第一章 日常
「何が間違っていて、何が正しかったかなんて分からない」
「だからこそ……人は自らが正しいと思う道に進むんだろ?」
「あぁ」
二人の間に重苦しい空気が流れる。
一人は小柄な少年、もう一人は小柄な少年とは正反対にとても大柄な少年。
少年達は夕日の川原でただ座り込んでいるだけ。年相応に石を投げたりして遊んでいるわけではない。
そもそも、彼らにはそのような遊びが遊びに思えない理由があるのだが―――
「お前はお前が正しいと思うことをした。ただ……それだけだろ」
「うん」
「大丈夫さ。お前は俺が唯一認めた友達だ。たとえ引っ越したってうまくやっていけるさ」
「うん……」
小柄な少年の目に涙が光る。大柄な少年はそれを見ないようにまっすぐと太陽に向き合っている。
それが――不器用ではあるものの、彼なりの優しさだった。
「ありがとう」
小さくつぶやかれたその言葉。その言葉を聴いて大柄な少年は目を閉じた。
思い出しているのだろう。
少年達の過ごした日々を。
その楽しかった日々を。
「じゃあ……な」
大柄な少年が立ち上がったが、小柄な少年はいまだに座ったまま。
それでも二人は通じ合えた。
「絶対にまた会うときが来るさ。だって俺たちは――」
大柄な少年の言葉が風に乗って小柄な少年の耳にまでやってくる。
涙を流したまま小柄な少年は大柄な少年の言おうとしている事が分かった。
だから二人していつものように声をハモらせる。
「「特別な……存在なのだから」」
その次の日、小柄な少年の引越しによって大柄な少年と小柄な少年は引き裂かれてしまった。
小柄な少年は新しき新天地で戸惑い、大柄な少年は小柄な少年と会えるその時を楽しみにして。
―そんな日々が5年ほど続いて―
それでもまだ二人は――再会していない――