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リハーサル

 

 ホテルのリムジンバスに乗り、教会まで移動する。

 ウェイティングルームへ着くと、スタッフの方との挨拶もそこそこにリハーサルの開始となった。

 嫁ちゃんはウェディングドレスとメイクへ。

 旦那ちゃんはタキシードスーツに着替える。


 旦那ちゃんは着替えが済むと、身鏡を見ながら自分のスーツ姿に見惚れるというナルシストぶりを発揮した。

 花嫁の変身まで今少し、旦那ちゃんは友人の床屋タカボーが、晴れの舞台の為、見事にカットしてくれたツルツル頭を撫でたり、食事会でスピーチする長文カンニングペーパーに目を通した。


 やがて、ウェディングドレスに身を包み、髪を沖縄の波風に耐えられるようにガッチリと固めた嫁ちゃん姫が登場した。

 互いの変身ぶりにテンションがあがる。

 なるほど、これが浮足立つということだな。

 

二人の準備が整うとまったなしで、スタッフのお姉さんに促されるまま、教会の中へ入る。


「うわあ」


 思わず、声が出た。

 パンフで中の様子は知っていたけど、実際に見る式場のなんと素敵なこと。

 眩い白い大理石の床、周りはガラス張りで外が見渡せる。

 中央に白い十字架、先に広がるのはオーシャンビュー、先には万座毛が見える。

 教会内は光が拡散し、白の床に反射してキラキラと眩しい。

 そのおかげか、寝不足か私の眼はやたら細くなった。


 嫁ちゃんは目を輝かせて素敵な教会を喜んでいた。

 やっぱり女の子だなあ。

 完全に浮かれる私達をよそに、スタッフの方々は淡々と仕事をこなす。

 いつの間にかビデオカメラが回り始めた。

 カメラマンさんの誘導で写真の先取りを行う。


「おっ、いいですね!」


 時折、さもいい画が撮れているようなカメラマンさんの一言に、調子に乗る旦那ちゃんたち。

 それはグラビアアイドルも思わず脱いでしまいたくなるような言葉の魔法だった。

 ス・テ・キ・・・。

 その気にさせられた旦那ちゃんと嫁ちゃんは、カメラマンさんの要望に全力で答え様々なポーズをとる。


 旦那ちゃんの場合・・・ポケットに両手を入れ、遠い目で海を見るって・・・昭和?

 二人の個別の写真(2対8の割合で花嫁の激写が多い)が撮り終わると、一緒の写真撮りを絵になる場所で行う。

 後日見ると、まぁ、それなりによく撮れていた・・・それなりに。

 

 先撮りが終わると、本格的なリハーサルがはじまる。

 式の所作を一通りレクチャーされる。

 腕の組み方、入場、指輪の交換等々。

 実際にやってみるが、ほぼ一回のみ。

 大丈夫かなとも思ったが、スタッフの方が、


「大丈夫ですよ。そのままでうまくいきますから」


「・・・はあ、はい」


 では、お言葉に甘えてそうしよう。


 

 エントランスに戻り教会の個室に入る。

ほどなくして式の立会人である神父さんとの面会だ。

 おっ、恰幅のいい外国人さんである。


「本日ハ、オメデトウゴザイマス」


「ありがとうございます」


「デハ・・・」


 神父はそう言うと、ざっくりと、誓いの言葉の復唱、指輪の交換と実に手短に話された。

 あまりの速さと外国人神父さんという緊張と気後れもあり、旦那ちゃんは、


「はい、あっ、はい」


 と、生返事を繰り返した。


「ソレデハ、コノショウショニ、サインヲオネガイシマス」


 それは、結婚誓約書だった。

 まぁ、結婚式というセレモニーに花を添えるイベントの一つの証書なので法的効力はない。

 実はまだ婚姻届を出してない私達は、福岡に帰ってから出そうと決めている。

 が、旦那ちゃんはその証書を見た時、今更そうか結婚なんだと実感しつつサインした。

 嫁ちゃんは、静かにサインをし、微笑んだ。

 おー、クールびゅうてぃ。


「デハ」


 旦那ちゃんと嫁ちゃんは、神父さんと固い握手をした。

 もう式の時間は目前に迫っていた。


「・・・もう・・・なの・・・か」


 ・・・リゾート地の結婚式って、システム化されてよく出来ているなあ。

 有無を言わさぬ見事なプログラム構成に、旦那ちゃんと嫁ちゃんは納得、感心した。


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― 新着の感想 ―
[一言] な、なんかこっちまでどきどきしてきました…(笑)
2020/11/09 09:26 退会済み
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