善宅王の第二勅令
善宅王の第二勅令
――「公報・口伝・記録に関する制限令」
即位から間もなく、善宅王は次なる勅令を発布した。
対象は剣でも貨幣でもなく、**「言葉を広める者たち」**であった。
当時、吟遊詩人、書記、宗教説教師、市場の触れ役は
すでに「マスコミ」に等しい影響力を持っていた。
王はこれを放置しなかった。
---
四大禁止条項
一、過剰な嘘の禁止
> 事実と異なる内容を、恐怖・怒り・希望を煽る目的で
> 意図的に拡散する行為を禁ずる。
※誤認や未確認情報は即訂正を義務付ける。
---
二、過剰な煽りの禁止
> 民衆の感情を過度に揺さぶり、
> 敵意・崇拝・憎悪を煽る表現を禁ずる。
詩・演説・説法も対象とされた。
---
三、過剰広告の禁止
> 商品・宗教・思想・人物について、
> 実態以上の効能・価値・神秘性を誇張して伝えることを禁ずる。
特に**治療・魔道具・ダンジョン関連**は厳罰。
---
四、自己利益報道の禁止
> 情報発信者が、
> 自らの金銭・地位・影響力を高める目的で
> 公的情報を利用することを禁ずる。
発信者は**利害関係の申告**を義務付けられた。
---
実務運用:言葉監査官の設置
善宅王は新たな官職を設ける。
「公報監査官」
* 文章・演説・詩・説法を事後監査
* 違反は **訂正命令 → 公開謝罪 → 発信停止** の三段階
* 故意・反復犯は追放または職業剥奪
重要なのは――
**検閲ではなく「責任追及」**であった点だ。
---
社会の反応
民衆
* 噂の暴走が減り、市場が静かになる
* 「怖い話」が売れなくなる一方、
**信頼される語り手**が現れ始める
既存権力者
* 宗教家・大商人・一部貴族が強く反発
* 「言葉の自由を奪う王」と非難
王の返答(記録より)
> 「自由とは、嘘が無制限に許されることではない」
> 「言葉を放つ者が、刃の重さを知ることだ」
---
## 名前LV制度との連動
この勅令により、
* **LV2以上の名**を使って発信する者は
影響力を持つと見なされ、監査対象が厳格化
* LV1名での匿名煽動は
重罪扱い(責任回避と判断)
結果として、
> **名を持つ者ほど、言葉に慎重になる国**
が形成された。
---
## 影の噂、再燃
皮肉にも噂はこう変質する。
> 「ここまで言葉を恐れる王は、
> 本当に清白なのか?」
しかし同時に、別の声も残る。
> 「嘘を禁じる王ほど、
> 嘘を暴かれる覚悟がある者はいない」
---
## 後世の評価(史論抜粋)
> *善宅王は剣を抜かなかった。*
> *彼が抜いたのは、言葉の暴走に対する鞘である。*
> *彼の国では、戦争よりも先に噂が死んだ。*
> *それが幸福だったかどうかは、今も議論される。*




