閑話 ???????の愉快な時間!
本編とは関係の無いお話です!
クックックッ……実に愉快だ。
見ていて此ほど愉快な者達は随分と久方ぶりであるな……。
科学が進み魔法という概念が死んだ此の世界において、尋常ならざる魔力を感じた余は、興味本意で魔力の反応した地点を覗いてみた。
すると、人ならざる異形がおるではないか。
しかも、魂の色合いからして此の世界ではない……異世界から来た者ではないか。
隣にいる女は此方の世界の者だが、興味深い魂の輝きをしておった。
これだけで中々に愉快だというのに、聞けば此の者ら契りを結ぶと言うではないか!!
クハハハハハハ!!世界の違う者同士が……
しかも異種族同士で契りを……
ど、どこまで余を楽しませてくれるのだ!
予想もせぬ事を言うものだ!!
この者らは女の親御に婚礼前の挨拶をするというので興が乗って付いていくことにした。
本音を申せば異形を連れてきた女の親が、どの様な反応を見せるのか気になったのだがな。
だが、此処でも余の予想の斜め上をいきおった!
この女の親御……普通に異形の者を受け入れおった!!
「まぁまぁ、大きい方」
などと女の母親が感想を述べているが……
それ以外に反応すべき所があるのではないか?
父親の方も……いや、そちらは受け入れられていないようだな。
白目を向いたまま、その場に立っているという妙技をしておる。
とにかく、普通の精神の持ち主であれば発狂しようものの状況であるが、父親以外の者は普通に会話を楽しんだりしておるわ。
この母親も侮れぬな。
その後は父親が復帰し、4人で色々と話しておったわ。
というか、父親の方も母親程ではないが異形の者を受け入れつつあるな……。
一家揃って中々に強かなものよ。
そうこうしている内に、異形と父親が酒宴を始めおった。
かつては余も酒をたしなんでいたが……
他者から認識されぬ今の余には、現界のものに干渉することができぬ故に酒も飲めぬか…
まぁ良い。
せめて、此の者らを肴に、酒宴の雰囲気でも楽しもうぞ。
しかし父親よ、異形の者に全ての酒を飲まれているが良いのか?
と思えば、酔った異形の者に組伏せられて、父親の中から魂が飛び出てきたではないか。
なんと不憫な……。
我が子の婿に殺されてしまうとは……。
仕方あるまい、余の務めとして冥府へと誘ってやろう……って!
こ、この魂……挨拶をしてきおった?!
通常、抜け出てきた魂からは自我が無くなり、そのまま冥府へと旅立ち、新たな生命へと転生するというのに……。
何?魔王の友人?歓迎?
いや、迎えをするのは余の役目……って戻っただと?一度抜け出た魂が肉体に戻っただと!
……クッ……ハハ……ハハハハ!!
愉快だ!本当に愉快だ!!
こ、こんな事初めてで実に愉快だ!
しかも一度死にかけたせいか、この父親は余の事が視認できるようになったらしい。
チラチラと余の事を見てきおる。
フム……ということは……。
おぉ……触れたぞ!適当に壁を意識して干渉してみれば、現界のものに触れることができる!
クハハハ!!実に久方よ!現界の物に触れることができたのは!!
これも、父親が余を認識してくれたが故よ!
どれ……褒美として、余の加護を与えてやろう。
クックックッ……人間で余の加護を得た者などこれまでいないのだが、今は気分が良いから些細なことは気にしまい。
感謝して受け取るが良いぞ!!
しかし、恐らく余が干渉できるのは父親が認識を得ている視界内のみであろうな。
些か手狭であるが……まぁ良いか。
むっ?夕げの時刻か。何やら食事前に祈っているな。何時の時代も食事前は同じ事をするものだ。
何故祈るのか?と聞かれた父親が説明をしていたが、理解されずうちひしがれておる。
此処は余が、慰めてやろう。
今の時代の人間達の食事を見ることはあっても味わう機会はなかったからな……。
何か適当なものを少しばかり頂いてみるか。
どれが良いかな?むっ?この見目美しい黄色き塊はなんぞ?
女の方は、この黄色の塊を残すようだから頂いても構わぬだろう。
どれ……。おぉ……これは美味ではないか!
程良い甘さがなんとも言えぬ。
人間達の食事事情が、此ほど向上していたとはな。
むっ?女が何やら騒いでおるな?
