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47話 魔王の義弟

「全く…‥…人の名前を聞いてどうするつもりなのか…‥……」


  茂信は、走り去ってゆく二人の女子高生の後ろ姿を見ながら呟いていた。


  そんな茂信に、突然背後から堅二が肩に腕を回してきながら呆れた声で話した。


「お前…‥……鈍感なのも大概にしろよ…‥……」


「鈍感…‥……ってなんっすか?」


  心底意味が分からないといった顔の茂信に、堅二は若干の苛立ちを見せながらも諭すように耳元で語りさた。


「いいか?お前は完全にあの二人に惚れられたんだよ!」


「はっ?なんで突然惚れられるんっすか?」


「お前…‥…いいか?女の子がピンチの時に颯爽と現れて助けてくれるヒーローに惚れない訳がないだろ!?まして、一方的に相手を圧倒するようなイケメン野郎なら尚更だコンチクショウがぁ!!」


「なんで最後きれてんてんですか?まぁ、何となく先輩が言いたいことは分かりましたよ…‥……」


  堅二の悲痛な叫びに同意せざるを得ないなと感じた茂信は、適当に同意を示して話を切り上げることにした。


「本当に分かってんか?まぁ、いいか。それよりも、こいつらはどうするんだ?」


  堅二は周辺で未だに失神している金髪達を指で指し示しながら、金髪達の後処理についての意見を聞いた。


「いや…‥…下手に手を出さないで放っておきましょう」


  しかし、それに対して茂信は淡々と答えながらも、金髪達をそのままにしておくという なんともドライな返答が返ってきた。


「いいのか?目を覚ましたら面倒なことになるんじゃないか?」


「かも知れませんが…‥まぁ、俺はフードで隠れていたんで、顔がバレてないですから報復とかは問題ないでしょう」


「なっ!俺はモロバレだぞ!」


  堅二の格好は、赤のタンクトップにジーパンという己を完全にさらけ出した服装をしており、その特徴的過ぎる顔からも、完全に金髪達からは覚えらていることは間違いなかった。


「タンクトップだけの先輩が悪い」


  だが、茂信はそんな堅二にドライな一言だけを掛けた。


「なっ!せっかく助けに入った偉大な先輩が報復で襲われてもいいのか?」


「いや…‥…誰が偉大なんですか?それに別に俺一人でも対処できましたし、先輩は襲われても返り討ちにするでしょう?」


「まぁな!!って、コラ!俺がそう言いたいのはそんな事じゃなくてな!もうちょっと俺を先輩として敬って欲しいというか、小バカにするような態度を改めるとか…‥…」


「はいはい、リスペクトしてますよセンパイ。スゴイスゴイ」


  熱く語る堅二に、茂信は実にドライな態度で答えた。


「だからそういう所!本当にお前は高校の頃から変わらねぇな!!まぁ、もう諦めているから今更期待はしてないがな…‥……」


  茂信と堅二は高校からの先輩後輩の付き合いであり、互いに気があって行動を共にしている為に、良く気心の知れた仲であった。故に、こんなやり取りは二人の間では日常茶飯事だった。

 

  そんな腕を組み、やれやれと溜め息を吐く堅二を横目で見ながら、茂信はクスリと一瞬だけ笑った後に倒れる金髪達に目を移した。


  その視線の先には、キャップの男が倒れており、そのポケットからは倒れた拍子に投げ出されたビニールの袋に入った『黄色の錠剤』があった。


「それにコイツら…‥……薬をやっているようですし、警察に行くようなこともないでしょう。下手したら逆に捕まりますしね」


  キャップの男が持っていたもの…‥……それは、

 最近巷で若者に流行っているという、合法ドラッグの一種であった。


「なるほどな…‥……」


「それでも心配なら警察に一応電話しますか?多分、面倒なことになりますが?」


  茂信は片手にスマホを持ちながら、「どうしますか?」と堅二に判断をあおいだ。


「う~ん…‥面倒ごとは御免だから止めておこう。さっさと弁当買って離れよう」

 

