理由を説明しました
「『魔弾のボーグ』。それが一番貴方に師事したいと思う最大の理由です」
「はぁ・・・有名ってだけか?期待外れ・・・」
「全然違います。名前はおまけです。その名前の由来こそが僕の理由です」
勘違いされたのですぐさま否定する。と言っても言葉では分からないと思ったので、僕は持ち歩いている紙を取り出す。
「これが理由です・・・『転写』」
ヒールリーフ査定表は増やすなと釘を刺されているので、とりあえず手近にあったティーカップを対象に指定した。ズズッと僕の中から大量に魔力が抜け出る感覚がして、紙には僕が今見ているままのティーカップの姿が写し撮られた。
「「「ええぇぇぇぇっ!!!」」」
ミミリーさん以外の3人娘が急に大声上げるもんでびっくりした。え、なんなの・・・。あ、そっか。スキルのことってミミリーさんにしか話してなかった気がする。
「・・・は?おいおいなんだよそりゃ・・・」
ボーグさんでさえ予想外だったみたい。
「これが僕のスキルです。魔法系スキルに属しています。有効に使えるようになるためにはどうすればいいのかを教えてくれるような人に師匠になっていただけるのが理想なんです。『魔』の異名を持つボーグさんならばと思いました」
僕と、僕が転写した紙をまじまじと見つめてボーグさんは「ほー」とか「なるほど」と唸っている。このスキルを使える人を僕以外だと爺ちゃんしか知らない。セントラルにはいるのかもしれないけど、これだけ見られているということはいないのかもしれない。
「ふむ・・・お前さん面白いな。さっきの魔力放出量は、一端の冒険者でも辛い量だったはずだがピンピンしとる。しかもこのスキル、凄いな・・・。魔力によって生み出したものがここまで定着するのは中々ないぞ。錬金か付与・・・いや違うなこれは」
筆記スキルは意外に知られていないスキルなのかもしれない。ベテラン冒険者のボーグさんなら見ただけで分かると思っていたのだけど、結構珍しいのかもしれない。
「これは筆記スキルです」
「は!?あれは文字を書くだけのスキルだろう、こんな絵を描きうつすような・・・いやまて、そういうことか?筆記スキルで書けるのは文字だけではないということか!」
「最初は使った瞬間に倒れました。普通の使い方をしていないからだとは思いますが、僕はスキルについてあまりにも知らないことが多すぎる。なので『魔』の異名持ちのボーグさんに意見を伺いたかったんです」
これが最大の理由。今のところ筆記スキルに関して、外での探索や戦闘に役立つような使い方を見いだせていない。ヒールリーフ査定表なんてものはつくりだせたけど、あれはどちらかというと商人寄りの発想だ。冒険の際に役立つかと言われれば、いつでもどこでもメモができるだけだ。それを何とかしたかったんだ。
「なるほどな・・・お前さんの悩みはわかった。しかしこれは・・・うーむ」
ボーグさんがなんか悩み始めた。どうしたんだろうか?
ひとしきり悩むと、ボーグさんは再び口を開いた。
「坊主。お前、『付与スキル』も使えるような気がするぞ」
「えっ!?」
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」
『付与スキル』。実際に見たことはないけど、読んだ本に少しだけ書いてあった。物に何かしらの効果を付け加えるスキルだ。どこまでのことができるかは知らないけど、武器を重くしたり軽くしたりといった効果を与えることができるらしい。
「確実じゃないがな。こんなに魔力がべったり張りついたもん、魔道具以外におれは知らん。だからこそそう思った。あまり知られていないが、物や人体に作用スキルには相性ってのがある。坊主の場合は『紙』だろうな。こいつは無視できん量だ」
「・・・以前、木版に対して転写スキルを使ったことがあるんですが、効果も発揮させることが出来なかったのに倒れたことがあります。相性が悪いものに対しては魔力の消費が多くなるんですね」
「うむ。その通りだ」
なるほど、あれは紙以外にスキルが使えないと思っていたけど、相性の問題だったんだ。やはりベテラン冒険者の知識は凄い。聞けば何でも答えてくれそうな雰囲気すら漂っている。
「ボーグさん・・・それ、一定ランク以上の冒険者にしか教えないようにしろって言っていませんでしたっけ?」
「お、そうだったか?・・・そうだったな。すまんすまん。どうやら俺も坊主のことが思いのほか気に入っちまったようだ。つい口が滑っちまったぜ」
「ふぅ・・・まったく貴方は。まぁ私も人のことは言えませんね。頭の良いクロウ君がどこまで育っていくのかが楽しみで、色々と教えてしまいましたから」
「なんだよ、ミミリーも同罪じゃないかよ」
「いえ、ちゃんと開示内容は選んでますよ。ボーグさんと一緒にしないでください」
「・・・はい、スイマセン」
なんと、これ僕が今知るのはダメな奴だった!
それから、ボーグさんは、僕がなぜ付与スキルを使えるのではないかという結論に至ったのかを語ってくれた。
「坊主のそれ、『転写』と言ったか。それしか見取らんから何ともいえんが、それで写し撮られたこの絵。僅かだが魔力を感じる」
「そうですね。『転写』に魔力をたくさん使うのはその所為だと思います。普通のペンを使って文字を書いた文字にはほとんど魔力を感じませんから」
「・・・坊主、お前『魔力視』もあるのか?・・・いやそれは今はいいか。でだ、物に魔力をまとわせるってのは「付与スキル」の特徴なんだよ」
ボーグさんが言うには、魔力の結果だけをみると、僕が『転写』した紙と、『付与スキル』が使われた物とでは、魔力の質がよく似ているということらしい。だから僕にはそれが出来ると。
「・・・こういうのは『付与スキル』と同じ扱いになったりしますか?」
僕はそう言いながら、紙を取り出して、インクをつけずにペンを走らせる。渦上にぐるぐるを線を引いていき、その色を赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と、7色に変化させていく。うん、きれいなグラデーションになった気がする。これを使って栞を一度作ったのだが、余りにも派手過ぎて結局引き出しの奥にしまい込んだのはいい思い出。
「爺ちゃんもやってたので、特に意識もしてなかったんですが、黒いインクに色を『付与した』ってことになってたりしますか・・・?」
「あ、あぁ・・・そうだな、それが手順や形に違いはあるが、それが付与だ。お前さん、紙よりもインクの方が更に適正が高いな。正直驚いたぞ」
聞けば、色の付与の際にまったくといっていいほどの淀みを感じなかったそうだ。そういうと、ボーグさんはニヤァっとうちの爺ちゃんみたいな笑みを浮かべ始めた。えぇっ、なんか悪だくみする要素あった!?




