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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋愛じゃないやつ

切なく哀しい物語

ダーク好きな人からしたら、きっと、ダークではないかもしれません。

でも、ハッピーエンドしか好きじゃない人は、やめてくださいね。

たぶん、暗い気分になります。

好きでも、嫌いでもない人は、たぶん大丈夫です。


これは、ずっとずっと未来のとても短いお話です。

この世界に、居場所がなくなった人たちが、最後の最後に行き着くところがありました。地図にも載っていない、小さ過ぎる国でした。

大国のトップの数人しか知らないような、名もない国です。

これはそんな国で起こった、悲しすぎる物語です。


 その小さな国では、王様が絶対権力を握っていました。

王の命に背くことは死を意味していたのです。そしてこの国の民は、王から逃げることもできませんでした。

なぜなら、この国の民は、この国にしか居場所がない人たちだったからです。

その民たちが、この国に行き着いた理由は様々でした。

重罪を犯した。

人が信じられなくなった。

小さいことから大きなことまでありました。

しかしその理由が他の人から見たら小さいことでも、この民たちにとっては、この世界に居場所が無くなるほどの大きなことだったのです。

この哀れな民たちは、居場所のなくなった自分たちを受け入れてくれたこの国の王の命に、従順に従っていました。

従ってさえいれば、幸せに暮らすことができ、愛する家族を持つこともできたのです。



初めてこの国が国として立ち上がった時から数十年は、この国はとても幸せでした。

初代の王がとてもいい人だったからです。

民への思いやりを忘れず、すべての人に感謝することのできる、優しい人でした。

しかし、この王がご病気で亡くなると、この国は荒れてしまいます。

次に王となった方が、狂った方だったからです。

 

今よりずっとずっと先のこの世界は、ある困った問題を抱えていました。

人間の数が増え過ぎてしまったのです。

人間すべてに与えられる食糧を確保するのが難しくなっていきました。

地球上の資源も底を突きつつあったため、多すぎる人間を抱えていくことが困難になっていたのです。

そのため、大国のトップは考えました。

「人間の数を減らそう」と。

その人間とは、食糧をたらふく食べ、資源を無駄に消費する、お金持ちのことでした。

そしてそれらの国のトップは、極秘に、あの小さな国の狂った王に依頼をしました。

その依頼は、「その人間たちを請け負うこと」です。

そしてその人間をどうするかは、王に任せられました。

しかし、口に出さずともその本心は分かっていました。

分かっていたからこそ、狂った王は引き受けたのです。

「その人間たちの抹殺」を。


 初代の王ならば、きっと引き受けなかった依頼に、狂った王は嬉しそうに頷きました。

そして年に何人もの人間が、小さな国に運ばれてくるようになりました。

運ばれてくる人間の中には、老人も成人も子供もいます。

国が衰退しないように、調整をしながら、大国は小さな国に人間を送っているからです。

いなくなった人間は、「神隠し」にあったことにされているようです。

ずっとずっと未来の世界のことです。

科学技術も進み、誰が「神隠し」など信じるのだ、と思うかもしれません。

しかし、無機質な機械に囲まれた未来の人間は、心の安らぎを求めて、大昔のように、神を信じるようになっていたのです。

そのため「神隠し」にあったと言っても、疑う者はいませんでした。



 大量に人間が運び込まれた小さな国の狂った王は、民に1つの命令を下しました。

「1年に5人、殺せ」という命令でした。

そしてその命令に従う者には大金を、従わない者には死を与えると告げました。

狂った王は、殺し方までも指定しました。

それは、生きたまま手足を縛られた人間の心臓に向かって、短剣を刺す、というやり方でした。

小さな国の民は、もちろんそんなことはしたくはありません。

だって、殺す理由がないのですから。

その人を恨んでいるわけでも、憎んでいるわけでもありません。

しかし、王の命は絶対なのです。


 しかたなく、1人、また1人と王の命に従い、贅沢をして太った人間の心臓に、短剣を刺していきました。

初めて会った人間の心臓に。

短剣は、相手の懐に入らなければ、致命傷は与えられません。

だから、命令を聞いた民の手や顔、体は、血で汚れました。

新鮮な、真っ赤な血で。

その血のにおいは、洗っても、洗っても、洗っても、洗っても、取れませんでした。

短剣から伝わってきた、肉の感触と一緒に。

奇妙な音と一緒に。


どうしても人間を殺すことができない者は代わりに殺されました。

直接、狂った王の手で殺されました。

それでも、やはり人間を殺すことは、民にとって苦しいものでした。

そのため、殺す代わりに、殺されることを望むものが多く出てきたのです。

そうなると狂った王の楽しみは半減してしまいます。

狂った王は、殺される人間と、殺したことを悔やむ民の苦しみの表情を見たいのですから。

だから王は、以前言った命令に、少しだけあることを加えたのです。

「殺せなかった者は、その者とその家族の命も奪う」


 小さな国の民は、自分の命を犠牲にすることはまだできました。

しかし大切な人の命を犠牲にすることはできませんでした。

だから罪のない人間の命を次々に奪っていったのです。

血のにおいが、国中に充満しました。

そして、誰もが泣きました。

殺される者も、殺した民も。

 

 この小さな国には、多くの民の悲しく、苦しいうめき声と、狂った王の楽しそうな笑い声が毎日響くと言います。


どうだったでしょうか。

私が書いた唯一のダークな作品です。


これを書いて、私はやっぱ、幸せな話を書きたいなって思いました。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  会話がないのに、テンポ良く読み進めることができました。  小説と言うよりは、詩のような雰囲気がありますね。 [気になる点]  独特の書き方なのかもしれませんが、段落があったりなかったり…
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