  堅二は暫く悩んだ後に、そう判断した。


「俺も賛成です。それじゃあ、さっさと買って行きますか…‥……と?」


  茂信は持っていたスマホの画面に、何気なく目をやった瞬間に動きを止めた。


「んっ?どうした?」


  茂信の様子に何があったのかと堅二は訝しげに聞いた。


「いや…‥…親父からメールが入っていたもんで…‥……」


「親父さんから?懐かしいな健三の親父さん!相変わらず元気なのか?」


  堅二は懐かしむように目を細目ながら、過去の健三の姿を思い出していた。


「えぇ、健康みたいですよ。どれ…‥…どんな要件なのか…‥……」


  茂信はメールを開き、内容を読み出した。


「なっ!?」


  そんな奇声発した後、茂信は目を見開き、画面を凝視したままにピタリと動きを止めてしまった。


「おい…‥…どうしたんだ?何が書いてあったんだ?」


  そんな彼のおかしな様子を心配し、堅二は茂信の肩を揺すりながら彼の反応を伺った。


  すると、茂信はゆっくりと口を開き始めた。

 

「…‥………‥……がする」


「ハッ?何だって?」


  しかし、弱々しい声を聞き取れなかった。


  茂信は一度深呼吸をした後、再び口を開いた。


「姉貴が…‥……」


「姉貴が?」


  茂信の放った言葉を、堅二は忘れまいと確認する意味で反芻した。


「姉貴が…‥……」

 

「だから、姉さんがどうした?」


  茂信は再度深呼吸をした後に、ゆっくりと口を開いた。














「姉貴が…‥……結婚する…‥……」




  茂信の言葉の意味に堅二は暫く考えた後に、突然目を見開いて茂信の両肩に掴みかがりながら大声で叫んだ。


「んなっ!結婚?!ま、ま、まさか…‥……綾香お姉様が結婚するというのかぁぁぁぁ!!」



  堅二は、その報告に驚きながら血の涙を流さんばかりの勢いで茂信へと詰めより、詳しい事情を聞くべく迫っていった。


「ち、違います!そっちの姉貴じゃないですから!もう一人の方です!」


  その言葉に、一度堅二は落ち着いた。


「そうか…‥……違うのか…‥……綾香様が俺以外の男と結婚するなんて…‥……考えただけで身震いと吐き気がする‥……」


  そんな事を言う堅二に茂信は、彼が高校時代に実家に訪ねて来た際に自分の姉である綾香に一目惚れしてから、これまで姉に恋い焦がれていることは昔から知ってはいたが、正直それを目の当たりにして聞けば身内として若干引いてしまっている自分がいたが、そこはグッと飲み込むことにした。


「いやぁー…‥…綾香様でなくて良かった良かった…‥…俺が世界の頂点をとるときまでは待ってもらって欲しいからな…‥…って、ちょっと待てよ?綾香様じゃないというならば…‥……まさか?」


「その、まさかの麗香の姉貴の方ですよ」


  茂信の言葉に、堅二は先程とは違った意味の驚きをみせた。


「バ…‥…バカな?!あんな見た目は美女で中身は野獣の、嬉々として自ら危険に飛び込んでいく怪力戦闘狂の麗香さんを嫁にもらうような勇者が…‥…いや聖人がいたのか?」


  身内を前にして、随分と失礼な物言いをしてくる堅二であったが、それというのも堅二自身が麗香の恐ろしさを身をもって知っているが故の感想であった。


  そして、茂信にとっても堅二の意見は大いに賛成できる意見でもあったので、特に反論することもなかった。


「俺も驚きですね…‥……麗香姉(れいかねぇ)が結婚する…‥…いや…‥……できるとは…‥……」


  茂信は、当然のことながら幼少期から麗香の事を良く知っており、彼女の良い所や悪い所も熟知していた。


  それ故に、その良い悪い所を再考した上でも、彼女が誰かと結婚できるとは思ってもいなかったので、家族である茂信にとっても天地がひっくり返る程の衝撃であったのだ。


「ま、まぁ、めでたいことではあるが…‥……あの麗香さんが結婚…‥……信じられんな…‥……一体どんな奴と結婚するんだろうか?相手に関する詳細なんかは何か書いていないのか?」


