当日の朝
はいさいっと。
目覚めは良くなかった。
でも、さほど疲れは残っていない。
本番を待つ身としては、頭痛や腹痛がない分、良いコンデションといえるだろう。
誰もがとは言わなが、式の前日に爆睡できる人はあまりいないと思う。
昨日は、沖縄までの長旅、式の打ち合わせ、親族との顔合わせなど、濃厚な一日をすごした。
ほどよい緊張と疲れもあって、昂っていた気持ちも少し落ち着き、無事に日程もこなしたことで安心し、寝ることが出来た。
だから、これで良しとしよう。
うん、する。
隣を見ると、嫁ちゃんがいる。
それはとても嬉しいことだし、ここから私達の新しい生活がはじまるのだなと思うと感慨深い。
が、中年になるまで独身貴族をやってきた旦那ちゃんとって、今までの生活にも愛着や名残りがあるのも事実で一抹の寂しさを感じていた。
ううん、こんな旦那ちゃんを選んでくれた嫁ちゃんに感謝である。
さて、時間はまだ明け方、気持ちよさそうに寝息をたてている嫁ちゃんをそっとして、スマホいじりをしながら、旦那ちゃんは時間をつぶし、気を紛らわせる。
「うーん」
嫁ちゃんは寝返りをうつ。
「・・・・・・」
旦那ちゃんは、ちらりと横目で見た後、再びスマホに目を移す。
背中に嫁ちゃんの視線を感じる。
「おはよう」
旦那ちゃんは言った。
「おはよう」
嫁ちゃんが返す。
これから何度も繰り返されるであろう「おはよう」の挨拶の新鮮さに、私は喜びを感じた。
旦那ちゃんは立ち上がり、窓のカーテンを開けた。
オーシャンビューの窓から見える空はどんよりとしていた。
まぁ、昨日の大雨の事を思うと、降ってないだけマシ、良しとするしかないだろう。
うん、良し、良し。