夢現 序
SMD競演作品。
SMD競演作品は今回で2回目です。
今回は文字数の制限での失敗無しで書き始めましたので、ほえ ?ってことは無いと思いますが、ホラー系の作品を書くのは今回が初めてで全く怖くないかもしれません。
て言うか全く怖く有りません。
今回は恐怖と言うよりも人の持つ闇をテーマに書かせて頂きました。
序
自分がどうして此処にいるのか覚えていない。
覚えていないのだから此処にいる理由を私は知らない。だが、私は此処に腰を下ろしている。まぁ、自宅の階段に腰を下ろす事にさしての理由等は要らないのだろうが、私は階段に腰を下ろし何か話をしていた。
自分の身長が170cmだから階段の二段目ぐらいに腰を下ろすのが丁度よかった。
だが、矢張り理由は分からない。
何を話していたのかも覚えていない。
それに、家の階段に腰を下ろすことなど今迄ーー。
そうだ、四十六年間生きていて一度も無いと言える程皆無に等しかった。
其れなのに今私は家の階段に腰を下ろしている。
矢張り理由は分からない。
分からないまま私は階段の頂上を見やる。矢張り理由は分からない。只、上を見やっただけだ。そして、階段の上にいる男を見やり体をビクリと震わせた。
誰 ?
其処にいるはずの無い男に私は驚いた。
驚き戸惑い乍らも、少し考え乍ら私は其の男を見やっていた。何故、何を考えていたのかは分からない。何も分からぬまま私は其の男を見やっている。
そして男が喪服を着ている事に気づく。
男は喪服を着たまま階段の壁をジッと見やっている。
誰だ ?
見やった事のない男を私はジッと見やっている。
そして、見られている事に男は気づいたのだろうか私の方にクルリと顔を向けた。そして私は男の顔を見やり一瞬全ての行動を止める。
鬼、
其れはまさに鬼と言った方が似合いそうな程、怖い顔をぶら下げた男。
鬼の様な形相をした男が私を見やる。其の顔は微塵の笑みを浮かべる事もなく私をジッと見やっている。
ブルッと体が震えた。
最早男が誰なのかはどうでも良かった。誰であろうとこの世の者でない事は明らかだったからだ。私はどうするべきなのか戸惑い乍らも男の顔から目を背ける事が出来ぬまま悲鳴を上げた。