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51話 髭デブ VS 狸ショタ

ご意見・ご感想をお待ちしています。

  晴れ渡る青々とした空が広がり、暖かな太陽が照らす昼下がり。


  とある住宅街にある一軒の家のキッチンでは、1人の中年…‥…いや…‥魔王様の義父である佐沼 健三が、真剣な表情で目の前にあるコーヒーカップにお湯注いでいた。





「…‥……よし。こんなものかな?」


  ドリップのコーヒーとはいえ、お湯の注ぎ方一つで味が変わる…‥……っと『髭男爵』のマスターが言っていたからな。


  しかし、マスターの教え(有料)の通りに『の』の字を描くように注いでみたが…‥…やってみると難しいものだな。8割方『の』ではなくて、ただの円を描いてしまったが…‥…まぁそんなに変わらないだろうな。うん。


「さてさて…‥……味はどうかな?」


  …‥………‥……うん、中々いいんじゃないかな?


  何となく普通にポットから入れたのとは一味違う気がする…‥…本当に何となくだが。


「さてさて…‥…コーヒーも入れたし、後はゆっくりと飲みながら小説でも読もうかな」


  今日は久方ぶりに本当にゆっくりとできる日だ。


  週末で会社は休みだし、妻は朝から主婦友達とカラオケに行っていて留守だし、車は妻が乗って行ったから日課の洗車はないし…‥…。


  特に急ぎの用事もないし、やることもない。


  こういう何も無い時間というのは本当に貴重だからな。今日は何も気にしないで、自分の思うままに体を休めてゆっくりと過ごす事にしよう。


  特に最近は、何かと忙しかったしな。


  仕事もそうだが、何よりも麗香に婚約者ができたことを絢香と茂信に伝えてからは、二人からの連絡がひっきりなしに来ていたからなぁ。


  絢香も茂信も、相手がどんな男かとしつこく聞いてきたが…‥…流石に電話口で説明できるような相手ではないから『会えば分かる』と言って、親族の顔合わせの日を待つように言っているが…‥……二人共かなり怪しんでいたなぁ。


  まぁ、仕方ないだろう…‥……。


  まさか電話口で『麗香の結婚相手は魔王だよ』などと言ったら、頭がおかしくなったと思われて、間違いなく救急車を呼ばれ病院送りだ。


  茂信は『親父…‥…とうとう…‥……』とか言いそうだし、絢香に至っては下手したら実家に帰ってきかねないな…‥……あの子は優し過ぎるからな…‥……。


  …‥……うん。やはり直に会ってもらった方が説明もしやすいし、理解もしてくれるだろう。


  何より、私へのダメージが少ない。

 

  魔王君の存在を理解してもらってから色々と話し合えばいいだろう…‥……そう、色々と。


  とと、今日はそんな考えごとはしないで、ゆっくりと過ごすことにしたんだったな。


  さて、コーヒーも入れたし、リビングに移動してソファーに座りながらゆっくりと小説でも読もうかな。


  さて…‥…何を読もうか?買ったはいいが、暇が無く読まずに貯まっている本が一杯あるからなぁ。


  ちょっと前に話題になった『火柱』にしようか?それとも今度映画化する予定の『犯人は誰だ?!俺だ!!』にしようか?


  う~ん…‥…悩むなぁ。まぁ、今日は時間があるし、ゆっくりとそれも考えよう。







 ◆◆◆


  などと考えてリビングに移動したが…‥……。


「しまった…‥……こいつらの存在をすっかり忘れていた…‥……」


  そう…‥……休みだと浮かれて、完全に奴らの存在を忘れていた。


  奴ら…‥……そう…‥……私にしか見えない幻覚…‥……いや、最近では幻覚かどうかすら怪しくなってきている勝手に我が家に住み着いた謎の存在達…‥……。


  黒く禍々しいローブを纏った人骨こと『骨夫』と、最近増えた銀色の毛皮をした狐こと『ギンコ』の2体である。


  ついでに『ギンコ』というのは、まんま銀色の狐だからと私が付けた名称である。


  センスがない?放っておいてくれ。


  とにかく、リビングに来てみればその2体が、テレビとソファーを占拠して何やらゲームに勤しんでいた。


  確か、少し前に骨夫が例の通販で買ったゲームで、最新の…‥……『パーフェクトステーション4』…‥……だったか?流石に妻が居る時は気を使ってやっていなかったが…‥…くっ!私が休みの日にやるとは…‥……これでは騒がしくてゆっくりと過ごせないじゃないか!


