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師匠とのスキル検証

「今日は見るだけのつもりだったが、お前さんもその気のようだ。検証しちまうか」

 そういってボーグさんは腰のポーチから色々なもの取り出して机の上に並べ始めた。すごく高そうな宝石。古ぼけた腕輪。なんだか呪われそうなまがまがしい十字架。小さなポーチの何処にそんなに入っていたのかというくらいの魔導具と思われる物がずらりと並んだ。


「お前さんのスキルは文字や絵を写し撮るからな。これらは文字、または描かれたものに魔力の込められた物たちだ。」

「宝石までありますが・・・」

「これには刻印が掘られている。まぁ書かれたものじゃぁないが、物は試しで出したものも多いぞ。まぁ気張らず試していけばいい。ケツは持ってやる」


金属製や宝石関連の物の大半は、刻印部分に魔力が集中しており、紙製の物は文字自体に魔力が籠っている。一体どれだけの魔力を使うことになるのか・・・。


 ダメ押しとばかりに、机の上に青色の液体の入った大瓶をごとりと置かれた。これはまさか・・・


「魔力回復薬・・・」

「お、よく知ってるな。魔力の枯渇すると体への影響がデカいからな。心置きなくぶっ倒れとけ」

「・・・雑すぎませんか?もう少しなんとかなりませんか?」

「ならん!」

 えぇぇ・・・あれすごいしんどいからやりたくないんですけど・・・とは言えないくらいに、ボーグさんの目は僕に「やれ」と言っていた。こうして検証が始まったんだけど・・・。




「驚くほどに成果がないな」

「・・・すいません」

 ボーグさんの持ち込んだ物のほとんどは、『転写』することが出来なかった。正確には『転写』することはできそうなのだけど、そのために必要な魔力が僕にまったく足りていなかった。・・・何回倒れたのか数えるのすら億劫だ。そして今は動きたくもない。


「お腹の中がタプンタプンですよぉ・・・うっぷ」

 倒れるたびに飲まされた魔力回復薬のおかげで、今動くと何かがこみあげてきそうでやばいのだ。まさか全部終わるまで休ませてくれないだなんて・・・。体力的にも精神力的にも僕はもういっぱいいっぱいだ。


「結局転写できたのはギルドの方でやった魔符と、この魔地図だけか・・・。こんだけやっといて、一番有用性が高いのが最初の魔符ってのが笑えるな」

 ハッハッハと笑うボーグさんだが、それに付き合う体力すら残っていない僕は苦笑いするしかなかった。『転写』する先は紙なので、宝石などの刻印部分だけの転写を試みたんだけど、一気に魔力をもっていかれて直ぐに気を失った。他の刻印関係は全てそう。そのたびに僕は青色の液体を胃に注ぐことになる、お昼前だというのに水分だけでお腹がいっぱいだ。


ちなみに成功した魔地図とは、『魔力の宿った地図のようなもの』で、実際には地図ではなく、指定した場所への方角を指し示す魔導具だ。階層の入口を指定して、撤退時のロスを防ぐために使われるらしい。なるほど地味に便利だ。魔符のようなダンジョン産ではなく、錬金術師クラリネス=パラケスの作品の1つらしい。


「まぁ分かったこともある。『紙』と『インク』で作られた魔導具しか、現状では『転写』出来ないのは間違いないな」

「ですね。魔力が増えれば他の物も出来るようになるんでしょうか」

「そればっかりは分からん。どれくらい足りんのかも分からんからな。出来ると信じて鍛えるか、出来ないと諦めるかのどちらかしかない」


 どちらを選ぶかと言われれば1つしかない。

 

「だったら僕は鍛えたいです。魔力はどうすれば鍛えられるものなんでしょうか?」

 僕の答えはボーグさんを満足させるものだったらしい。機嫌が良さそうにニヤリと笑った。


「そりゃぁ決まってるだろ。ぶっ倒れるまでやるんだよ。」

 そういって一番小さな指輪型の魔導具を僕に差し出した。えぇ・・・マジですか。


「ちなみにそれ以外に方法って」

「そんなものはない!・・・いやあるにはあるが、お前さん大金貨を100枚ぐらい用意できるか?」

「ひゃっ!?で、できません!」

「だったらやるしかねぇんだよ。魔法スキルが発現した奴の宿命だ、諦めろ。いや諦めねぇんだったな。死なない程度に頑張んな」

 まぁ俺も通った道だしなとボーグさんは言う。安心させようとしていったはずのそれは、すぐあとに漏れてきた「あれは地獄だった」という呟きを僕の耳は拾ってしまったので、まったく安心できなかった。


 今日はここまでだと思ったんだけど、ボーグさんにその気はなかったらしく、「どうしたやらんのか?」と言ってきた。いや、もう散々倒れてるんですけど。冒険者には子供をいたわる気持ちはないのでしょうか?ないんですね。


「ダンジョンに潜るつもりの奴がそれくらいの覚悟くらい・・・なぁ」

 うわぁ・・・悪い顔になってるなぁ・・・。そこまで煽られて引いているようなら、本当にダンジョンに潜るべきではないと言いたいのだろう。これくらいの準備は必要と思っておいた方がいい。


「で、できますよ!これくらい!」

 僕がそういうと、ボーグさんは更にニヤァっと笑いを深めた。


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