エピローグ
あれから約一年。私たちの卒業式の日がやって来た。
学園長たち、お偉いさんが祝辞を述べて式は終了。そしてこれからが本番。
同級生たちで集まった謝恩会。堅苦しいのは抜きで最後のどんちゃん騒ぎ。
学園で一番大きいホールを貸し切って卒業生中心のパーティ。
そして、私はそんなパーティの司会進行を務めている。こういう場には慣れておかないとね。
『みんな、楽しんでる~?』
風魔術を使って声を会場全体に声を届ける。
『お~!』
みんなお酒やジュースを片手に盛り上がってる。
『さあ、それじゃあ私たち同期一番の出世頭。エルマちゃんの登場だよ』
『どうも』
エルマちゃんはぺこりと頭を下げる。シルクのドレスを着て妖精さんみたい。
私と同じ魔術を使って声を拡散する。小さな声が会場中に響く。
『案外悪くなかった。楽しかった』
それだけ言ってもう一度頭を下げるエルマちゃん。
シンプル過ぎるって。どうにかして、旦那さん。
「こら、エルマ。ちゃんと台本用意しただろ。見ていいからちゃんと全部話せ」
フィンくんがエルマちゃんの肩を押さえて逃がさないようにする。
「ん~」
子供みたいに嫌がるエルマちゃん。
でも逃げ出そうとはしないんだよね。魔術を使ったら簡単に逃げられるのに。
「おいマイヤー、どうせなら夫婦漫才も聞かせろ!」
「挨拶よりそっちの方が面白いぞ!」
近くにいる同級生が軽口を叩く。
気持ちはわかる。というか司会じゃなかったら私も見ていたい。
「うるさいぞテメーら!ほら、エルマもちゃんと続き」
同級生に文句を言いつつエルマちゃんに言うことを聞かせるフィンくん。
「……わかった」
エルマちゃんは渋々続きを述べ始めた。なかなか楽しい謝恩会になったね。
♦♦♦
「いまだに信じられねーよ。来月から聖王国だなんて」
フィンくんはジュースを片手にぼーっとしてる。
結局、フィンくんはエルマちゃんのプロポーズ(?)を受け入れた。来月からは一緒の貸家に住むみたい。
「なに、惚気を言いたいの?」
「そんな甘いもんに見えるか?」
見えないと思ってるのかな?あんな熱烈な告白をされておいて。
「俺は転んだ女の子の面倒を見てただけなんだけどな」
「そうだね」
今でも覚えてる。
本を抱えて顔から廊下にダイブした女の子。それを起こして医務室まで連れて行った男の子。
そこから二人の生活は始まった。
「でも、ずっと後ろをついていったのは君だよ」
「放っておけなかったんだけだ。弟たちと同じ枠だよ」
フィンくんは頭をガシガシと掻きながら恥ずかしそうにしてる。今も同じの気持ちなのかな?
「まあ、困ったら連絡してよ。連絡先は渡しておくから」
「そうか。手紙くらいは書くよ」
「そんな必要ないよ」
「どういうことだ?」
私は返事の代わりに渡した連絡先を指さす。フィンくんはそれを見て目を見開く。
「聖王国⁉しかも、俺たちの家の近くじゃねーか⁉」
フィンくんの言葉通り。来月からも私はご近所さん。
「頑張ったんだよ。そこの支店に務めるの」
スカウト全部断って聖王国の新聞社に応募したんだから。
「なんでそんな?」
「私ね、娯楽にお金も労力も惜しまないタイプなの」
あんな面白い恋バナ、他になさそうだもん。是非、毎週聞かせてもらわないと。
「これからもよろしくね」
「……よろしくな、シュミット」
ぎこちない笑顔で私の手を取るフィンくん。そんな顔しなくても大丈夫だよ。
ちゃんと助けてあげるから。私の楽しみのために。




