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即位から三十年後

即位から三十年後

――「名が刃にならなかった日」


善宅王の治世三十年目。

アリラン王国は、かつてない社会不安に包まれた。


背景


連年の不作


周辺国での王権崩壊


ダンジョン由来資源の価格暴落


王も高齢となり、次代への不安


市場では怒号が飛び、

酒場では「王は老いた」「制度は古い」という声が増えた。


もしこの国が、

名を自由に使える国であったなら――

この時点で内乱は始まっていたと、後世の歴史家は言う。


暴発寸前の王都広場


王都中央広場。

数千人規模の民衆が集まり、空気は張りつめていた。


一人の男が、壇上に立つ。


彼は叫ばなかった。

煽らなかった。


ただ、こう名乗った。


「私は――LV1名で語る。

職でも、血でも、権威でもない。

一人の民として話す」


この宣言だけで、

広場のざわめきは半分に減った。


なぜなら皆が知っていたからだ。


LV1名では、扇動はできない。


名が引き止めた瞬間


群衆の中から、別の声が上がる。


「王を欺いているのは誰だ!」


しかしその男は、

LV3名を名乗らなかった。


即座に、周囲から制止が入る。


「名を出せ」

「その言葉を、そのLVで背負えるのか」


男は黙り込む。

名を出せば、責任が生じる。

出さねば、言葉は届かない。


その沈黙が、

怒りの連鎖を断ち切った。


専門家の登場


やがて一人の老女が進み出る。


彼女は静かに、しかし明確に名乗った。


「LV2・穀物流通監査官として語る」


群衆は道を開いた。


彼女は数字を読み上げる。


倉庫の残量


輸送の遅延理由


誰が止め、誰が解決中か


煽りも、慰めもない。

責任の所在だけが示された。


怒りは疑問に変わり、

疑問は待つという選択に変わった。


王の沈黙


善宅王は、この混乱の間、

一切の声明を出さなかった。


なぜなら――

王がLV3名で語ることは、最後の手段だからだ。


その沈黙自体が、

「まだ制度は機能している」という合図だった。


終息


暴動は起きなかった。


死者も、焼かれた建物もなかった。


ただ、

多くの言葉が飲み込まれ、

少数の責任ある言葉だけが残った。


事後の記録


後に残された公文書には、こうある。


この日、国は静かであった。

それは平和だったからではない。

誰もが、名の重さを知っていたからである。


別の史家はこう評す。


名前LV制度は、

反乱を止める鎖ではなかった。

人が自分の言葉を刺す前に、

一瞬ためらうための鞘であった。


余韻(次への伏線)


この事件以降、他国はこう言い始める。


「アリランは沈黙で国を守る」


そして同時に、

この制度を表面だけ真似て失敗する国が現れる。


――そこから、次の時代が始まる

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