第48話 【おまけEP】ミートソースオムレツ
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時は現代。アーシャ達が帝都で奮闘している頃、孤児院で帰りを待つママとゴンスの一場面です。
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「おはよ~、ママ」
「おはよう。さすがゴンス、狙ったように良いタイミングね」
あくびしながらゴンスが食堂に入ると、ちょうどミーナが食卓に朝食を並べていた。メイン皿に盛られた料理を見て、ゴンスの眠気が吹き飛ぶ。
「あっ、ママの十八番のミートソースオムレツ! これ大好きなんだよねー」
がっちりした体に似合わぬ機敏な動きで、ゴンスはさっと席に着いてスプーンを持つ。好物を食べる時のゴンスは、まるで狩人のように俊敏だった。
「あーん、モグモグ……うん、最高!」
「ふふ、ありがとう。ゴンスの食べっぷりも最高よ、また作りたくなっちゃうもの」
そう言いながら、ミーナは首に提げた金のロケットをそっと握った。ゴンスの食べっぷりに、幼いウィルの姿を思い出しながら――。
◆――……
ウィルは、いつも料理をかきこんで食べる子供だった。見た目も味も気にしない、何の料理を食べても関係ない――少なくとも、ミーナにはそう見えた。
12歳の時、料理にハマっていたミーナは、ウィルに何か食べたいものがないか聞いてみた。するとウィルが「……じゃあ、ミートソースオムレツ」と言うので、初めてながら思うままに作ってみると、驚きの事が起こった。
ウィルがしばらく黙って皿を見つめたかと思うと、一口ずつ味わって丁寧に食べたのだ。さらに食べ終わった後、わざわざミーナの前に立って、「……美味かった」と言った。
ミーナはとても驚いた。初挑戦したオムレツは、自分ながら良い出来とは言えず、形もやや崩れていた。それでも美味いと言ってもらえたことが、嬉しくてたまらなかった。
それからミーナはミートソースオムレツをたびたび作るようになり、得意料理となった。
ところが、ウィルが「美味い」と言ったのは、最初の一度切りだった。何度作っても、丁寧に食べはするが、もう美味いとは言ってくれなかった。
……――◆
「あー美味しかった、ご馳走さま!」
「お粗末さま」
ピカピカに食べた食器を満面の笑みで下げるゴンスに、ミーナは優しく微笑んだ。
東側の窓から、暖かな朝陽が射し込む。
(アーシャ、ダニー、ウィル……皆、無事に帰って来て)
ミーナは朝陽射す帝都の方角に向かって、ひとり静かに十字を切った。
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以上、おまけEPでした
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