EP2ACT2-吸血鬼兄弟-
8
・・・やったか。
リダーヒーは手応えを感じた。
あの速度と奴の状況ではこうなる。
しかしギヒは精神通話でリダーヒーに強く声を掛けた。
-其処から離れろ!。-
すると彼の足元に白い何かが迫る。
「何!?。」
その瞬間にギヒは彼に近づき一緒にその場を後にする。
だがギヒの使用するテレポートにかなりの限界があった。
離れたとしてもその白い物体は背後にある。
そして眷獣であったモノは完全に凍り、その場で轟音を立て崩れる。
しかし油断も束の間だった二人に強い光が襲う。
軈てその場所は爆音を挙げた。
どうやらシュメンツの魔術のようだ。
シュメンツは舌打ちをする。
「相殺されたか。」
その瞳は絶対零度そのものだった。
「危ねぇ。」
リダーヒーは全身で息をしていた。
どうやら自身の大量の血液を盾へ変換したらしい。
7
目の前には巨大な何かが召喚された。
シュメンツは冷静にそれを瞳に写す。
「眷獣か。」
これは吸血鬼しか出来ない業だ。
自身の寿命を対価にし異界の獣と契約する。
そしてその眷獣は轟音を鳴らす。
辺りは揺れる。
「ケオスべロスか。」
シュメンツはこの眷獣を知っている。
ケオスベロスは地獄の番犬と呼ばれる。
地獄にも色んな種類があり、その中でも特に荒れた地にある。
死して尚も抵抗する者に永遠にそれを付き合う番犬。
攻撃すればする程複数体になり散らばる事も可能な厄介な犬である。
遠い過去にとある吸血鬼も召喚していた。
しかし吸血鬼である筈のあの吸血鬼は息が乱れていた。
異界の獣と契約するには相当な寿命を代償にしなければならない。
・・・はては吸血鬼と人間のハーフか。
シュメンツはもう一人の吸血鬼ギヒを見る。
ギヒはその行動に悟った。
「何だ?俺らの事が分かったのか?。」
二人の間には冷たい風が吹く。
だがシュメンツは何も答えない。
それに対しギヒも何も期待などはしていなかった。
するとシュメンツの背後には巨大な爪が降り掛かり地面が揺れた。
6
しかしある日の夜に襲撃にあった。
表では火災となっている、俺は未だ鮮明に覚えているよ。
目の前で父は殺された。
それから母は行方不明となる。
そして俺らはとある組織に送られた。
それから俺らは実験体として扱われた。
再生速度を図る為だけに切断されたり色々された。
その都度、俺ら痛みに悶え悲鳴に怒号を挙げた。
他にも複数の実験もされた。
もうどれくらいかは分からない。
俺らは当時6歳だった。
もう何が何だか分からない。
人としての尊厳はその場所に無かった。
毎日毎日、絶望が俺らを笑っていた。
でもつい昨日の夜だった。
とある人物が此処を襲撃をした。
そして俺らにその人物が声を掛けてくれた。
「アンタ達を此処から出してあげる。」
俺はそれに対して疑問を投げた。
「詳しくは言えないわ、とりま此処から出なさい。
アタシは未だやる事がある。」
そう言って俺らを縛るモノを破壊した。
「この近く学園がある。
そこを襲撃し血液を補給なさい。
アタシもそこに向かう。
出来るだけ人は殺さない程度にするのよ。」
5
俺とギヒは実の兄弟だ。
しかし俺らには秘密があった。
そう吸血鬼として生を成した事だ。
幼い頃からとある洞窟で暮らしていた。
俺らの母は吸血鬼であった。
しかし元々人間出身だった母はある日、異形へと変わった。
母は言っていた。
当時、母は看護師として夜勤を担ってた。
とある部屋に入った時にその部屋には吸血鬼がいた。
その吸血鬼はこう述べたそうだ。
「病人の血は不味いな。
ふふふ俺は運が良い、美味そうな女が来た。」
そして母はその日を境に屍躰となったようだ。
それから数十年が経ち、親に気に入られ夜人そして夜帝へと成す。
その階級になれば「親」から離れられる。
そして母はその親を抹殺した。
それから母は人間として生活するようになる。
しかし太陽に強くなるのはあくまで塵にならないだけである。
体力・精神的にはかなり来る。
人で例えるなら太陽に当たる程に抑うつは増していた。
そんな都合もあり夜職で働いてたようだ。
しかしそんな時に俺らの父にあたる男性に出会う。
母は父に自分の事を話したそうだ。
しかし父は受け入れた。
それからは俺らが産まれた父は俺らと母の事を大切にしてくれた。