので魔王と麗香にはしっかりと謝り、ハルンとイノセリアにはこれから優しく接していこうと考えた。
生きていれば。
「ハルンが血の泡を吹き出しだしたぞ!」
「イノセリアからは何か変な黄色のベタベタな液体が出てきた!!」
うん。無理そう。
【古代魔導具図鑑No.1】
【意に関せず】
クラス:【国宝級】
タイプ:量産タイプ
効果:エメラルドグリーンの色をした宝石型の古代魔導具。大きさは手のひらサイズと小さいが効果は絶大であり、魔力の使用が無くとも、装備者に対する魔術を全て無効化することができる。更に、訓練をすれば、任意で消したい魔術だけを消すことも可能である。
ただし、無効化できる魔術にも限度があるらしく、報告では第7位階魔法までは何とか耐えられるとされている。
尚、この手の古代魔導具は、別々のダンジョンから同じものが複数見つかっており、かつては大量生産される量産品であり、市販をしていたのではないかと研究者により研究されている




