文筆家、兼ギルド職員です
1か月ぶりの投稿です。遅くなりました(´・ω・`)
念願が叶って冒険者になれた・・・と思っていたのに、なったのはギルド職員!そりゃないよとギルドマスターに訴えたところ「ウチって言ったらギルドじゃろうが。冒険者なんていっとらんじゃないか」と聞き入れてもらえず、結局そのままギルド職員見習いとして、ここ冒険者ギルドライラック支店に登録されることになった。とほほ・・・。
とはいえ、辞退もできたのにそれをしなかったのは、悪いことばかりじゃないからなんだよね。
ギルドマスターからは「冒険者とのつながりも作りやすいぞ。師匠も見つかるかもな。」と言われ、ミミリーさんからは「色んな素材採取があるから、見たことないものがたくさん見られるよ。」と言われてしまうと、断る方が損としか思えなかった。
その代わり、仕事は毎日じゃなくて、1週間(7日)のうちの2日だけということで了承してもらった。本の複写っていう仕事があるわけだしね。それにルルたちに付いて町の外をもっと感じたい。
そんなわけで、初日からひと悶着していたら、昨日の報酬を貰いに来たルルからは「何やってんだ?」と早速不思議がられた。何やってんだろうね、ホントに。ラッセルからは無言で肩ポンされた。同情されたのかな?
その日は目に見えて落ち込んでいる僕を気遣ってか、家に帰された。明日またきてくれればいいとのこと。翌朝は心の整理ができたので、おとなしくギルドへ向かった。
「とりあえず今日は軽く顔合わせするだけだから、別にちびっ子たちに着いて行っていいのよ?」
とミミリーさんには言われたけど、仕事として来ているのだからというと「お堅いわねぇ」と呆れられた。曰く、冒険者はもっと自由な物よ、とのこと。なるほど、確かに自由。朝から酒場に入り浸っててもいいし、ルルたちのように朝から夕方までしっかりと依頼をこらしてもいいわけだ。
「クロウくん、ひょっとして酔っ払いに嫌な思い出でもあるの?」
「いえ・・・別に・・・。」
考えたいたことが口から出てたようで、ミミリーさんに心配されてしまった。
冒険者の話を聞きたくて、酒場に一度行ったことがあるのだけど・・・もう行くことは無いかな。息は臭いし、何をしゃべってるのか聞き取れない人も多い。突然担ぎ上げられたときは生きた心地がしなかった。力自慢の冒険者たちの只中に、怖いもの知らずにも突っ込んでいった当時の自分を止めてやりたい。ホント地獄みたいなところだった・・・。頭はくらくらするし、連絡を受けて迎えに来てくれた母さんにも、仕事から返ってきた父さんからもかなり怒られたことをはっきりと覚えている。
・・・僕もお酒を飲んだらああなっちゃうんだろうか。飲めるようになるのはもっと先だけどすごく嫌だな。
「クロウ君?」
「あ、なんでもないです。はい。」
今から心配してもしょうがない。というか飲まなきゃいいんだよ、飲まなきゃ。なおも怪訝な表情を浮かべるミミリーさん。
取り合えず、今いる職員だけでもということで、忙しそうな受付を横目に、素材査定を担当する部署へと向かうのだった。
「バドルさーん、入りますよー。」
ミミリーさんが声をかけてから『素材査定部』と書かれた扉を開いた瞬間、中から獣臭いような青臭いような、不思議な匂いが漂ってきた。うん、有態に言えば臭い。すごく臭い。色々な素材が持ち込まれているんだろうけど、何がそんなに臭うんだろうか・・・。鼻を摘まみながら入ると、見覚えのあるヒールリーフや、見たことのない植物。そして魔物のと思しきと少しとがった緑色の耳がやたらと積み上げられている。もしかしてこれがゴブリンの耳なのかな。これが噂の討伐証明部位ってやつかな。刃物も扱えるようにしとかないと冒険者としてはやっていけないってことだね。うん。母さんの料理の手伝いをするようにしよう。包丁使えるようになれば多分大丈夫だよね。
辺りをきょろきょろしていたら、ソファーにあった巨大な塊が動き出した!「ぐおぉぉ」と唸り声まであげてるけど大丈夫なんだろうか・・・。察するにこちらの大きな筋肉さんがバドルさんということなんだろう。
「ふああぁぁぁぁぁよく寝た・・・。お、ミミリーちゃんいらっしゃい。」
「バドルさん、またこちらにお泊りになったんですか?匂いも籠ってきてるのでそろそろ清掃業者の手配お願いしますね。」
