天才少女のプロポーズ
私は闇属性の魔術で気配を消してこっそり見学中。地味で嫌がる子が多いけど、こういうときに役立つんだよね。
……大丈夫、ストーカーじゃないよ。私は二人の恋路を応援する見えないキューピットだよ。
「フィン」
「エルマ……」
学園の窓に向かって黄昏ているフィンくん。そこに向かってエルマちゃんは近づいていく。
「誤解させたなら謝る」
「そんな、いいんだよ。そうだよな、友達の大出世だもんな」
無理矢理な笑顔を作ろうとするフィンくん。とても痛々しい。
「祝福、しないとな」
今にも泣きそうな顔してる。ここだよ、エルマちゃん。
「フィン違う」
「何が違うんだよ。俺はお前のこと……」
ちゃんと誤解を解かないと。
「一緒に来て。聖王国に」
うーん、いろいろ足りないけど。エルマちゃんにしては頑張った。
「俺が、聖王国に?」
「うん。私にはフィンが必要」
エルマちゃんは小さな手をフィン君に伸ばす。
「でも、俺には聖王国に行くような能力なんて……」
わかるよ、私も聖王国に来いって言われたら戸惑っちゃう。
「大丈夫、話はつけてある。フィンは助手」
エルマちゃんのその姿はとても堂々としている。
「だけど、親父にも話さないと」
そうだよね。将来のことだもん。
「問題ない。不出来な息子をお願いしますって言われてる」
「ん?」
――ごめん、エルマちゃん。あなた飛躍し過ぎだよ。
「すまんエルマ、誰に言われたんだ?」
「マイヤー男爵」
マイヤー男爵ってつまり、フィンくんのお父さんだよね。
「いつの間に親父と手紙のやりとりしてたんだ?いや、そもそもどうやって実家に手紙を送ったんだ?」
そうだよね。エルマちゃん、面倒くさがりなのに手紙のやり取りなんてできるの?
あの子、料理すらできないんだよ。
「学園長に全部頼んだ」
なるほど。代筆も送付も返事の確認も全部任せたんだね。
確かにそれならエルマちゃんでもできそう。学園長も対策研究院に卒業生を出せたら鼻が高いだろうし。
「お前……マジか」
それをやるエルマちゃんの度胸が凄まじいけど。
「フィンを私の助手にする。そう言った」
「それで?」
「不出来な息子で良ければって」
……そこまで話が進んでたんだ。
「あんのクソ親父。何勝手に言ってんだ」
フィンくんは一人でもだえてる。気持ちはわかるよ。
「何も心配しなくていい。一緒に来て」
なんて男らしいプロポーズ。そんなこと言われたら、私もちょっとくらっと来ちゃうかも。
エルマちゃんにそんな自覚があるか怪しいけど。
「……少しだけ、考える時間をくれ」
「どうして?」
「急すぎるんだよ!」
フィンくんの言葉を聞いて首を九十度回転させるエルマちゃん。
もう少し魔術以外も勉強した方がいいんじゃないかな。人の心とか。




