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42話 知らずに得たもの。

「あぁ、という事だ。うん、えっ?どんな男か?う~ん…‥……骨っぽいというか悪魔っぽいというかな…‥……」


『ーーー!ーーーー!?』


「いや…‥…まぁ意味が分からないという気持ちは分かるが…‥……何とも形容しがたい男というか…‥……」


『ーーーーーー!ーーー?』


「いや悪い男…‥………‥………‥………‥……では無いと…‥………‥………‥……思う?」


『ーーー?』


「いや、確かに間があったが…‥……母さんも気に入ってるし、根は良い男だと思うぞ!うん、まぁ今度向こうと都合を合わせておくから実際に会ってみたらいい。あぁ、お前の予定も後で教えてくれ。えっ…‥……あぁ頼もしいな…‥……うん、それじゃあな」


  ピッ。


「フゥ…‥……」


  一先ず伝える事を伝えたな。


  たった今、携帯で電話をしていたのは長女の絢香だ。


  麗香から頼まれた婚約の話を伝える為に、娘の会社の昼休みを狙って電話を掛けてみたのだが、上手いこと空いた時間だったみたいでよかった。


  絢香は久々の私からの電話に喜んでくれたので親としては嬉しい限りだ。


  暫く互いの近況を話した後に、本題である麗香の婚約の件を話したのだが…‥……これが少々荒れた。


  暫く音沙汰が無かった妹が突然結婚をするというのだから、絢香からすればあまりにも突然過ぎて、驚きを通り越して少し怒っていた。


  しかも、怒鳴り散らすような怒り方ではなく、静かに燃えるような…‥…一番怖い怒り方だった…‥……ここら辺に妻の遺伝子を感じるのは気のせいではないと思う。


  もうその後は、何処で出会ったのか?どんな出会いか?どんな男か?等と質問攻めにあってしまった…‥……。


  詳しく説明しようと思ったのだが、電話越しに『麗香の婚約者は魔王なんだ!』などと言ったら、絢香が速攻駆けつけて私を病院に連れていきそうなので、魔王君の詳細は絢香に申し訳ないが曖昧に答えさせてもらった。


  後は実際に会ってもらってから説明しよう。


  まぁ、向こうも魔王君に会うのに率先的だったみたいだからな。


  なんか最後に『見定める』って言っていたしな…‥……。


  姉妹仲がいいから可愛い妹が心配なんだろうな。


  声に薄暗いものを感じたが…‥……気のせいだろうな。


  茂信は向こうの空いてる時間が分からないから、メールを入れておいたし。


  皆への連絡はこれで終わりだな。


「さて…‥……飯でも食べるか」


  先程コンビニで買った弁当とお茶を袋から出して包装のラップなどを外していく。


  電話をしている間に少し冷めてしまったな。


  本当は温め直したいが、今の現状ではそれができない。


  何故ならば、私は今屋外…‥……住宅街で見つけた小さな神社にいる。


  説明すれば、午前中に営業の外回りに出て、営業先との仕事が終わったのが昼過ぎだった。しかし、その営業先が住宅街のど真ん中で周辺に飲食店等が無く、コンビニで弁当を買って公園かなんかで手早く済ませようと考えたのだ。


  それで、周辺で弁当を食べられる場所を探していて此処に着いたということだ。


  中々公園らしい場所も見つからず、どうしようかと思った矢先、古びた赤い鳥居が見えたので此処ならばと入ってみたのだ。


  30段ばかりの石段を登ると両脇に苔むした狐の石像がそれぞれのポーズで置かれており、その奥には木々に囲まれた人気の無い小さな社が建っていた。



  大分古い社であるが、定期的に手入れをされているのか、古い割には綺麗で赴きが感じらる雰囲気があったし、何だか和やかな気分になれる場所だった。


  直ぐにこの神社が気に入り、近くにベンチがあったのでそこで弁当を食べることにし、食事前に先程の絢香への電話をしていたのだ。


「なんだか落ち着く場所だな…‥……」


  不思議と気持ちが落ち着き、心が洗われるような気分になった。


  最近は魔王だの、獣人だの、悪魔だの、主婦だの、ドラゴンだの、ドラゴンだの、ドラゴンだので精神が疲れていたから尚のこと浄化される気分になる。


  弁当を膝の上に置いたまま、暫し目を閉じて木々や小鳥のざわめき、暖かな日差しを楽しんでいると…‥……。


『コォ…‥……ン』


「んっ?」


  何か鳴き声?のようなものが聞こえたな?