「臭うかの?ははっ、もう鼻がバカになっちまってるからな。今日にでも申請出しておくよ。・・・ん?なんだそのちっこいの。」
ゴブリンの耳を観察していたら、お声がかかった。ようやく紹介してもらえるみたいだ。
「バドルさん、こちらが噂のクロウ君ですよ。」
「なにっ!お主がか!」
座っていた巨体が突然立ち上がるとすごい迫力だ。ポカンの眺めていたら巨体に似合わぬ素早い動きでガシっと羽交い絞めにされた。
「いやぁー、あれは助かったぞ!ちっこいの!ありゃぁいい!」
締め付けられて「ぐごぇ」と、僕の口からカエルのような声が出たところで、慌てたようにミミリーさんが止めにはいる。「スマンスマン」と言う姿がなんとなくギルドマスターと被るんだけど。
「弟さんですよ。」
「なるほど、通りで。」
筋肉兄弟でございましたか。バドルさんは髭がなくてスッキリしてるけど、たしかに顔がそっくりだ。
「あんなガサツなのと一緒にせんでくれ。」
ふいと顔をそむけるしぐさがどうにも子供っぽい。出会い頭に僕にダメージ与えてくるあたりおんなじかと。とはさすがに言えない。後が怖すぎるので。でも、悪い人ではなさそう。ニカッと歯を見せる元気なお爺ちゃんっていいね。うちの爺ちゃんはちょっと笑い方が怪しいもんなぁ・・・いい年して悪戯好きで、それが成功するとニヤッと笑うのだ。母さんはちょっと控えてほしいみたいだった。実は僕は嫌いじゃないけど。
ようやく僕を解放してくれたバドルさんは、ソファーにドカッと座って僕へ改めて向き直った。雰囲気が変わったので、僕も思わず背筋を伸ばした。やっぱり大人の人は切り替えがすごいな。
「改めて礼をいうぞ、ちっこいの。査定部は後進の育成に悩んでおってのぅ。アレはホントに良いものじゃ。ヒールリーフはワシら査定士が最初に扱う素材じゃからな。」
聞けば、見習い冒険者の最初の依頼もヒールリーフの採取だという。見習いが採取したものを見習いが査定する。そしてお互いに切磋琢磨を・・・というのが理想だったそうだけど、どちらも上手くいかなかったようだ。
見習い冒険者の孤児たちは、使える物から使えないものまで、ヒールリーフ一株分まるごと持ってくる。なので、分かりやすくはあるのだが、問題はそれ以外のきちんとより分けて納品される分。僕がヒールリーフの査定表を作ったことで、それを元に孤児たちがまともに使えるヒールリーフだけが納品されるようになった。すると、途端に選別の精度が下がってしまったらしい。毎日見本みたいに並べられた一株分のヒールリーフがなくなって分からなくなってしまったらしい。
「見本なんぞ見んでも仕分けられて一人前なんじゃがな。見習いには酷じゃし、変わってしまった環境にすぐに対応しろというのも無茶な話じゃ。」
変えてしまったのは僕だ。それは悪いことをしたとちょっと落ち込んでしまう。僕はもっと周りを見るべきだったんだ。何かをするときには相談をしっかりしよう。そうしよう。
こっそり落ち込んでいた僕を気遣ってくれたのか、バドルさんは僕の頭をぐりぐりの撫でつけてきた。うん、とってもありがたいんだけど痛いんだ。もうちょっと優しく・・・。
隣で見ていたミミリーさんは苦笑いで頷いてみせた。耐えろということですね。分かります。
そんなわけで、見習いの教育を見直さないといけないという話になったところで、僕が持ち込んだヒールリーフ査定表。ミミリーさんから話を聞いたバドルさんは真っ先に飛びついたらしい。そのころにはもう爺ちゃんにまかせていたので僕には知らなかったけど、その時に様子を思い浮かべたのか、ミミリーさんはちょっと眉を寄せていた。なにかあったのかな?あの筋肉に迫られるだけでもちょっと怖いもんね。
「ミミリーから子供が商売相手だというから、軽い気持ちで商談を持ちかけたってのに、まさかケヴィネンが出張ってくるとは思わんかったぞ・・・。ちくしょう、あの業突く張りめ、足元見やがってよぉ。」
どうやらバドルさんは、うちの爺ちゃんにしてやられたらしい。爺ちゃんが最近機嫌がよさそうだったのはその所為か。まだ爺ちゃんからお金については聞いてないけど、これは結構期待できそう。
「そういうわけだから感謝してんだ!ちっとばかし混乱もしたが、結局のところはいい方向にまとまったからな!見習いの仕事も覚えが良くなったったしバンバンザイってやつだ!」
そういってバドルさんは再び僕の頭をぐりぐりと・・・だから痛いんですって。




