波乱の月曜日
さて、俺もアニメばかり見ているわけにもいかない。これでも学生だから、約2週間後にある定期テストの勉強をしなければならない。
しかし、まあ大抵テスト勉強なんてものはやる気もでないし、ましてや「あと2週間もあるぞぉ!わぁい!」となって「明日から本気出す!」って1日1回、合計14回言っていればあら不思議!テスト期間が終わっちゃった!それはテスト期間だけでなく、テストの点数と成績も終わるんだよなぁ...
俺の通っている高校はいわゆる「自称進学校」だからテストはそこそこ難しい。そして赤点とったら補習である。補習は避けたいところである。いや補習自体はいいんだが、周りから「あいつ補習らしいよヒソヒソ」などと言われようものならば羞恥で自分でヒ素を摂取してしまうかもしれない。
ま、今日は日曜日だし明日から頑張ればいいだろう。
で、迎えた月曜日。
気分は最悪である。なんなら日曜の夜からサザエさん症候群を発症していた。ガッコウイキタクナイヨー。
授業中寝てると怒られるんだよなぁ…とか考えながらチャリを漕いでたらいつの間にか学校についてしまった。あ、良い子のみんなは真似しないでね!
月曜日は大抵いつもよりザワついている。週末に一緒に遊んだ者達は集まって思い出話をする。おい、お前ら昨日とかに会ってんじゃないの?もしかしてもう忘れちゃったの?
俺が寝れるタイミングは朝のホームルームが始まるこの時間と昼休みだけである。休み時間短すぎではなかろうか。さて、今のうちに寝るか…と腕をクロスさせ、頭を乗せるところを作ったところで、指に激痛が走った。前の人の椅子が机から少し出ていた俺の指にヒット。そして、俺の机と前の人の椅子でプレス。いてぇ。
「うg」
やべ、変な声が出た。
「あ、ごめんね!大丈夫?」
「え?ああ、大丈夫だ」
とは強がってみたもののジンジンする。どうなってんだ…と思いながら指を見ると少し赤くなっている。それを前の席の人も見ていたようで、急にアワアワし始めた。
「ご、ごめんね!指赤くなっちゃった…」
そんな謝らなくても…ちょっと指挟んだだけだし… という趣旨を伝えたかったのだが、ろくに会話してないせいで声が出てこない。何とか顔を上げて口は開けたものの言葉が出てこない。とかやっていたら、指先にぬるい風を感じた。視線を下にやると挟んだ俺の指は、ちょこんとつままれて、相手の唇に近くなっていた。あ、なんだフーフーしてくれてr_______
え?
え?
ゑ?
こうなったら俺の脳内コンピューターはブルースクリーンである。これ指を最速で離したほうがいいの?それともこの幸福感に包まれていたほうがいいの?
突然の事態にバグっていると、急に風がなくなった。
「はい!これで大丈夫!」
前の席の人は笑顔でこっちを向いた。俺はここで初めて前の席の人を認識した。髪は茶のセミロングボブ、目はパッチリしている。左手首にはヘアゴムと薄い青の腕時計をしている。
「ごめんね、快斗くん」
「あ、ありがとう…」
ここで再起動した。おいまじかよ。こんなこと頭お花畑みたいな少女漫画でも起きねぇぞ。てかかわいいな。名前は確か有村菜緒だったか。顔を合わせて会話することがないからよく見てこなかった…
俺がドギマギして心拍数が160位でバックンバックンしてるのに対して、有村はなにもなかったかのように友達と会話している。に、日常茶飯事なんですかね…
さすがに俺も二時間目が始まる頃には落ち着いて通常の心拍に戻ってきた。ふぅ…一時間目が心電図検査だったらやばかったぜ…
そこからは一日は早かった。すぐ帰りのホームルームがやってきた。
「はいじゃあ、気を付けて帰ってな。はい、さよなら」
と号令もそこそこに、部活やクラブ活動がある人たちは一目散に駆け出していく。しかし、今日は何もない俺は、帰ってゲームしよう!勉強は明日から頑張ろう!と固く誓っていた。
「あ…」
声が聞こえたので、反射的に声の主を方を向いた。そこにはいい意味で俺のトラウマ、有村がいた。
「き、今日生徒会行く?」
やべ、忘れてた。そういやそうじゃん…
「完全に忘れてたわ…」
「だと思った。快斗くん、めっちゃ帰る気マンマンだったもん。」
はい、その通りです。しかし、ここでは建前でも否定しておかねば!
「いやそんなことは…」
「ま、いいや!一緒に行こ?」
「ゑ?」
また処理落ちしそうになった。なんでこの人も来るの?
「なにその変な顔」
「え、何、生徒会に用事でもあんの?」
「もう、何を言ってるの?私も生徒会役員だよ?」
まじ?そういや有村って名前あった気がするかも…
だが、女子と一緒にどこかに行くという経験に乏しい俺は、慣れていない。よしこんな時は…
「じょ。冗談だ。じゃあ、行くか」
スムーズに言うに限る。下手にどもるとキモがられるからな。どこかにラノベに書いてあった。こういう時助かるなぁ… というか今日、初耳学が多すぎではなかろうか。