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9.私は灯夜くんの事が……だけど…

遅れてすみません。


「はぁ、走って逃げてきちゃった…」


私はこんな泣き顔を灯夜くんに見せたくないので普段あまり人のいない私の思い出の場所でもある公園のブランコに座っています。


「まさか、灯夜くんに彼女さんができたなんて…」


今までずっと一緒にいた灯夜くんに彼女ができるとは思っていませんでしたけど…でも、確かによく考えればあんなに優しくて気配りのできる男子を好きにならない女子がいないはずなかったんですよね。しかも相手はあの眞尋さん…私に勝ち目なんてないんですよね…


でも、私のほうがずっと灯夜くんのことを好きだったと思います!だって、幼稚園のあの時から私はずっと灯夜くんの事が…


「ずっと…好きだったのにぃ!」


思わず声に出してしまいました。でも、あたりには誰もいなかったようなので良かったです…


そして、十年近くひた隠しにしてきたこの思いは結局伝えられずに終わるのでしょう。今後灯夜くんは眞尋さんと一緒に登校するということは…もう、灯夜くんと関わる事はないということでしょう。クラスメイトだから話せるといえば話せるけど…好きだった相手に話しかけるなんて無理だよ…


だからと言って私と眞尋さんと灯夜くんの三人で登校することになったとして隣で仲睦まじくイチャつかれちゃったら絶対に嫉妬しちゃうよ。ねぇ、何で灯夜くんは私の気持ちに気づいてくれなかったの?


「私にもう少し…勇気があればなぁ…」


お門違いなのは分かっています…分かっていますけど!悔しいじゃないですか!私だって彼女になりたかったですよ!なりたかったですけど…今の幼馴染という関係に甘んじている私もいました。


「はぁ、懐かしいなぁ」


私は自分が灯夜くんの事が好きになった日を思い出します。その時も場所はここの公園でちょうど座っていた場所もこのブランコの私の今座っている位置でした。


***


「ねぇ、とうやくん…どこいっちゃったの?」


私は公園で迷子になっていました。いつもなら迷子になることはなかったのですがその日はお祭りということもあってたくさんの人で賑わっていたため灯夜くんとはぐれてしまっていました。


その時私は大勢の人が通る道のど真ん中にただ突っ立っていました。あたりを見渡すと木の裏に怪しい人影が見えました。助けてもらえるのかもしれないと近づいたのですがその人影は顔しかなかったのです。


「…うぇぇぇぇぇぇぇっん!」


そのあと小学生になった時に気づいたのですがその当時の顔しかない人影はただのお面だったのです。今となれば平気ですが当然、当時の私はまだ幼稚だったので泣いてしまいました。


そこから泣きながらひたすら歩きました。そしてたどり着いたのがこのブランコだったのです。

その時の私は小さい下駄を履いていたので足が痛くなりブランコに座ることにしました。


「とうや…くん…グスン…」


今は人もあまりいない公園ですが、この公園はとても広く人を探すにはかなりの時間が必要なくらいです。そんな公園で迷子になってしまったのだから誰も助けに来てくれる人なんていない。と思っていたその時です!下を向いて泣きじゃくる私の頭を小さな手で誰かが撫でてきたのです。


「え?」


私は突然撫でられたので驚きながら上を向くとそこには…


「ことね、やっとみつけたよ…」


額に少しの汗をかいている灯夜くんがいました。私は灯夜くんに会えた安心感と嬉しさのあまり抱き着いてしまいました。


「とうや…くん…グスン」


「ごめん、ぼくがいなくて…こまったよね…」


迷子になったのは私なのに灯夜くんは謝ってくるんですよ!?何でそこまで優しい性格なんですか灯夜くん!そんなんだから眞尋に告白されちゃうんだよぉ!