  「えぇ。下の方に書いてあるには書いてあるんですが…‥……」


  と、茂信は何とも彼らしからぬ歯切れの悪い回答をしてきた


「なんだ?随分と微妙な態度だな?一体だれと結婚するというんだ?」


  堅二は野次馬根性ながらも、純粋に昔から知っている彼女が、一体誰と結婚するのか興味があり、メールの内容を催促して聞いた。


「いや…‥…なんでも…‥…ゲルクルシュ=アッシュノート=ルルシフェルとかいう奴らしいんですが…‥……」


「名前長!覚え難い!何だ外人なのか?」


  名前に対して、堅二は素直に感想を述べた。


「外人…‥…らしい事は書いてあるんすっけども…‥……職業…‥…政治家…‥……ぽい?年齢は…‥……親父より年上?!姉ちゃん一体どんなのと結婚するつもりなんだ?」


  メールに書かれている内容に、茂信は驚愕の声を上げた。


「政治家ぽいって何だ?それに年上って…‥……確か親父さん…‥……50は過ぎているよな?」


「はい…‥……」


  親父より年上の誰かが義兄になる。


  何とも言えぬ家族構成を想像して、茂信は頭が痛くなってきた。


「他には何か書いてないのか?」


「他には…‥……外見は…‥……大柄で痩せぎみの骨っぽい感じで、若干強面であるので会う際には覚悟だけはするように…‥……と…‥……」


「…‥………‥……」


  何とも言えぬ情報に、最早堅二は口をつぐむことしかできなかった。


「…‥……麗香姉(れいかねぇ)…‥……一体どんな男と結婚するんだ?」


  茂信は相手の情報を聞いて、流石に麗香が妙な事に巻き込まているんじゃないかと心配になってきた。


「外人で…‥…政治家っぽい職業で…‥…親父さんより年上で…‥……強面…‥……。麗香さん…‥……どこぞのマフィアのボスにでも見初められたんじゃないのか?」


  情報を整理した堅二が、そのような回答に至って口にしたが、『あり得ない』と否定することもできない姉と相手の情報に、苦笑いを浮かべることしかできなかった。


「で?近い内に結婚式とかあげるのか?」


「いえ…‥……まだ暫くはあげないらしいんですが…‥……近い内に向こうの家族?ってなんで家族の後に『?』が付いているんだ?まぁ取り敢えず、向こう側と顔合わせを兼ねた食事会でもしないかと…‥……の誘いが…‥……」


  メールの内容を読み上げてから、茂信は堅二へと顔を向けた。


「…‥……行かなきゃ…‥……いけませんかね?」


「行かなきゃ駄目だろう?顔合わせなんだしな…‥……」


  彼らしからぬ弱気な態度を滑稽に思いつつも、堅二は茂信にそう答えた。


「すっよね…‥……ハァ…‥…今から胃が痛くなってきた…‥……なんだよ…‥……マジでマフィアとかは止めてくれよな…‥……」


  茂信は胃の辺りを擦りながら、まだ見ぬ義兄を思いながら天を仰いだ。


  そんな茂信を見た堅二は、一度深呼吸をした後にバンバンと茂信の背中を平手で叩いた。


「痛!な、何するんっすか?!」


「そんなに心配するなって?まだマフィアと決まった訳じゃあるまいし!案外まともな奴かもしれんだろ?」


  茂信の不安を拭う為に、堅二はガハハと笑いながら彼を元気付けようと行動した。


「先輩…‥……」


  そんな堅二の言葉に茂信は気を取り戻し、彼に感謝を感じながらも覚悟を決めた。


「もう大丈夫っすよ先輩」


「茂信…‥……」


「相手が誰だろうと…‥…麗香姉(れいかねぇ)が選んだ相手だ。これから家族の一員になるんっすから…‥……俺が一人で毛嫌いしてしまったら麗香姉(れいかねぇ)を悲しませてしまうっすからね…‥……」


