食事会②
嫁ちゃんは実に大人の女性らしく気持ちを込めて、お義父さんやみなさんに感謝の気持ちを伝えた。
とうとう旦那ちゃんの番となる。
「えー、皆さん。本日はありがとうございます。親父と同じくカンペで・・・」
と言うと、笑いが起こる。
つかみは、オッケイだ。
スーツのポッケをまさぐり、カンペを取り出し読みあげる。
「本日は重ねて、私たちの為に皆様、沖縄まで遠路はるばるお越しいただいてありがとうございます。私たちは見ての通り熟年の新郎新婦です。同い年生まれで、私が一学年上になります。出会った日は私が大台に乗った40歳の誕生日のことでした。その時、おやっ、これはと思いました・・・が、付き合いはじめからいろいろありました・・・けど、この日を迎えることが出来ました。嫁ちゃん、ありがとう。自分はひょっとして、結婚しない・・・出来ないんじゃないかと思っていたので、こんな幸せなことはありません。本当に感謝ですね。私たちの両親、洋美さんのお義父さんは、はじめて挨拶にお伺いした時、よく話しかけていただき、私の緊張を解いてくれました。本当にホッとしたのと嬉しかったのを覚えています。お義父さん、これからもよろしくお願いします。お義母さんは、お会いすることは出来ませんでしたが、嫁ちゃんやお義父さんの話を聞くと、とても素敵な方で、実は私たちが出会うきっかけを作ってくれたのはお義母さんでした。ありがとうございます。そして、親父、ありがとうございます。本当に父らしく、変わらず明るい楽しい親父です。自分が苦しい時、悩んでいた時、明るく前向きな言葉をくれました。結婚に関しても私を強く前に向かせてくれましたね。本当に感謝です。母、長い間、お世話おかけっぱしでした。何もしない私にハッパをかけたり、そっと手伝ってくれたり、口ではいろいろ文句を言いましたけど、頭があがりません。もう、ありがとう以外の言葉はありません。二人ともこれからもよろしくです。長くなってしまいました。熟年といえども、まだまだ至らない二人です。でも二人ならと信じています。みなさんどうぞ、これからもよろしくお願いします。本日は本当にありがとうございました」(カンペ全文掲載)
旦那ちゃんは途中から泣いてしまい嗚咽混じりに話していた。
やっぱり親に思いを伝えるとしたら感謝しかない。
とにかくありがとう。
もう、それしかないもん。
嫁ちゃんも、もらい泣きをして、第三の作戦は大成功だ。
食事会は終わり、私たちは起立しみなさんに思いを込めて一礼をする。
それから一旦退場、レストランを出る。
もう二人は笑顔だ。
レストランの出口で、来てくれた方々に感謝の気持ちを込めて、二人で嫁ちゃん手作りのドラジェのポルボロン(焼き菓子。旦那ちゃんメッセージ付き)を手渡し、感謝の言葉と握手を交わす。
みなさん、ありがとう。
レストランの外では一般のお客さんもいて、恥ずかしくもあったが、この日くらいはいいんじゃないかと思った。
見世物上等(笑)。
みんなにお礼を言うと、旦那ちゃんと嫁ちゃんは、スーツとウェディングドレスの姿のままエレベータに乗り、手を振る。
部屋に戻ると、満たされた幸福感でいっぱいだった。
ありがとう嫁ちゃん。
ありがとうみなさん。
よくやった旦那ちゃん(てへっ)。
ひたすら感謝しつつ。




