ルルたちと採取へ
「あら~?ご機嫌ね~クロウ」
母さんに言われるまで気にしてなかったけど、なんか顔がニヤついていたらしい。まぁしょうがない。結構な臨時収入が入ったからね。
理由はもちろん爺ちゃん。いつまでも『ヒールリーフ査定表』の売上金の話が無かったので、冒険者ギルドでの仕事の帰りに寄ってみたら、完全に黒だった。僕が言い出さなければ懐に・・・というか仕入れに使おうとしていたらしい。回りまわってその本を僕が読むことにもなると思うので、僕の損にはならなさそうな気もするけど、やっぱり爺ちゃんがまるっと使うのはおかしい。ということで、久しぶりに爺ちゃんにごまかされることなく、自分の権利を勝ち取ったのだ!
いつもなら、そのまま爺ちゃんの本屋で、繰り返し読み直したい本や、複写や自分用に使う紙を買うところだけど、今回は違う。冒険者についてのあれこれを知って、必要なものが色々あることが分かったので、少しずつ準備をしていこうと思ったからだ。
バドルさんから貰ったナイフを鞘からずらして刀身を少しだけのぞかせる。紅鉄。ほんのりを赤みを帯びたナイフは、僕の手にはずしりと重く、僕にはまだ振り回すような筋力が足りない。バドルさんに勧められたように腰ベルトを作ろうと思ったからだ。既製品であれば安く買えるかもしれないけど、如何せん僕はまだ成長の余地がある。今のままでも、大きくなってからでも使えるような物が作れればと思って、オーダーメイドであれば多少金額も上がってしまっても長く使えるのではないかと考えて、本を買うのはグッと我慢した。
翌日、早速僕の指導に来てくれたボーグさんに紅鉄のナイフと、それを装備するための皮ベルトを買うために、オーダーメイドで注文したいということを相談した。
「別にデカくなった時に買い替えればいいんじゃないのか?お前さん、妙にみみっちいな」
失礼な。倹約家と言って・・・と思ったけど、割と散財してるや・・・。本に紙に、筆記スキルが使えるようになるまではインクも。でもせっかく冒険者として使うことになるナイフが手に入ったのだから、装備するのにもこだわりたいじゃないか!と、力説したところ、「お前さんがそれでいいならいいんじゃないか?」と言ってもらえたので、さっそくバドルさんが教えてくれた革細工屋さんで、僕の腰ベルトを作ってもらうように依頼してきた。僕みたいな子供でも、きちんとこちらの要望を聞いてくれたのは嬉しかった。
ちなみに金額は、爺ちゃんからもぎ取った報酬をとくに使わなくとも、余裕で支払える金額だった。案外装備って安いんだなと思っていたら、ボーグさんから「命に直結しないからだ」と窘められた。なるほど。
注文後はひたすら魔力を上げるための訓練かと思いきや、冒険者ギルドへ直行。副ギルドマスターの部屋に積まれた確認済み書類に、ひたすら転写をしては魔力回復薬を飲む作業を繰り返していった。魔力、少しは増えてたらいいなぁ。
「って感じで大変だったんだよ」
「へー。教えてくれんだからいいじゃん。ウチなんか全部ほったらかし」
「うわぁ、やっぱりそうなんだ。・・・ボーグさんにお願いしてみる?」
「やだよ。クロウのおかげで受付のねーちゃんは良くしてくれるけど、やっぱりまだ大人は信じられない」
ルルが抱えている冒険者に対しての不信感はまだまだ払拭されそうになかった。ミミリーさんを始めとした受付の女性陣には心を開き始めてるみたいだから、上手く緩衝材になってくれたらいいなぁ。
「今日はよろしく頼むよ、ルル。ラッセル。なんだか久しぶりの自由を味わってる気がするよ」
「おう。クロウがいた方が捗るからな。こっちこそよろしくな」
「クロウ、居た方が助かる」
年が近いこともあって、僕も気疲れすることなく外へ出ることが出来るのでありがたい。孤児の子たちは警戒心が強いって聞いてたけど、この2人は、初対面の時が困っているところを助けるという特殊なケースだったので、最初から仲良くしてくれている。
「今日もいつもの森?」
「いや、最近は少しだけ奥に言ってる。・・・そんな不安か?」
「ちょっとね。でもラッセルも反対してないんでしょ?」
僕からの問いに、ラッセルはコクリと頷く。
「じゃぁそこで。狙いはヒールリーフかい?」
「そうだな。他にも色々見たことないのが生えてるから、クロウはその辺頼むよ」
「見たことないやつか・・・薬草か毒草か怖いもんね。了解したよ」
深部と呼ばれる領域は、見習いには危険ということで行かないようにと言われているが、そこまでは行かないようなので、僕はその意見を了承した。それがどんな結果になるか、僕は思いもしなかった。




