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薬草の便利な見分け方

「だから、この色になったらもうお金にならないんだってば。」

「んなこと言ったって分かんないからしょーがないじゃん!」


そんなこんなで、ルルたちと行動をともにするようになって1か月近く経った。今は爺ちゃんから新しい本を渡されたので、午前は複写に費やしているけど、午後からはルルたちと合流していた。

その間、ルルとラッセルにはヒールリーフを効率よく採取できるように教えているのだけど、ルルは大雑把に物事を考える傾向らしく、いまだに3割程度は買い取り不可の葉も採取してしまう。「アタシは懐が広いからしょーがない」というが、使い方を間違っていると思う。


「ラッセルはいい感じだね。これなんか結構色も濃くなってるけどまだ大丈夫そうだよ。」

「覚えるの、得意。おかげでお腹いっぱい。クロウ、感謝。」


半面、ラッセルの方はかなり几帳面な性格らしく、今ではほとんど全てが買い取り対象になっていて、今までは2人で銅貨5枚しか貰えなかったところ現在では銅貨20枚にまで届きそうな程になっている。そのおかげで、彼らの食生活はかなり改善され、何日もかけてクズ野菜や古い食材を何とか食べて度々お腹を壊していた生活から、痛んだ食材を食べずに済むくらいには良くなった。

冒険者ギルドからの覚えもよくなり、少し気にかけてもらえるようになったんだとか。とくにギルドに隣接している酒場から、使えなくなった食材を安く買えるようになったのが一番嬉しかったらしい。


「へへー!ついにこんなのまで買えるようになったぜ!」

と、意気揚々と見せてくれたのは中古品であろう果物ナイフ。取っ手の部分に不格好な紐が巻きつけてあるが、きちんと研がれたナイフは、十分に使い物になる鉄製の物だった。

結構なお金がかかっただろうが「赤種が食えるようになるからいいんだ。」という。赤種は、種みたいに小さくて表面が硬い皮で覆われている赤い果実で、皮をむくのが大変だけど安くて日持ちもよくて味はほんのり甘い。僕ら庶民にも愛されている果物だ。


「ルル、今日もいつもの森に行くのか?」

「んー・・・ヒールリーフが見つかりにくくなってるんだよなー。いつもより奥に行きたいい。」

「・・・ルル、奥、危険。」

ラッセルは反対する。確かに町から離れるほど、魔物との遭遇率が高くなる。町の周辺は冒険者が毎日巡回依頼を出しているからある程度の安全は確保できている。ラッセルの反応から、ルルの提案する場所はその範囲を超えるらしい。


「でもあそこなら、あれだろ、白い花もあるからさ。」

「白い花?アースフラワーのこと?」

「それだ!それがいっぱい生えてるとこあるんだよ。危ないのは分かってるんだけど、こいつがそろそろ限界でさ。」

そういってルルは足を上げる。確かに靴がボロボロだ。森を走り回るのだから当然必要。だけど安いものでもない。だからこその提案なのだろう。


「ラッセルは反対なんだね?」

「そう。あそこ、魔物会った。危ない。」

「魔物がでるのか・・・さすがにちょっと対策が欲しいね。ギルドに相談に行くのもありだと思う。」

「うっ・・・そうかぁ。クロウも反対なら我慢するか。」


しぶしぶ引き下がったルルだけど、この様子だといつか1人でも突っ走りそうだから、ちゃんと対策がとれれば行くことを伝える。僕が靴を買ってあげてもいいとはおもうんだけど、ルルは頑なにをれを拒む。一度甘えてしまうとクセになりそうだからという。考えなしで行動することの多いルルだけど、しっかりしてるところはしてるのだなぁと感心した。


今日のところはいつも通り、ヒールリーフを採りに行こう。もっと効率よく回れるようになれば、ギルドも薬草不足を解消できるし、孤児たちの生活も安定する。僕は今僕にできることをしよう。


「とりあえず今日はいつものようにヒールリーフだね。今度は完璧に見極めよう。」

「えぇーー。アタシは覚えるの苦手なんだってば。」

そういいながらも付き合いがいいのがルルだ。不満は漏らしても投げ出さないのがルルのいいところだ。そんな彼女だから何とかしてあげたくなる。


「まぁまぁ。今回は秘策があるんだよ。」

そう、今回はルルでも完璧にできるように準備をしてきたんだ。ルルでもというか、誰でも簡単に選別することができる。ちょっと費用はかかるけどね。


最近はいつものように行っている町の最寄りの森へ3人で向かう。しばらく周辺を探索すると、ヒールリーフは見つかった。いい感じに若い芽が出ており、採取の前に一枚の紙を取り出す。


