段ボールと女の子
今回は実体験を元にしたお話です。
※なお作中で出てくる虐めの内容は実際に筆者である自分が受けた虐めです。
「えーなんでよ」
「ワハハハ」
そんな談笑が聞こえる中、俺、西村 真咲は高校に入学して1週間が経ったある日も一人教室の自分の机で本を読んでいた。
ちなみに俺はシステム科に入学したのだが、人数の問題で他の科と二つで一つのクラスとなっている。
俺は後の席を振り返る
そこだけ時間が止まっているかのように椅子と机があるだけで荷物の一つも無い。
と言うかこの席の子は入学以来一度として来ていない。
この席の子は一体どんな子なのだろうか
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴って皆がドタバタと席に着く
俺は次の授業の用意を机に出す。
そんなこんなで一日が過ぎていった。
「さようなら」
一斉に挨拶をして、みんなそれぞれ友達とワイワイと何処に寄る?などなど話している。
そんな中、俺は一人リュックを背負い帰ろうとしていた。
「ちょっと西村君良いかな?」
先生が珍しく俺を引き止めた
「は、はい」
俺は不思議に思いながら聞いてみる
「あなたの後の席の羽崎さんの事なんだけど…」
「入学式以来一度も来てませんよね」
「そうなの。それで…咲君に羽崎さんが学校に来れるようにサポートして欲しいの」
まさかのお願いに俺は驚いた
「な、なんで俺なんですか?」
「咲君は羽崎さんとは違う中学だったでしょ」
「それはそうですけど…先生が行ったら良いのでは……」
俺は思った事を素直に言ってみる
「それだと来てはくれても強制的にこさせたみたいでしょ」
「あぁ。そう言う事」
「先生思ったの。先生が行って無理に来てもらうより、クラスメイトに励まして貰って自分の意思で来れた方がいいんじゃないかって」
「分かりました」
こうして俺は羽崎さんの家へと行くことになった。
「げぇ」
俺は足を止める
数キロ先にある男子生徒が居た。
アイツ…西田仁は小学校の頃、俺を散々虐めてきたガキ大将のような奴だ。
気付かれないように俺はその場を離れて別の道から羽崎さんの家へと向かった。
俺は羽崎さんの家に行き、お母さんに羽崎さんの部屋へと案内してもらった。
「お客さん居るから、開けるわよー」
羽崎さんのお母さんがドアノブを持つと言う。
「ちょ、ちょっと待って…」
ガタバザドサ
部屋の中から何やら物音がする
「開けるわよ」
羽崎さんのお母さんが改めて声を掛けてからドアを開ける。
「……」
言葉を失っていた
部屋にはベッドと勉強机、更に部屋の端にはシステム科らしくデスクトップPCがあった。
そして部屋に"人"は居らずあるのは……
逆さの"完熟みかん"の段ボールがただ一つ。
「あら」
お母さんも思わず笑っている
さっきの物音はこれだったのか。
って事はもしかしてこの中に羽崎さんが…?
「あの〜」
「な、何ですか?」
やっぱりだったー!
段ボールの中から声だけがする女子……
以前にアニメ好きの父に見せられたアニメを思い出す。
例えで言うとぼっ◯ざろっくの後藤ひとりやラ◯ライブシリーズの天王寺瑠奈、バトルア◯リーテス大運動会の神崎あかりのような感じだ。
如く段ボールの中から声だけが聞こえる。
「俺は西村真咲だ。それで……箱から出てきてくれないかな」
「そ、それは無理」
完全に引きこもり少女である
一体どうやってこの子に学校に来てもらうんだよ。
諦めたらそこで試合終了じゃないか。
俺は諦めずに聞いてみる。
「何で学校に来ないの?」
「そ、それは…」
「あーえっと無理には言わなくてもいいからね」
俺は思わず言い足す
すると箱の中の彼女は小声ながらも昔の事を話してくれた。
「小学校の時、クラスの男の子達に虐められて……学校…それに男の子が怖い……と言うか苦手になったの」
俺の中で今まで忘れようとしていた記憶が蘇る。
「一緒だね」
「え?」
「俺も小学校の時、クラスの男子に虐められてたんだよ」
「そう…なの?」
箱の中からなので少しくぐもってはいたが彼女はそう言った。
「確か…俺の学年にガキ大将のような奴がいたんだけど…帰ってたらそいつに急に両目を隠されて、連れられるがままに歩いたら電柱にぶつかっておでこから血を出したこともあった」
この時虐めてきたのがさっき見かけた仁だった。
「ひ、ヒドイね…」
何だか初めて感じる気持ちだった。
