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14世紀――アリラン王国


時は14世紀。

迷宮ダンジョンが国家権力と結びつき始めた、極めて危うい時代。


アリラン王国において、その転換点となった男がいる。


前野 善宅まえの・ぜんたく


元は辺境出身の無名の男。

だが彼はダンジョンパワーを王権にまで昇華させた初の人物となった。


前王が病に伏してから、即位までの期間はあまりにも短かった。

政争も内乱もなく、ただ「継承」が行われた。


それゆえ、影では囁かれる。


「病気は偶然ではないのではないか」

「ダンジョンが王を選んだのではなく、王がダンジョンで選別したのではないか」


善宅本人は、これを終生否定している。


善宅王の最初の勅令

――「名のレベル」の制定


即位直後、彼が最初に行った政策は、

税制でも軍制でもなく――**「名前の管理」**だった。


善宅はこう命じた。


名前のLVレベル制度


LV1:一般名


平民が日常で用いる名


家族、同業者、村落内のみで使用


公的文書には原則記載不可


LV2:専門家名


職能・資格・役務に紐づく名


技師、学者、官吏、軍人など


同職能者、上官のみ使用可能


LV3:貴族・王族名


血統・叙爵・王権に結びつく真名


王国の公式記録でのみ使用


呼称を誤れば、罪に問われる


絶対規則


同じLVでない者が、その名で呼び合うことを禁ずる


違反者は処罰対象となる。

例外はない。


金庫に眠る「名簿」


善宅は、全てのLV2・LV3の名を一冊の書にまとめ、

王城地下の金庫に封印した。


この名簿は、


魔術的にも


政治的にも


心理的にも


極めて重要な意味を持つ。


名を知ることは、

その者を操作できる可能性を意味したからだ。


善宅はそれを理解していた。


民の反応と影の噂


民衆は戸惑い、貴族は恐れた。


名を呼べば、身分が露わになる


名を誤れば、罪になる


名を知らなければ、触れられない


噂は止まらない。


「前王は本当に病だったのか?」

「ダンジョンが命を吸ったのでは?」

「名簿は呪具ではないのか?」


善宅は沈黙を守る。


ただ一度だけ、側近にこう言ったという。


「名を軽く扱う国は、必ず血を軽く扱う」


歴史家の後世評価(断章)


数十年後、ある年代記にはこう記される。


善宅王は、剣で国を治めなかった。

言葉と名で、戦争を未然に殺した王である。


一方で、別の史料にはこうもある。


名を管理した王は、やがて心を管理しようとした。

それが善であったかは、未だ議論が終わらない。



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