二。別れて欲しくないO美さん
昼。
ファミレスの一角で。
今日のお客様は、制服姿の女の子でした。
ノンフレームの眼鏡をかけていて、ショボンとした眉毛にへの字の口。
膨らんだスクールバッグを横において腕を組み、不機嫌な様子です。
「・・・あの、これから話す事は誰にも言わないで欲しいんですけど」
「はい。お客様の事情は第三者には決して口外しませんので、安心してください」
"縁結び"は人に知られると効力が落ちるのと、その動機などは個人情報になるため、幾つかの例外を除いて誰かに話す事はありません。
「・・・じゃあ、えっと話すけど。・・・わたしのお父さんとお母さんが・・・最近、ケンカばっかしてて」
仮名O美さんは、とても言いにくそうに始めました。
「最初は、わたしのいないとこでケンカしてたけど、だんだん多くなって、わたしの前でもいつも怒鳴りあって・・・この前っ、り、離婚する、とか言い出してっ」
「O美様、落ち着いてください」
興奮して、声が大きくなっていくO美さんをなだめます。
さっと周囲を見ると、何人かが目をそらしました。
「あっ・・・ごめんなさい。・・・それで、わたし、イヤで・・・イヤだから、お父さんとお母さんと一緒にいたいし、別れて欲しくないし、ケンカ、しないでほしくて・・・」
「つまり、お父様とお母様の縁を結びたいんですね?別れないように」
「そう!そうなの!」
「O美様」
「あ・・・ごめんなさい」
また周囲を見渡して、こちらに注目してる人達の視線を散らします。
「そうですね・・・。でしたら、O美様のお父様、お母様、そしてO美様の三人を「縁」で結びたいと思います」
二人以上結ぶのは珍しいですが、"縁結び"に人数制限はありません。
「わたしも・・・?なんで?」
「この場合、O美様のご両親に別れてほしくない気持ち、ケンカせず仲良くしてほしい気持ちを届けますので、O美様とご両親をそれぞれ「縁」で結び、ご両親がO美様の想いに応えれば、おそらく離婚は防げると考えられるからです」
「そーなの?・・・よく分かんないけど、それでお父さんとお母さんが、り、離婚しなく、なるなら、それでいいよ・・・」
という事で、契約書、誓約書をまず書いて頂きました。
預かった写真は家族写真だったので一度持ち帰り、加工してO美様、お父様、お母様に分け、O美様とお父様、O美様とお母様それぞれの御守りを造り、お渡ししました。
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それから三ヶ月後、O美様から手紙が届きました。
ご両親が仲直りした事、家族で旅行に行った事などなどの嬉しい出来事と共に、三人笑顔の写真が同封されていました。
本当に良かったですね。
皆様の「縁」がこれからも続きますように。