「どうしたんだ?そんなの取り出して?」

「クロウ、何する?」

不思議そうな顔で見てくる2人。まぁ僕のスキルは説明したことないから当たり前か。


「今からルルのために必要な道具を作るんだよ。少しだけ待ってね。」

僕は言いながら紙の上にそれぞれ最良から無価値の順に横並びに置いていく。これで準備は整った。


「よし・・・いくよ。『転写』」

最近になって僕の筆記スキルは進化を遂げた。文字を書く以外にもできることが増えたんだ。それがこの『転写』のスキル。使うとすっごい疲れるけど、その効果は素晴らしいの一言だ。

紙の上に並べられたヒールリーフの下に、寸分たがわぬ色、形で紙の上にヒールリーフの絵が描かれていた。

これが『転写』のスキル。見たものをそのまま紙に写し取ることができるスキルだ。もしかしてと思って、紙と同じサイズの布にもできるか試してはみたけど、僕の持っている魔力では紙以外では転写するためには足りないのか、その時は意識を失って倒れた。とても残念だ。一応手のひらですっぽり包めるような物ならギリギリ転写できることは確認できたので、素材とサイズが重要なんだろう。


紙にいきなり描かれたヒールリーフの絵に、ルルとラッセルは案の定目を丸くして驚いていた。ルルに至っては直ぐに食いつかんばかりの勢いで僕に向かってきたけど。


「何!?何だったのさっきのは!?クロウが何か言ったと思ったら紙に絵が!」

顔が赤くなるくらいに興奮した様子のルルに、出来上がったばかりのヒールリーフの即席査定表を渡す。「これはルルに上げるために作ったんだ。」というと、ルルは更に顔を赤くしながら「ありがと・・・」と小さく呟いて受け取った。こんなに真っ赤になるまで興奮するってことは、やっぱりこのスキルって珍しいんだろうな。


「ルルだけじゃなくて、他の孤児の子たちにも渡そうと思ってるんだけどどうかな?」

「・・・これ、危ない、かも。」

「え?どういうこと?」

ラッセルが言うには、すごく使える者には違いないけど、価値が高すぎて盗みなどの被害に会うことを懸念しているみたいだった。そうか、確かに便利な物には価値が付く。しかもこれは原料である紙とインクは高い。当然、孤児たちが持っていれば、そのチグハグな状態に疑問を持つ冒険者はいるだろう。少し調べれば孤児たちの生活が向上したことも分かりそうなものだ。頭の回る冒険者ならすぐに気づくだろう。これがあれば、誰でも簡単にヒールリーフでその日1日をお腹いっぱいで暮らすことが。

冒険者の中には、討伐任務もそこそこに、ギリギリでその日暮らしをしているものがいる。そういう者たちに狙われる危険性をラッセルは言いたいのだろう。もしかしたらそういう経験があるのかもしれない。


「・・・確かに全員に持たせると目立ちすぎるね・・・・。いっそのことギルドの販路に乗せようか?」

「ハンロ?なにそれ?ギルドに用事?」

「販路。ギルドに頼んで、これを売ってもらってもいいんじゃないかって思ってね。」

そういうと、ルルは悲しそうな顔になった。えっ!なんで!


「これ・・・売っちゃうの・・・?」

「えっ?違うよ、それはルルにあげたやつだからルルが持っててよ。同じような物を作るから大丈夫だよ。」

そういうとルルはホッとしたようで、それを大事そうに胸に抱えこんだ。そんなに喜ばれると僕としても嬉しい限りだ。


「ルルとラッセルを実績にしてギルドに売り込まないとね。ルル、これ見ながら採取してみてよ。この結果でギルドが判断してくれるからね。」

頑張ってと声をかけるとルルは力強く頷く。・・・多分あんまり分かってないけどとりあえず頷いておいたって感じがする。うん、ルルはそれでいいと思うよ。うん。


僕は口を出さずに、ルルは1人できっちりとヒールリーフを採取をし終えた。うん、完璧だね。やっぱり見本があれば間違えようが無いね。さぁ次に行こうとヒールリーフを探し始めたのだけど・・・なかなか見つからない。本当に少なくなってるんだな。ルルが奥まで行きたがるのも当然だ。探し物が見つからないっていうのは結構なストレスだ。そのあたりも含めてギルドに相談しないとね。


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