  それに、そのゲーム機の格闘ゲームを2体で仲良く…‥…いや、かなり真剣?というより血眼?になってやっているな…‥……。


  骨夫は立ち上がってコントローラ―を持ちながらキャラと同じように暴れて動いているし、ギンコは器用に鼻先と前足…‥…時には尾の先を使ってキャラを操作しているが…‥…その動きが尋常じゃなく速くて怖い…‥……。


  2体共、メチャクチャに真剣勝負をしてやがる。


  一体何が彼らをそこまで駆り立てるのか…‥……ってアレか…‥……。


  リビングのテーブルの上。そこには妻が小腹が空いたら食べてくれと置いていった妻手製のドーナツが皿の上に1つだけあった。


  朝に見た時は、確か5個程のドーナツが皿の上にあったはずだが、この2体が早々に食べたのだろう。


  そして、今は最後の1個を取り合ってゲームで勝敗を決して勝った方が食べるとかって流れなのだろう。うん。













 

 




  いや、勝手に食うなよ?!


  何でこいつら勝手に食ってるんだ?それは私のやつだろう?何故に然も自分達のおやつとばかりに食べてしまっているんだ?おかしいのか?おかしいだろう?


  妻の作るドーナツは、非常に美味で、近所でも『店を開いた方がいいよ』と言われる程に評判がいいのだ。


  故に、私だって大好物で楽しみにしていたというのに…‥……。


  というか、最後の一つは私に権利があるんじゃないか?てか、あるだろう?


  どれ…‥……2体がゲームに集中している隙にドーナツを…‥……と思ったが止めよう。


  何故だか知らないが、私の中の本能が「ソレに手をだしちゃあアカンよ」と、何故か関西弁で警鐘を鳴らしてきた。


  …‥……うん。自慢じゃないが、昔からこうゆう事に関しては勘が働くのだ。


  確かに良く考えれば下手したらこの2体の敵意を買うことになる。そうなれば、この人外2体が何をしてくるか想像がつかない。


  くっ…‥…ここは本能に従って手を引こう…‥……そのドーナツはお前達にくれてやろう。だが骨夫よ、覚えておけよ?貴様が冷蔵庫にしまっている取って置きのお取り寄せプリンを1つ頂くからな?それで等価交換ということで勘弁してやる!


  そう考えて手を引き、骨夫の背後を睨んだが、その時に気づいてしまった。


  骨夫がいるテーブル付近に転がるプリンの容器の残骸達に…‥……。


  まさか…‥……先に攻略済み…‥……だと?


  プリンを食べた上でドーナツにまで手を出したというのか?こ、こいつらは…‥……。


  なんて強欲な奴らなのだろうか…‥…クソッ!今日の所はお前達に譲ってやるが次は無いからな!!てか、血糖値が上がって糖尿病になってしまえ!!


  と思ったが、血どころか肉も皮も無い骨夫にそれを期待しても無駄だった事に気付き、妙な虚無感に襲われてしまった。


  それらを忘れる為にリビングにある一人用の座椅子に座り、いつもより苦いコーヒーを飲みながら小説を読み、自分の世界へと引きこもる事にした。




 ◆◆◆


『You Win!!』


  そんな音声と共に画面の中のキャラは飛び上がって喜び、負けた方のキャラは地面を叩いて悔しがっている。


  そして現実(リアル)な世界でも、勝ったギンコが器用に二足歩行で飛んで喜び、骨夫は画面のキャラと同じ…‥……というか、ほぼ連動した動きで悔しがっている。


  骨夫よ…‥……そこまでキャラになりきらなくて良いのでは?