自分のあった虐めの話をしてヒドイと共感してもらったの初めてだったからだ。
「あとは…筆箱を隠されて泣きそうになりながら返してって頼んだり……散々虐められたよ」
「そ、そんなにされて…学校に行くのとか、嫌にならなかったの?」
「そりゃあ嫌だって思ったこともあった。だけど俺はそれでも学校に行った。ただ今まで以上に静かにして読書ばっかりしてたけど」
俺は自虐のように笑いながら言う。
箱の中にいる彼女となら何でも話せるような、そんな気がしていた。
「その…虐めのこと先生には話したの?」
「話さなかったよ。」
「なんで?」
「余り話を大きくしたくは無かったし、自分が気にしなければ良いって思ったから…かな」
何故だか彼女には何のためらいもなく話せた
まぁ傍から見れば段ボールに話しかけてるヤバい人なのだが…
「わ、私は話したよ。でも…何で話したんだってさらに虐められて…」
本当に辛かったんだろうな…
自分の経験もあって彼女の苦痛や苦しみが容易に想像出来た。
俺は時計を見る
気付けば5時を過ぎていて、日も落ちてきていた。
「あ、そろそろ俺は帰るから」
時間の事もあったが実際の所、彼女に嫌な事をこれ以上思い出させるのは可哀想だったからだ。
立ち上がった俺はドアの方へと歩いていく。
「あの!」
彼女が今までで一番大きな声を出したと同時にゴトンと箱が倒れる音がして俺は振り返る。
すると今まで頑なに箱から出てこなかった彼女が箱から出ていた。
白いパーカーに箱に入ってた為かボザボサになったボブカットの髪にポツンと伸びるアホ毛。そして大きな茶色い瞳。
それこそ彼女の"本当"の姿だった。
可愛い
俺はただ一言そう思った
心臓の鼓動が早い
彼女を見て俺は物凄くドキドキしていた。
「わ、私の名前……」
確かに。俺は彼女、羽崎さんの名字しか知らなかった。
「咲花……」
少し恥ずかしそうな小さい声だったが俺には聞こえた。
「分かったよ。咲花さんまた来るね」
「うん」
咲花さんは今までで一番嬉しそうな声を出した
とは言えどうしたら咲花さんは学校に来てくれるだろうか。
俺は悩みながら日の落ちた道を歩く。
(にしても…あの時感じたドキドキした気持ちは何だったんだろうか)
(恋…まさかそんな訳無いよな)
俺は歩きながら心の中で自問自答していた。
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私、羽崎咲花は部屋でひとり俯き加減でベッドに座って居た。
今日、小学校以来かなり久しぶりに男の子と話した。
だけど意外にも私はスラスラと話せていた。
(中学の時だって全く話せなかったのに)
段ボールで顔が見えなかったと言えばそうだが……
やはり同じ境遇だと聞いたのが大きいのかも
真咲君も小学校の頃に虐められていた。
私だってそうだった、物を隠されるのなんてしょっちゅうで他にも私の事を無視したり…授業で当てられて…噛んだらそれを真似されて
一部の女の子が止めてあげてよ!と言ってはくれた。だけど私は女の子への申し訳なさと虐められることのストレスで一杯だった。
そして心に花があるとするならその花が完全に枯れて……学校と男の子が怖くなって……不登校になった。
でも真咲君は違った。
私を虐めることもせず、むしろ共感して…心配もしてくれた。
さっきから真咲君のことばかり考えちゃうし、心なしか鼓動も早い。
(なんだろう。この気持ち)
私は部屋で一人、さっきまで入っていた段ボールを見つめていた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
今回は今までと思考を変えて主人公とヒロインだけを中心とした二人のラブコメです。
一応薫る花は凛と咲くのような雰囲気を目指せたらなと考えています。
ちなみに咲花さんのモデルは話の中で触れたラブライブ虹ヶ咲スクールアイドル同好会の天王寺璃奈ちゃんだったりします。情報処理学科なところなど…
そして静かなヒロインを考えた時に虐めを受けて不登校のクラスメイトの女子を助けると言う内容を思いついて、一気に書いてしまいました。ちなみに話で触れた通り、本当に目隠しをされて電柱にぶつかっておでこから血を出しました。痛くて泣きそうになったのを覚えています。
一応今作は不定期連載予定なのでメインは仲川さんちの四つ子家庭教師とラノベ彼女を継続予定です。
では次回お楽しみに!




