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ボタンを飲み込む。ふたっつ。
艶々光る、まあるい可愛らしい黒いボタン。
吐き気を押し殺して、飲み下す。
これくらいの辛さは、もう平気。
母親だもの。
「おかあさん、おかあさん、」
息子が泣いている。
大丈夫よ、さみしがらないで。
淡い栗色の毛糸を飲み込む。
少しぼさぼさしているけど、こちらに出てきたら丁寧にトリートメントしてあげましょう。
素敵な色だと思うでしょう?
お母さんのお母さん、つまりあなたのおばあちゃんが読んでくれた白雪姫は、秋栗色の髪色で、黒い目だったの。
お母さんみたいな、白雪姫だったのよ。
「おかあさん、おかあさん」
息子はやっぱり泣いている。
わたしが流産して、妹になるはずだったこの子が死んでしまってから息子は前よりも非常に怖がりになってしまった。
わたしにしがみついて、ずっと怯えている。
あなたとこの子のために、お母さんは頑張っているからね。
きっと大丈夫になるわ。だから、そんなに泣かないで、ひきつけを起こしてしまう。
お母さんは今ね、お腹の中でこの子を編み直しているの。
今度は壊れても直しやすい体になっているから一安心。
例えわたしが壁に叩きつけられても、階段から落ちてももう失われたりしない。
あなたのこともフェルトと毛糸で作り直してあげようかしら。
そうしたら、けがをしても一安心。
お母さんがすぐに直してあげられるから。
妹と同じ髪色がいい? あなたのはわたしに似なかったから。
好きな色のボタンも選んでいいわ。
お父さん?
お父さんはあのままにしておきましょう、乱暴者だから。
直さなくて構わないわ。
おとなしくて、動かなくて、前より良いお父さんになったからね。
またあなたたちがけがをしたら大変だもの。
ずうっと人形みたいなお父さんでいてもらって、わたしたちはもう心配事のいらない家族になりましょうね。
〈終〉