  結局あの後、ゲームの音声とカチカチというコントローラ―の操作音が煩くて集中できず、最早開き直って2体のゲームを見学することにした。


  どうやら格闘ゲームの5本勝負をしているらしく、先に3本先取した方が勝ちらしい。


  先程の勝負で4回戦目だったらしく、ギンコが勝って2本取ったらしいが、骨夫は既に2本取っていたらしい。


  つまり次が最終ラウンドで勝負が着くということだ。


  ふむ。半ばヤケクソ気味で見ていたが、こうやって見ると中々に面白いものだな。


  何よりも、この骨夫とギンコが本気(ガチ)というのが勝負を熱くしており、見ている側にも白熱した雰囲気を感じさせてくれる。


  何だかアレだな。ちょっとした総合格闘技の試合を見ているようだ。


  そういえば、総合格闘技といえば茂信はどうなっただろうか?元々余り連絡をよこさない奴だが、総合格闘技の選手を目指しジムに入ってからは、下積み雑用の仕事が忙しいらしく、更に連絡をよこさなくなったから近況がわからないんだよなぁ。


  この間の電話も一方的に麗香の事だけ聞いて、自分の報告は一切無かったからな…‥…。


  …‥……今度こっそり様子でも見に行くかな?


  と考えていたら、骨夫達の最終ラウンドが始まった。


  茂信の事は後で改めて考えようか。さて、どちらが勝つかな?


  しかし…‥……骨夫達が使っているキャラなんだが…‥……なんというか気になることがあるんだよなぁ。


  骨夫はデブで巨体の髭面の…‥…明らかにパワータイプ?といったキャラを使い、ギンコはタネキの耳と尻尾があるテクニックタイプの可愛い男の子のキャラを使っている。


  何だろうか?自分とは真逆に位置する姿のキャラを使っているな。


  自分の今の姿にコンプレックスでも抱いているのだろうか?骨がデブを使い、狐が狸を使っている…‥……。もの凄くシュールな光景を見ている気がする。特にギンコが狸を使っているのは正直おもしろい。


  狸と狐が対極にしてライバル的存在であることなど、人間が勝手に思い込んでいることであろうが、それでも見ていておもしろ気がする。


  まぁ、偶然にそうなっているのかもしれないが、何となく気になってしまった。


  おっ?そんな事を考えているうちに、骨夫達の戦いもクライマックスだな。


  互いに体力は僅かで残り時間も後10秒程だ。

 

  ここから相手の体力を如何に少しでも削るか、もしくは止めを刺すか。中々に見応えのある試合展開になってきた…‥……っお!骨夫のキャラのカットインが出てきたな!これは必殺技か?骨夫が一気に決めにきた…‥……ってグルグルパンチ?デブの髭面のオッサンの必殺技がグルグルパンチだと?幼稚園児や小学低学年がやるような技がオッサンの必殺技だと?大丈夫なのか?これ相手を倒せるのか…‥……って!おぉ!ギンコのキャラもカットインがきた!こちらも必殺技か!…‥……ってこっちもグルグルパンチだと!?


  なんなんだこのゲームは!?なんで違うキャラで必殺技が同じなんだ?しかも何でグルグルパンチなんだ!もっと他にあるだろうが!

  手から何か波動を出したり、火を吹いたりとかさ…‥……。このゲームの会社はやる気があるのか?!


  あっ?テーブルの脇に置いてあったゲームのパッケージを見たら『グルグルファイターズ』って書いてある…‥……。


  何だよグルグルパンチがメインのゲームって?最近の若い奴らの間では流行っているのだろうか?…‥……わからん…‥……私も歳をくってしまったということなのだろうか…‥……。


  などと考えている間にも状況は進み、画面の左右からデブと狸がグルグルパンチをしながら互いに中央へと近づいていく。


  えっ?もしかして、このグルグルパンチで勝敗が決するのか?何だ、それはダサい!!締めがグルグルパンチなんて格好が着かないぞ!!確かにグルグルパンチがメインだろうけと、もうちょっと格闘ゲームらしく迫力ある技の出し合いとか駆け引きとか…‥……。


  そう思い、骨夫達を見れば必死の形相で何やら様々なボタンを連打している。


  恐らく様々なボタンを連打する事で、技の威力や速度が上がるんだろう。どうやら私の不満など空しく、彼らなりにこのゲームならではの駆け引き?らしき事が行われているらしい。


