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2 和国の内親王(でっち上げ)

 突然異世界に……それも聖女召喚なんていう冗談みたいな事に巻き込まれているけど、そもそもわたしはただの女子高生だ。

 聖女などでは決してないので早々に元の場所に帰して貰いたい。


 でもこんな、物語に悪役、理不尽の象徴として出てくるようないかにも王侯貴族ですって人達が、せっかく召喚した聖女をすんなり元の世界に帰すとは思えない。

 それに、そもそも帰る方法は無いのかもしれない。

 だってさっき召喚された時に光っていた魔方陣はとっくに消えてしまっている。


 少なくとも今すぐに「帰せ」って叫んだところで無駄なんだと思う。


 かといって、こんなところに長く留まりたくなんてない。


 帰る方法があるのかないのかは分からないけど、このままなし崩し成り行きで聖女とかをさせられるなんて有り得ないから!


 だって分かるもの。

 この国、この世界に今すぐどうしても聖女が必要で、召喚聖女でなければいけない何かがあってやむを得ず異世界から女の子を召喚してしまったという訳じゃ無いってことは。 朝昼夕に祈るだけってなんだそれ!


 こんなのただの誘拐じゃない! 滅茶苦茶腹が立つんだけど!


 腹が立つけど、小娘ひとりが喚いたって暴れたってこの人達には痛くも痒くもないんだろうと思うんだ。腹が立つ!


 腹が立つけど、もうわたしのすることは決まっている。



 とっととここから逃げてやる!!



 でもただ逃げるだけじゃ悔しいからなんとかこの人達をぎゃふんと言わせたいんだよね! それでもって謝罪を引き出したい!

 ……っていうのは無理でも、少しでもこの人達を焦らせられたら御の字かな。



「失礼はどちらか。このような場所に突然……召喚とは。これではまるで、誘拐犯の所業ではありませんか」


案の定、王様たちはぽかんとしている。

何を言われているのか理解できていないって顔。


 わたしの御姫様のイメージ……。

 鷹揚に、慌てず、騒がず、気持ち顎を上げて、目蓋も気持ち伏せて……そう、眉芝居で。



 わたしはただの女子高生だけど、舞台俳優でもある。


 幼稚園児の頃から都心に大きな劇場を持つ劇団に入っていて、児童部の頃から数えきれないくらい舞台を経験している。国立の劇場での公演も何度も出ているし、舞台優先だからあまりしないけどテレビのお仕事だってちょいちょいしている、それなりに名前の知られた役者だと自負している。


 だからアドリブ……即興だけど、大国の御姫様のお芝居でこの人達をぎゃふんと……は、言わないかもしれないけど、大国の要人を召喚したとなったら身分を鼻にかけているこの人達も少しは焦るでしょ!


 御姫様の設定としてはここが王国なら皇国。……皇女を騙るのはちょっとアレだから皇孫、内親王かな。あんまり変わらないけど気持ち的に。


 国の名前は考えなくてもするっと〈和国〉って出てくるね(笑)

 倭国は外国から見た日本の呼称だと思っているので〈和国〉。ラノベとかだと異世界にも昔の日本に似た和風の国があったりするけどここはどうなんだろう…。


 もし他にも被召喚者や日本の転生者がいるような世界だとしても別の世界の島国だって言えば大丈夫!


 ああ、わたし、アドリブのレッスン好きだったな……。

 小説やマンガ……物語が大好きだから、作中の台詞や言い回しを思い浮かべながら自分の中でどんどん役の設定が、人生が積み上がっていくの。

 わたし、またお稽古行けるのかな……。


 レッスンでも舞台でもよくわたしのアドリブは力業だって言われていたけど、ちょっと強引な設定でも相手には判らないんだし、押しきる自信はある。


 がんばれ! 確りしろ自分!

 これは交渉でもあるんだから、心を、意思を強く持って演じきるよ!


 私は和国の御姫様……名前は八重洲媛。

 もちろん偽名。東京駅に向かっていたからね。


 すぐに逃げ出すつもりだけど、国から迎えが来るだろうから、何かさせたいならその者を通して和国に謝罪と交渉をしろと突っぱねよう。


 この国の為に何かするつもりも無いし、もちろん〈和国〉からのお迎えなんかないけどね!

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