6.灯夜くん!私と冬雪ちゃんどちらと一緒に寝るのか決めてください!
※4話を再度読んでからこちらを読んでいただいた方が分かりやすいと思います。
「何言ってるんですか!?私が先におにぃちゃんのベッドにスタンバイしてました!」
「でも私の方が先に灯夜くんのお部屋で枕の匂いを嗅いでました!」
俺は一体何を目の前で聞かされているのだろう…ベッドにスタンバイ?枕の匂いを嗅いでいました?お前らはどうしようもない変態か何かなのか?
「眞尋さん、ここは平等にするためにおにぃちゃんに決めて貰いましょう!」
「そうね!それが一番ね!」
鈴谷は俺の枕を抱きかかえて、冬雪はベッドから起きだして俺に近づいてきた。
「おにぃちゃん!私と眞尋さんとどちらと一緒に寝るのか決めてください!」
「灯夜くん!私と冬雪ちゃんどちらと一緒に寝るのか決めて!」
俺は夜遅い時間という事も考えて心の中で叫ぶことにした。
『とっとと早く寝かせてくれよぉ!』
***
話についていけない人の為に説明しよう!これから先は俺が部屋に入った時に冬雪と鈴谷がしていた会話だ。
「おにぃちゃんは私の事が好きって言ってました!ほら!この通り録音もしています!」
「あぁ、俺も好きだよ、冬雪」←録音
「え…嘘でしょ!?でも、声は灯夜くんだし、灯夜くんは…私を見捨てたの?何で…」
誰か…兄代行サービスをしている人はいませんか?と頼みたくなるくらいに意味が分かんねぇよ!何で冬雪はそこだけ録音してるんだよ!そして何で鈴谷は見捨てられたって結論に至るんだよ!
「いや、見捨ててないから」
どうやら話すのに必死で俺の事が見えていなかったらしい。俺が否定すると鈴谷と冬雪は驚いた様子で俺の顔を見てきた。
「お…おにぃちゃん!あの魔女は私がやっつけるからそこで見ててね!」
「え……灯夜くんそれは本当なの!?今後も絶対に見捨てない!?」
俺はこれ以上話がこじれるのは嫌だったので冬雪は一旦無視して涙目状態の鈴谷に近づく。
「あぁ、約束するよ」
「………うん!!」
泣きかけていた鈴谷に近づき頭を撫でて言うと鈴谷は安心したのか笑顔になった。さて、次は冬雪か…
「冬雪、今後姉になる人に魔女呼ばわりはないだろ?ちょっとは反省してくれ」
女子を相手には怒り慣れていないので反省したのか疑問と言いたいところだけどこの冬雪の顔は反省してくれてるんだな!よし、これで一件落着かな?と思っていた俺が馬鹿だった…
「灯夜くん私の事を絶対に見捨てないんだよね!?」
『言質取ったからね!』とでも言うつもりなのだろうか、どにしろここで否定すると話が戻りかねないので肯定しかできないけど…
「あぁ、そうだけど…」
「それなら、私は灯夜くんに見捨てられない為にも近くにいないとダメだよね?」
「え…?」
すると、鈴谷は俺に近づいて耳元で話し始めた。
「ねぇ灯夜くん!今日は私と一緒に二人きりで寝ない!?」
『さっきまでの俺の優しさを返せよ!』と言いたくなってしまった。おいおい、お前どんだけ俺と一緒に寝たいんだ!?親のいない時に仲良しなことしたって意味ないんだぞ?
「何言ってるの眞尋さん!一緒に寝るのは私とおにぃちゃんだから!」
「いや、俺一人で寝るからぁ!」
とここまでが先程までの不毛すぎる会話なわけだがところで……俺に一人で寝るという選択肢はないのか?
「それじゃあ、俺は一人で一人で寝るからお前らはそれぞれの布団で寝るように!」
この俺の言葉を待っていたかのように不敵な笑みを浮かべて俺の顔を見てくる冬雪。
「ふふふっ!おにぃちゃんはとんだ忘れん坊さんなんですね、おにぃちゃん!残念ですが私には布団がありません!」
『そうだった!』と俺は今日の昼に起きた出来事を思い出す。あの時に『私のお布団の事なんだけどね…私のは用意しなくていいよ…』って…くそ!これが狙いだったのか!
