使えない計測器
『転写』を使っては倒れての繰り返しをしていたら、いつの間にか日が沈みかけていた。そこまでやっても、指輪以外の成果は出ていない。魔力の総量は上がっているのかもしれないけど、どれだけ上がっているかが分からずヤキモキする。今どれくらいなのか測れればいいのに・・・。
「測れるぞ。お前さんには使えんがな」
「測れるんですか!?でもなんで僕には使えないんですか?」
「年齢の問題だ。成人までは使わせない決まりなんだよ。教会、冒険者ギルド、錬金協会。優秀な人材を抱えるような組織には大体置いてるな。もちろん王城にもある」
そんな便利なものがあるなんて・・・どうしてもっと早く教えてくれないのかといったら、「使えんのだから無いのと同じだ」と言われれば何も言えなくなった。あるのに使えないとはなんと歯がゆいことか。
なぜそんなことになってしまったのか。聞いてみると貴族がらみの話だった。聞くのが怖いなと思いながらも聞いてみると、案の定というか、やっぱり貴族がらみだった。
とある貴族のご子息が、周囲の誰よりも魔力量をもって生まれたことがあったらしい。そのまま成長していけば、出世することは間違いないと言われていたのだが、それが良くなかった。その魔力量を妬んだ他の派閥の貴族によって、殺害されてしまうという痛ましい事件が起きた。それから貴族の間では、子供のうちに魔力量を計ることを禁止するようになり、貴族がしないなら庶民もしないべきだろうという無茶が通ったという歴史があったらしい。くそぅ。
「まぁそんな拗ねんな。成果はちゃんと出てんだから今日はこのくらいにしておけ。薬で魔力は回復できても疲れまで取れるわけじゃないからな」
それから何度も魔力が枯渇する感覚を味わい、魔力がなくなることに身体が慣れてしまったのか、気絶しないようになった。そのタイミングでボーグさんからようやくストップがかかった。倒れないようになっただけで、体の強烈な倦怠感はそのままなので、僕は魔力回復薬を口の中に含み、少しずつ胃に流し込んでいく。お腹の中はずいぶん前からちゃぷちゃぷで、正直飲むのも辛くなっているのでゆっくり時間をかけないと飲み込むことが辛くなっていた。
「・・・うぇっぷ」
「俺も止めなかったとはいえ、完全に飲みすぎだな。正直先に根を上げると思ってたぞ」
「・・・僕にも意地はありますので・・・さすがに限界ですけど」
正直いってこのまま寝てしまいたい。いや、もう一度魔力を枯渇させて気絶してしまいたいまであるかもしれない。枯渇させるのはさすがに目覚めたときがつらすぎるのでやらないけど。それくらい意識を保ってるのがもう辛い。
「しかしお前さん大丈夫か?」
「何がですか?」
「そろそろ夕食だろう。そんな状態で食えるのか?」
「あっ!」
これは母さんから怒られるな・・・いや、父さんからも怒られそうだ。冒険者のまねごとを始めたときには「無理をするのはいい。だが母さんを悲しませることはしないように」と言われていた。悲しませるベクトルは違うけど、これはこれでダメだと思う。
「師匠・・・一緒に母さんにあやまってくれませんか?」
「・・・範囲外だ。自分で何とかしろ」
「ですよね」
案の定、魔力回復薬の飲みすぎでお腹がたぷたぷになった僕の胃袋に、母さんの作った夕食が入るわけもなく、甘んじてお叱りを受ける僕なのだった。
「にーちゃ、おやつたべすぎだめっ!」
妹からもお叱りをうけてしまった。うん反省するよ。