どうやら余が食べた品は、最後に食す腹積もりだったらしい。
悪いことをしたな。
異形の者と争っておるわ。
んっ?父親が余を指差しながら、余が犯人だとぬかしておるわ。
無駄だと思うぞ。そなた意外に余の姿は……
案の定、慈しみと戸惑いが混じった目で見られておるわ。
父親よ……許せよ。
◇◇◇
フム何やら疲れを癒せだのと言われて、父親が移動した故に着いてきたが……
これは浴場か?成る程、湯に浸かって疲れをとるのか。合点がいった。
父親が衣服を脱ぎ始めたな。
郷に入っては郷に従えという言葉がある。
どれ、余も服を脱ぎ湯を楽しんでみるか。
父親が雨のように水がでる筒の様なもので体を流した後に浴槽に浸かり始めたので、湯船に浸かるのは後回しにし、他を物色することにした。
何やら色々と道具があったが、形状や性質から体を清めるために使うものらしいな。
手にとったザラザラした質感の布に、ぬるついた白濁の液体をかけて揉むと、面白い様に泡立ちおった。
成る程、これで体を擦り清めるのか、どれ。
おぉう!これは良い!今まで味わったことの無い感覚だ!骨の一本一本が清められるのが良く分かるわ!これは癖になる!
そして……この雨が出る筒で……。
おぉ!面白いように泡が流れていくわ!
泡を流し終わった所で異形が浴場に入ってきて父親の背を流し始めた。
入れ替わりで浴槽に浸かってみるが……これは本当に良いものだな、骨身に染みおる。
暫くすると、異形と父親が神妙な顔をしながら何やら話し出した。
聞けば、異形が自身の事を怖くはないのかと、聞き始めた。
父親がどう答えるのかと期待してみれば、何やら1人の少女の話を始めた。
周囲に溶け込めず、異物扱いされた上で裏切られ、他者を信じられなくなった少女の話を……。
人間が己と違う存在を疎ましく思うのは、いつの時代でも変わらぬか。
だが、話を聞いていく内に、少女が家族の手によって救われて立ち直ったと言うかではないか。
しかも、その少女とはあの女だという。
強き目をした女だったが、過去には色々とあったようだ……。
いや……そのような目にあったからこそ、今の姿があるのであろう。
だが、それ以上に父親が相当にやりおると感じたわ。
一見すれば、見た目も髪も頼り無いようだが、心に一本の芯を持っておる。
やはり興味深いな。
その後は、異形が魔法を発動し始めたので早々に退散させてもらったわ。
◇◇◇◇
恐ろしい……誠に恐ろしい。
余を震え上がらせるとは……。
あの人間の女二人は、なんと恐ろしいことであろうか。
浴場から生還した父親と、女二人に羽交い締めになっておる異形だったが、何やら話をしだした後に、突然女二人が修羅へと変貌しおった。
そこからは、目を覆いたくなる様な所業が開始された。とは言え、余も飛び出した父親の魂と腹ごなしの運動を少しばかりしたがな。
やがて、気が済んだのか二人は暫し互いに会話を楽しんだ後に、女が支度をしだした。
どうやら帰るらしい。
支度を終え、出入り口に移動しだした2人の後を2体の屍が付いていく。
意識がなくとも付いて行く辺りに、何やら涙を誘われる。
別れる際も、色々と騒いでから互いに挨拶を交わし、異形と女は黒き龍の背に乗って旅立って行った。
その黒き龍のせいか、周囲は五月蝿いくらいに騒いでおったが余には関係なかろう。
しかし、やはり面白い!
これ程に愉快なのも暫くぶりである。
暫くは此処に留まり、この一家を観察し、永遠たる余の生を一時でも楽しませる余興としようぞ。
暫しは、余を楽しませてくれよ?
サヌマの者達よ。
黒龍 グラハム
Lv:670
称号:【魔王の眷族】【焼き払う者】【番人】
【空ノ主】【破壊者】【ペット】
HP:40000
MP:10000
攻撃力【物理】:2100
防御力【物理】:2200
攻撃力【魔法】:1000
防御力【魔法】:1200
素早さ:2400
知識:170
運勢:50
装備:【忠義の首輪】【ピンクのリボン】
加護:なし