冬夜空
星は綺麗だ。
見る者を時に明るく時に落ち着かせてくれる。
真っ暗になった教室に残って窓際からじっと星を眺めていた。
突き抜ける寒さと、それによく似た透き通る夜空。
きっとあの光は癒しの光なんだ。
星は癒してくれる。
見る者の疲れを、頭の中を、そして心の痛みを。
「――・・・。」
淡い月の明かりがこの教室を照らす。
幽かに私の影が映る。
月は見る者をその優しい光で包み、慰めてくれる。
それはまるで―
「・・・ふぅ」
私はその淡い月影で自分が立っていることを改めて理解し、そっと白い息をつく。
そして夜空に、その『向こう』にもう一度向かい合う。
『大丈夫だよ』
『頑張ったね』
『―ずっと幸せだといいね』
過去の優しい言葉達が聞こえてくるような感覚。
鮮やかに記憶にはためく声、髪、笑顔。
「幸せだったよ。」
紡ぐ様に。ちゃんと届くように。言葉を伝える。
「もちろん嫌だった事も有ったけど、それでも。」
私は目を閉じる。
星のように瞬く記憶達。
「忘れないから。」
月の光が一層優しく降ってくる。
「―それで、ずっと幸せで居続けてみせるからね。」
だから。
「そこから見てて。」
息を吸い込んで、目を開く。
「―じゃあ、またね。」
私はゆっくりと歩き出した。
寒さと闇の中私を待ってくれた人。
「―もういいのか?」
「…うん」
私は空を見上げる。
夜空は綺麗だ。
時として泣きたい程に。
「おい大丈夫か?」
「…っ」
心配そうに覗き込む。
その顔が月と被って何だか―
「っわ!?抱きつ―」
・・・私は思う。
人間は儚くて、そして、暖かい。