結婚式①
旦那ちゃんは、前を向き皆の視線を浴びながら進む。
なかなかない経験だ・・・楽しめ旦那ちゃん、そう自分に言い聞かせる。
しかしながら、超速足だったらしい、やっぱり余裕がなかったのかしら。
壇上で待つ神父さんの元へ行き振り返って、花嫁の登場を待つ。
「ふーっ」
旦那ちゃんはひとつ息を吐く。
すると、ふわりと貧血気味になった。
だが、しかし、この結婚式やり遂げなければ。
心に固く誓い、旦那ちゃんは集中する。
花嫁ちゃんの登場を待つのだ。
ほどなくして、歓声があがる。
旦那ちゃんが甥っ子、姪っ子を先導にして、お義父さんのエスコートを受けた花嫁ちゃんが、清々粛々と歩く。
静かにうつむき加減に、ベールの下に見せる嫁ちゃんの表情は、どんなんだろうか。
「すーっ」
旦那ちゃんは、ひとつ深呼吸。
(お義父さんから、私にバトンタッチ、身が引き締まる思いだ)
ふと、そう思った。
ゆっくりと旦那ちゃんに近づくみんな。
ほどなくして、先導して歩く3人に異変が・・・。
健、港が歩き続ける中、心が急に立ち止まったのである。
気付いて振り返る二人、次の瞬間、彼女は号泣する。
それは突然の出来事に見えるが、人前に出た緊張感、前日の発熱、参列席に父、母(妹)が見えたこと。
二人の歩くスピードに合わせられなかった等、いろんな要因があったのだろう。
小さな姪っ子は、我慢していた思いをぶつける。
旦那ちゃんは思わず、足を一歩進めた。
あるあるではあるが、微笑ましい状況に教会内はほっこりとしつつも、どうなるんだろうとみんなが見守っている。
そんな中、「こころちゃん」と懸命に声をかける母の戸惑う表情。
すると、前列の父がすっと飛び出し、心を抱き旦那ちゃんの方へやって来た。
さすが、親父!
旦那ちゃんは、心の頭をそっと撫でて、
「ありがとう」
と、花かごを受け取ると、スタッフの方に手渡した。
健、港も大役を果たした。
格好、良かったぞ!