「ううん!とうやくんにあえてよかった!」


「そんなにこわかったの?ほんとうにごめんね…つぎもしなにかがあってもぼくがぜったいことねをまもるから!」


「うん!やくそくだよ!」


灯夜くんに会えたことで自然に涙も出なくなりました。そして灯夜くんは私の右手をすっと握ってきました。その時がきっと私の恋した瞬間でしょう。もしかしたらその前の頭を撫でられた段階で好きになっていたのかもしれませんが私はこの時、灯夜くんが王子様に見えたことを今でも覚えています。


「え…とうやくん…?」


「ほら、て…つながないと…またはなれちゃうでしょ?」


「う…うん!そうだね!」


と言って私は手を握る力をうれしさのあまり少しだけ強めてしまいました…



***


そこから約十年間ずっと好きだったんだけどな…もう、忘れよう!今の私の表情は笑えているでしょうか…もしかしたら笑えていないのかもしれません。そうです!これもいい機会ですし見抜かれないための演技の練習をしましょう!もう、この気持ちを私は二度と表に出さないように…そして私のこの気持ちにけじめをつけるために…


【眞尋さんの…いえ…灯夜くんの邪魔はしたくありませんから!】


「もう!私って体力ないんですね…だってこんなにも汗が…」


私はわかっています。これが汗などではなく涙であることを。だけど嘘をつきます。意外と演技って難しいんですね…だってこんなにも涙がでちゃうんですから。


【今日だけは…自分に嘘をつくのはやめよう!でも、それは今日だけ!明日からはクラスで会ったら元気におはよう!って言うんだ!もし、灯夜くんが眞尋さんとデートとかしてたらその時はおめでとう!って言ってあげるから!だから…だから…今日だけは…】


「はぁ、灯夜くんの彼女になりたかったなぁ…」


そう言って私は泣きます。いつも泣くときはここなんでしょうかね。理由は違えどあの時と同じ場所で私は泣いていますし…


「う……うぅ…ぐずっ……うえぇぇぇぇぇぇぇん………っ!」


私はあの時と全く同じ…下を向きながら泣きます。今日だけだから…明日からはまた笑顔で学校生活を送るの。そうだ!今度冷やかしてみよう!灯夜くんはどんな反応するのかな?…笑うかな…それとも怒るのかな?でも、それくらいしてやらないと気がすまないよ!十年だよ!?十年!十年も片思いしていた相手が奪われたんだよ?だからこれくらいはしてやらないといけませんね!


「私は嫉妬深い女じゃないんです!もう、忘れましょう!」


ついここであの時みたいに灯夜くんが来てくれることを願ってしまいます。でもきっと今頃灯夜くんは眞尋さんとイチャイチャしているのでしょう。そういえば、もう夕方になっていましたね。何時間もここにいてしまいました。私ったら諦めようとしているくせに未練たらたらじゃないですか!そろそろお家に帰ろうかな?初めて無断欠席しちゃったし後で心配してくれた人には謝らないと…。


そう思って涙を拭っていたその時です。

私にとって聞きなじみのある声が聞こえました。


「はぁ…はぁ…やっと見つけた…ずっと探したんだぞ?」


どうやら私は幻影まで見てしまうほどショックだったようです。灯夜くんが私をずっと探していた?そんなわけないじゃないですか!だって灯夜くんは今頃眞尋さんと…


「琴音、一人にさせちゃってごめんな…」


そう言って頭を撫でてきました。その時になってやっと私は目の前にいるのが幻影でもない灯夜くんだということに気づきました。


灯夜くんがずっと私を探していてくれたこと…そして…また、あの時みたいに頭を撫でてきてくれたことが嬉しくて…だけど…ここで喜んでしまうのは眞尋さんの…灯夜くんの恋の邪魔をしてしまうということ…だってここでまたあの時みたいに灯夜くんが来てくれたことを喜んじゃうとせっかく忘れようとしていたのにまた、恋を自覚しちゃうじゃないですか…


【こんな時、私はどうすればいいですか?】

面白いと思ったり次が気になったりした方は是非ブクマとポイント評価よろしくお願いします!


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