  目を開けて見ると神社の境内の真ん中には、いつのまにか一匹の狐がいた。


「狐?こんな住宅街の真ん中に?」


  この神社は確かに木々に囲まれているが、それは神社周辺だけであって、木々を抜けた先には住宅街が広がっている。


  そんな場所に野生の狐が住んでいるなど妙な話である。


「それに…‥……」


  しかもその狐をよく見ると、私が知っている狐とは少々違った。


  私が知っている狐は狐色と言われているように濃い黄色のような毛色をしているが、目の前にいる狐は汚れ一つ無い綺麗な白い毛色をしているのだ。


  更に首には赤色のしめ縄?のような飾りをつけていた。


「もしかして……神社で飼われているのか?」


  いや、しかし狐は病気を持っていると聞いたことがあるしなあ…‥……。


『コォ…‥ンン』


  再度、狐が鳴いてきた。何だか弱々しい鳴き声だな。もしや腹が減っているのか?


  私は膝の上にある弁当と狐を交互に見た。


  買ってきた弁当は、コンビニで一つしか残っていなかった『ボリューム海苔弁当』で、正直あまり大食漢でもない私には少し重いと思っていたところだった。


「しかし…‥餌付けをしてもいいものかな?」


『コォ…‥……ン』


  狐は尚も弱々しい鳴き声を出しながら、私の側まで近づいて来ていた。


「う~ん」


  キョロキョロと辺りを見渡し、他に人がいないか確認をする。幸い辺りは静かなもので、私以外に人一人としていなかった。


「まぁ…‥…いいか。どれ?弁当食うか?」


『コン…‥……』


  言葉が伝わるとは思っていないが、何となく話しかけてみると、驚いたことに返事?をしながら頷いてきた。


「おぉ…‥お前言葉が…‥……分かる訳ないよな。偶然か?」


  まぁ偶然だろうと考えて、弁当のプラスチックの蓋の裏に、海苔弁の中に入っていた唐揚げや鱈のフライ、肉団子に磯辺揚げといったおかずとご飯を少し乗せてから狐の前へと出してやった。


  すると、狐は一瞬驚いたような顔つきをした後、凄まじい勢いでおかずを食べ始めた。


「よっぽど腹が減っていたんだな…‥……」


  そんな狐の様子を見ていたら、私の腹も主張を始めてきた。


「とっとと食べてしまうか」


  少し変わった相手とのランチだが、たまにはいいかもしれないな…‥……。


  いや、最近は変わりすぎな奴らと食事をしていたな…‥……主に魔王とか。


  そんな事を考えながら、私も弁当を食べ始めた。



 ◇◇◇◇


「ハァ…‥…食べた食べた」


  私は弁当を食べ終わり、満腹の余韻に浸りながらお茶を飲んでいた。


「お前も満腹か?」


  フッと足下にいる狐の様子を見ようと視線を下ろしたが、そこには既に狐の姿はなかった。


「なんだ!もう、何処かに行ったのか?」


  別に動物相手にお礼を求めていた訳ではないが、何も言わずに去られるのは何だか無性に空しい気持ちになる。


  まぁ、それでこそ動物らしいかな?


  さて、そろそろ行くかな。


  そう思い、立ち上がって片付けをしてから出発の準備に取り掛かる。


  この後は、会社に戻って営業先での話を纏めてから報告だな。


「よし、行くか」


  片付けを終えて、会社へて向かうべく神社を後にし石段を下りていった。

 

  それにしても、さっきの狐は何処に住んでいたのかな?意外と住宅街の中でも生きていけるものなのだろうか?


  そんな事を考えながら鳥居を抜けた瞬間。


『わ…‥…か…‥…あ…‥…そ…‥に…‥…あ…‥…うぞ』


  何か途切れ途切れのラジオのような声が頭の中に響いてきた。


「な、なんだ?!」


  慌てて周りを見るが、辺りには誰も人はいなかった。


「幻聴…‥……か?」


  もしかしたら疲れて幻聴を聞いたのかもしれないな最近は色々あったしな。…‥……後で暇な時に病院に行って診てもらったほうがいいかもしれない…‥……。


  そう自分の体に不安を覚えながらも、暗い気持ちを隠して会社へと向かうのだった。



 ◇◇◇



  神社から去り行く男を、古びた鳥居の上から見送る影があった。


  その影は、男が見えなくなるまで鳥居の上で佇んだ後、煙のように姿を消した。


『コォーン』


  という、鳴き声を残して。

会社員 佐沼 健三

Lv:22

称号:【家族想い】【宴席の救護兵】【不闘不屈】

【大黒柱】【企業戦士】【バーコード】

【魔王の父】【死に魅入られし者】

【豊穣に恵まれし者】

HP:210

MP:22

攻撃力【物理】:61

防御力【物理】:82

攻撃力【魔法】:5

防御力【魔法】:17

素早さ:41

知識:250

運勢:???


装備:【古びたスーツ】【くたびれた革靴】

【名刺】【営業用文房具】【シルバーの結婚指輪】


加護:【魔王の加護】【死霊皇の加護】

【豊穣稲荷の加護】

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