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第1話

新年なので新作投稿しましたー。よろしくお願いします。

 第三王子の婚約者であるエルメラ・グリーンはグリーン侯爵家の紋章が入った馬車で王宮の舞踏会に向かっている。

 

 普段は、王宮から迎えが来て、婚約者にエスコートしてもらうが、ここ最近は兄と一緒に行くことが多い。

 他愛もない話を兄としていると、ふと窓から外の景色を見た。

 

 「絶好の婚約破棄日和ね」

 

 馬車の窓から見える空は雲一つない快晴。婚約破棄に天気は関係ないのだが、うきうきした気持ちを言葉にしたら、こうなっていた 。

 

「お兄様もそう思いますよね」

「エルメラ、まさか婚約を破棄するのか!?」

 

 普段あまり感情を表に出さない兄が、驚きを隠せていない。

 

「いいえ、お兄様。するのではなく、されてきますわ」 

 

 満面の笑みでお兄様に告げる。そう、私は婚約を破棄される予定だ。

 

「はぁ……お父様が何ておっしゃるか……。お母様はエルメラの好きなようにと考えているが、お父様はエルメラよりグリーン侯爵家の家格を大事にしている。婚約を破棄されて貧乏になる何てことはないが、世間からどんな目で見られるか分からない。……前は殿下と仲が良かったじゃないか」

 

 兄は言い終わると更に深い溜め息をついた。眉間に皺も寄っている。

 

「仲の問題ではありませんわ。いくら顔が良くて性格も悪くなくても、あんな浮気男なんかと結婚したくは無いですから。一夫一妻のこの国において、浮気なんて言語道断、例えまだ籍を入れていなくとも、婚約をしている身としては恥じるべき所業!」

 

 これから、如何にあの男が駄目な人間であるのかを兄に、熱く力説しようと思っていたら、馬車が停まった。

 

「あ、お兄様、着いたみたいですわよ」

 

「そうだね……」

 

 馬車を降りて、お兄様にエスコートしてもらい王宮の中へと入る。

 ダンスホールへ入ると、沢山の視線が私達へ向いた。あまり喜ばしくない視線の方が多い。みなさん表面上では笑顔を取り繕っていても、嘲るような、睨み付けるような視線を感じる。

 

 そのような視線の原因には二つ。

 一つ目は、私が近頃王子にエスコートされず、兄と共にパーティーに出席していること。殿下に捨てられたのだと、嘲笑している。

 二つ目は、兄に婚約者がまだ居ないこと。次期侯爵で容姿も申し分無いことから、色々なご令嬢から狙われている。

 

 ちらりと横の兄を見上げる。侯爵邸を出た時より、兄の顔色が悪くなっている……気がする。

 

 そんな中、男が一人、私へ向かってくる。平凡な茶色だが、艶やかな髪に、月のような美しさの黄色の瞳。私の婚約者である。

 

「エルメラ、私と踊って頂けますか?」

 

 これで彼と踊るのは最後になるのだろう。

 

「はい、喜んで」

 

 一曲踊り終えたので、別の所に行こうとすると引きとめられた。

 

「待ってくれ、エルメラ」

 

「私がグリーン侯爵令嬢と婚約を破棄しようとしている、という噂の真意について、皆に聞いてもらいたい」

 

 彼が声を張り上げてそんなことを言うと、いつのまにか音楽も止まり、ホールは静まり返っていた。

 

「エルメラ、君との婚約を」

 

 ついに、婚約を……?破棄!?

 次にくる筈の台詞に期待を寄せ、表情はフライングして普段より若干口角が上がっている。

 

「継続させてもらう!」

 

 堂々とこの国の第三王子、サミュエル様は婚約者(わたし)に告げた。

 

「そんな……」

 

 期待させておいて、何てひどい仕打ち。ここは破棄する流れでしょうに。

 

「殿下! 何故、婚約を破棄してくれないのか、お聞かせ下さいませ!!」

 

 エルメラ達の会話を聞いた、周りにいた人物達は頭の上に疑問符を浮かべていた。

 

「今の通り、エルメラとの婚約を破棄するつもりは更々ない。噂好きなのは結構だが、明らかな嘘を広めるのはやめて頂きたい」

 

「中断させて悪かった。皆楽しんでくれ」

  

「エルメラ、説明するから場所を移そう」

 

「……分かりました」

 

 場所を移そうと言って向かったのは彼の部屋。座り心地のよいソファに彼と向かい合って座る。

 メイドが来て、紅茶とお菓子を置いて出ていった。

 

「紅茶も来たことですし、理由をお聞かせ願えますか?」

 

「分かった。……話すとしよう」

 

 そういって彼は昔のことを話し始めた。……なんだか話が長くなりそうだ。

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