  茂信は先程とはうって変わった優しげな顔で夜空を仰ぎ見た。


「マフィアだろうと傭兵だろうと…‥……なんであれ受け入れてやるっすよ」


  そう言いながら、茂信は堅二へと視線を移し笑いかけた。


  その顔からは一切の悩みが消えており、堅二も「やれやれ」と安心することができた。


「その粋だぞ!未来の義兄として嬉しく思うぞ!!」


  どさくさに自己アピールをしながら、堅二は胸を張った。


「未来の義兄は勘弁ですけど…‥…ありがとうございます元気が出ましたよ」


「いや!そこは受け入れてくれよ?!そして綾香様にアピールしてくれよ!なぁ!」


「いやぁ…‥…そもそも、正直に言えば先輩は綾香姉(あやかねぇ)の好みのタイプじゃ…‥」


「マママママ…‥……マジでぇぇぇぇ?!?」


  どこに自信を持っていたのか、茂信の言葉にショックを受けた堅二は、膝をつきながら絶叫をはなった。


「そ…‥…そんな…‥……『君みたいに強い子は……好きよ?』と告白してくれたのは一体…‥……」


  地面を見ながら、堅二はブツブツと呟き始めた。


「それ…‥……告白じゃなくて挨拶?社交辞令みたいなものっすから…‥……」


  と、呟やき続ける堅二に、茂信は無情にも現実を叩きつけた。


「言うなぁぁぁぁぁぁ!分かってはいたんだが…‥…敢えて言うなぁぁぁ!チクショォォォォ!」


  悲痛な叫びを上げながら、堅二はドンドンと地面を叩き始めた。それによりアスファルトの地面がひび割れてへこんでいた。


「まぁ…‥…先輩…‥……女なんて一杯いるんですから?その気を落とさないで…‥……」


「綾香様…‥……綾香様がいいんだよォォォォ!綾香様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


  ついには、マジでガチ泣きすら始めてしまったのだった。


「先輩…‥……」


  さっきまでとは立場が入れ替わり、自分が慰める立場になってしまったことに苦笑しつつも、茂信は麗香の婚約者のことを考えた。


(麗香姉(れいかねぇ)の婚約者…‥……俺はともかくとして、綾香姉(あやかねぇ)はどう思っているんだろうか?…‥……親父やお袋よりも、綾香姉(あやかねぇ)の審査の方が厳しいからな…‥さて…‥…麗香姉(れいかねぇ)は認めようだが、果たして綾香姉(あやかねぇ)には認めらるのだろうか…‥……)


  そう考えながら、茂信は星空を見上げた。


(さて…‥……事務所が休みの日にでも、一度帰省して様子でも伺うか…‥……)


  そう久しぶりの帰省を心の中で決心しながら、茂信は泣き続ける堅二を慰めるのだった。











  それから暫くし、茂信は実家に帰省し『彼ら』と出会うことになるのだった…‥……。



格闘家 深浦 堅二

Lv:350

称号:【格闘家】【大戦士】【レスラー】

【ゴリラ】【顔面凶器】【恋スル漢】

HP:25000

MP:10

攻撃力【物理】:2300

防御力【物理】:2000

攻撃力【魔法】:15

防御力【魔法】:20

素早さ:800

知識:50

運勢:70

装備:【レッドタンクトップ】【メリケンサック】

【ピチピチジーンズ】【絢香の写真】

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