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5年振りに会った幼馴染から『友達の話なんだけど』と相談を持ち掛けられたら  作者: 竜山三郎丸


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第35話 日曜日のお昼、縁結びのお守りを求めて

◇◇◇


 土曜日に穂村司郎と霧ヶ宮泉は縁結びのお守りを求めて神社を訪れた。


 そして、翌日日曜日――。


「ごめ~ん、お待たせっ!寝坊しちゃった!」


 駅前での待ち合わせに少し遅れた様で、柏木弥宵は息を切らせて走って来る。


 シロウは爽やかに微笑み、片手を上げる。


「あぁ、気にすんな。俺も今来たところだ」


「えへへ、ごめんね。いずみんは?」


 シロウは白々しく周囲を見渡して首を傾げる。


「さぁ、トイレじゃねぇ?」


「調子に乗-るーなっ」


 とぼけたシロウの声を遮るように少し離れた自販機の所からイズミの声がした。


「あっ、いずみん!ごめんね~、遅れて」


 イズミはミルクティのペットボトルを持ちながら呆れ顔でシロウを見る。


「何が『さぁ?』よ。自分でお願いしたんでしょ?『柏木と待ち合わせっぽくしたいから隠れてろ』って。ばっかみたい」


「……しょうがねぇだろ。俺だって人生に一度くらい『今来たところだ』って言ってみたかったんだから。つーか、すぐばらすなよ」


「えっ、何それ。何でそんな事するの?って言うか、シロウくんは昨日もいずみんと待ち合わせたんだよね?昨日やってみればよかったんじゃないの?」


 苦笑いを浮かべる弥宵に呆れ顔でため息を返すシロウ。


「何言ってんだ、お前?何で俺がイズミ相手にそんな事をしなければならないんだ?常識で物を考えろよな」


「へぇ、じゃあ何でシロウが弥宵に滑稽で馬鹿みたいな待ち合わせの真似事をする必要があったのか常識的かつ合理的な理由を教えてよ」


 ムッとして腕を組み高圧的に言い放つイズミをニコニコと宥める弥宵。


「ほらほら、ケンカしないのっ。二人とも今日はありがとね、急に誘ったのに来てくれてさ」


「まぁ、別に。マキトも今日友達と出かけてて暇だったし」


「ふぅん、そう。昨日は『俺は忙しいんだから半年先まで予定が一杯だ』って言って無かったっけ?」


 シロウは気にせずにヘラヘラと笑う。


「ははは、そうだっけ?お前記憶力いいな」


「はいはい、どういたしまして。あ、弥宵これ。昨日買ったお守り」


「『授かった』な」


 弥宵はチラリとシロウを見るが、訂正の意味が良く分からずにすぐに視線をイズミに戻す。


「ありがと~」


 嬉しそうに受け取った弥宵は両手でお守りを天に掲げ、イズミもニコニコと微笑む。


「早速ご利益があったみたいでよかったわ」


「え、何かあったの……?」


 シロウは訝し気にイズミを見る。


「うん、最近部活の帰りに一緒に帰ってるんだって」


「イズミお前さぁ」


「ん?」


 シロウはひそひそとイズミに小声で耳打つ。


「……柏木の申告を真に受けんなよな。どうせあれだぞ、着替えて校門を出るまで剣道部とサッカー部が半径何メートルの距離で一緒になったとかそんなレベルだぞ?そりゃなるだろ。同じ時間に部活終わるんだから」


「……私もそう言ったよ?でも違うみたいなの。ちゃんとマキト君から誘われて、2人で帰ってるんだってさ」


 シロウの耳打ちにイズミも懐疑的に眉を寄せてヒソヒソと答える。


「マジかよ、会話になんねーだろ」


「もしもーし、ヒソヒソ話は本人の目の前でするもんじゃないよ~」


 困り顔で弥宵がもヒソヒソ声で割って入る。


「だって……なぁ?いつもバグったロボットみたいになってんじゃん。なぁ、イズミ」


「……私に振らないでよ」


 弥宵は少し頬を赤らめつつ、得意げにスマホの画面を見せる。


「んふふふふっ、二人ともいつの話をしてるの?私はもうバグった大佐じゃないもんね!じゃん、これを見てもそんな事言えるかな!?」


 自信満々に弥宵が見せて来た写真は半ば盗撮気味に撮られた自転車を押すマキトの写真。手ぶれ補正などでは補えぬ手ぶれにより、印象派の絵画の様にも見える。


「……んー、まぁ、言えるかな」


「嘘っ!?」


「シロウ、よく見て。確かに隠し撮りっぽいけど恐らく距離は近いわ」


「隠し撮ってないもん!ちゃんと許可撮ったもん!」


 柏木は正月の獅子舞さながら首を横に振る。


「許可取ってこの写真ってすげーなぁ」


「じゃあ本人に聞いてみなよ!わたしは潔白だからねっ」


 シロウはスマホを取り出すと躊躇い無くポチポチとマキトにメッセージを送る。


「そんじゃ遠慮無く。『か、し、わ、ぎ、と、つ、き、あ――』」

「っざっけんなぁ!本当にもうっコラァ!」


 一文字ずつ声に出しながら打っていたシロウを遮るように真っ赤な顔の柏木弥宵の怒声が響く。


 怒声にビクッとしたシロウに詰め寄るとニコニコと微笑みながら両手でシロウの胸倉を掴む。


「……あのね、シロウくん?ダメな冗談ってのが世の中にはあってね?今のはその(たぐい)の冗談だよね?分かるかなぁ?あははは」


 ケラケラと明るく笑う柏木が逆に怖い。


 イズミは目を閉じてコクリと頷く。


「うん、シロウが悪い」


「すっ……すいませんでした。柏木先輩」


 引きつった笑顔でペコペコと頭を下げるシロウに、腕を組み偉そうに頷く弥宵。


「許すっ」


 シロウは深々と柏木弥宵に頭を下げる。


「ありがとうございますっ」


「じゃあそろそろ行く?」


 ミルクティの栓を開けながら時計をチラリと見るイズミ。


「結局どこ行くんだっけ?俺聞いてないんだけど」


「……よく聞かないでOKするねぇ。嬉しいけどさ」


「まぁ、言った通り暇だったし。で、目的地は?」


「神社よ。縁結びのお守りを買いに行くの」


 イズミの言葉に眉を寄せて首を捻るシロウは、『買いに行く』と言う言葉にも突っ込みをしなくなる。


「あれ?デジャヴかな?それともタイムリープしちゃった?」


「何言ってるの。昨日行ったじゃない」


 パスケースを出しながら事も無げに答えるイズミにちょいちょいと手招きをする。


「いやいや、お前こそ何言ってんの。昨日行ったじゃん」


 また言い合いが始まりそうな雰囲気を察した弥宵がイズミの言葉を補足する。


「いずみんからお守りの写真が来た直後にマキトくんからメッセージが来たから、それを見た先輩が『ご利益すっごい!』ってなって、『私にも買ってきて!』って。だから一緒に買いに行く事になったんだ」


「あー……そう言う事っすか。じゃあ俺も学業成就とか授かって来ますかねぇ」


「ねぇねぇ、何で弥宵にはどや顔で『買うじゃねぇ、授かるだ』って言わないの?何で?」


「うるせぇな、細かい事はいいんだよ」














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