  うん。もう黙って見ていよう。


  正直、どちらが勝ってもいいからな。というか、寧ろ勝った方は私のドーナツを余計に一個食べることになる憎い敵となるな。


  さて…‥……どちらが勝つのか?間もなく互いのキャラがぶつかり合うな。それに伴い、骨夫達の連打も激しくなってきた。


  おっ?もうすぐぶつかるな?後少し…‥後少しで…‥……。



『キュィィィィィン!!ドォン!!』



  なっ?何だ!後少しで勝敗が決するというときに、妙な音と共に揺れが…‥……ってこれアレだな…‥……多分『転移門』が起動したな…‥…。


  あの『転移門』…‥…初日以降から、起動すると妙な電子音っぽい音と共に、僅かな揺れと停電を起こすようになってしまった…‥…。


  原因は分からないらしいから、そのままにしているが…‥……正直心臓に悪いなぁ…‥……いきなりで地震かと思うってしまう…‥……それに一時的とはいえ、停電になるのも…‥………‥……ってあっ!


  今の停電で、画面とゲーム機が停まってしまっている!ついでに骨夫とギンコも、口を開いてコントローラーを持ったままフリーズしてしまっている…‥……。


  勝敗は…‥……うん…‥……これはアレだな。


「…‥……ドンマイ」


  取り敢えず、それだけ言ってこの場を離れよう。何だかいたたまれない気持ちになってしまうし…‥……。


  というより、『転移門』が起動したという事は、誰かが来たようだな。


  麗香達かな?…‥……いや、待てよ。


  確か、ちょっと前に麗香達から『暫くは聖王国攻略の為の基盤作りに忙しいから帰ることができないから』と、どこからツッコメばいいのか分からない残念がったコメントの連絡があった筈だ。


  あれからまだ数日も経っていない筈だが…‥。


  予定が変わって帰ってきたか、はたまたハルン君のような魔王君や麗香からの使者が来たのか…‥……。


  取り敢えず、元書斎こと…‥現転移部屋の様子を見に行くか。まずは誰が来たのか確認はしないとな。


  私は誰が来たのか確認すべく、二階にある転移部屋へと向かった。


 ◆◆◆◆◆



  なんだろうか…‥……。


  二階に上がってきたら、廊下の真ん中で何者かが此方に背を向けた体勢で辺りをキョロキョロしているな…‥……。


  あの様子から、もしかしてあれが今転移してきた者なのだろうか?


  …‥…多分そうだろうな。物珍しそうに辺りを見ているし…‥……というより、あの背格好に体型…‥……着ているパーカーのフードを被っているので顔は見えないが…‥……アレって子供じゃないだろうか?


  うん間違いないな。子供だ。


  身長が低いし、低学年の小学生位の子供だ。


  何でそんな子供が我が家に転移を?と考えていたら、子供が私に気付いたのか、振り返って此方を見てきた。


  って、こちらに向き直って小走りで近づいてきたな。


  おっ?顔がチラリと見えたが…‥女の子か?


  可愛らしい顔をしているが、随分と色白な子だな…‥……って!?



  私はこの時、近づいてくる彼女に目をやったた瞬間、突如として体が硬直してしまった。


  しかし、私の前に現れた謎の女の子は、そんな私の様子などお構い無しに目の前に立ち止まると、ニッコリと無邪気に笑いながら口を開いた。




 













「ねぇねぇ!初めまして今日は!僕の名前はリリっていうの!よろしくねおじちゃん!」

魔蟲戦士 イノセリア=アブゼクト

Lv:482

称号:【大戦士】【魔蟲ノ主】【鉄壁】【拳闘士】

【忠義者】【武闘家】【蟲使い】【カタコト野郎】

HP:31500

MP:1000

攻撃力【物理】:1700

防御力【物理】:2400

攻撃力【魔法】:400

防御力【魔法】:1500

素早さ:2200

知識:200

運勢:130


装備:「我が身こそ最強の武器であり、最硬の鎧なり!!」(全裸)

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