「え…布団がないってどういう意味!?」
状況を理解できていない鈴谷は俺に尋ねてきた。
「冬雪は今日の昼頃に俺の部屋に入ってきて『私の布団は用意しなくていいよ』的な事を言ってたんだよ、まさかこれを狙っていたとは…」
策士過ぎるだろ我が妹!これはもう俺の布団で一緒に寝るしかないのか!?と思っていたら名案が思い付いた。
「そうだ!鈴谷と一緒に寝ればいいじゃん、親睦を深めるってことで…」
「おにぃちゃん、まだ忘れている事がありますよ」
そう言って冬雪は寝間着の右ポケットからスマートフォンを取り出して何やら探し始めた。そして冬雪は先ほど一瞬見えた録音アプリを俺に見せてきた。
「おにぃちゃんも一緒に寝る!分かった!?」
「分かったから」
「これって…もしかして…」
「ふふ!おにぃちゃん、私と一緒に寝てくれますよね!?」
やられた…俺の妹はこんなに強かったのか…てか冬雪、お前はどんだけ録音してんだ?これ以外に俺変なこと言ってないよな!?
「ていうかさ、本当に俺と一緒に寝たいのか?」
俺はこの不毛なやり取りが続いている間ずっと考えていた。本当に俺と一緒に寝たいのか?という事だ。だって運動神経も性格も顔面偏差値だってひどい俺だぞ!?そんな俺と一緒に寝たいなんて言う人この世にいるのか?
「寝たいに決まってるよ!」
「う………うん…私も一緒に…」
冬雪は嘘はついていないそんな目で鈴谷は恥ずかしがっているのかそっぽを向いて俺をみてきた。どうやら俺は観念するしかないらしい。
「あぁ、分かったよ、早く寝るぞ冬雪…」
睡魔が俺の事を本格的に襲い始めたし負けを認めて寝るのが俺にとっての得策だと判断したので俺は明かりを少しだけにして『もう寝るぞ』という意味を込めてベッドに入りトントンと掛け布団を叩いてここに入るように目線で伝える。鈴谷もとは思ったがさすがに昨日まで睨まれていた相手だしもしかしたら鈴谷は我慢してくれているだけで今でも俺の事が嫌い…ってそれは本人が否定してたけどそれでもまだ俺らの昨日までの関係が尾を引っ張っているためなかなか『一緒に寝よ?』なんて言えなかった。
「もう!おにぃちゃんはどんだけ妹と早く寝たいんですか!?」
『一緒に寝たいわけないだろ』と言う言葉を心の中だけで叫んでおく。俺はこんな結論を出したことが申し訳なくなり鈴谷の方をそっと見る。
「もう、いいよ…私の事見捨てないって言ってたのに…灯夜くんの嘘つき…グスッ」
鈴谷はいつの間にか布団を敷いていて横になって俺と逆側の方向を向いていた。その独り言絶対悪意が潜んでるだろ!俺は泣いている女の子を見捨てられないしましてやその相手が鈴谷ならなおさら見捨てられない。俺はどうすればいいんだ!?と思いながら冬雪と一緒に寝ている布団をはいで鈴谷にそっと近づく。
「なぁ鈴谷、俺と一緒に寝るか!?」
「え…いいの!?」
鈴谷は俺の方を向いて、涙を流していた。俺は今日女子を泣かせすぎな気がする。これは反省しよう。
「うん、いいよ、ただし一緒に寝る代わりに変なことするなよ!?」
「うん!分かった!」
鈴谷を立ち上がらせて一緒に寝ようとすると鈴谷はいきなり俺に抱き着いてきた。
「ありがとうね!灯夜くん!ちゅっ!」
「ちょっと何やってんだよ…」
「眞尋さん!私のおにぃちゃんの頬にキスなんて…」
これは…また話がめんどくさくなる…と思ったので俺はもうそれには触れずに明かりを完全に消して布団に入ることにした。
「鈴谷は結局一緒に寝ないのか?」
「寝るけど…その…心の準備がまだ…」
そんなのにかまっていられる時間じゃないので俺は鈴谷に早く入るように催促する。
「それなら、一人で寝るか?」
「うそうそ!私も一緒に寝るから!」
鈴谷は緊張しているのだろう…恐る恐るといった感じで鈴谷は俺の布団に入った。
「それじゃあ、お休み」
「うん!お休みおにぃちゃん!」
「今日はいろいろとありがとうね!これから末永く宜しくね灯夜くん!それじゃあお休み!」
結局俺らがベッドに入ったのは夜中の2時だった。
今後の投稿に関してあらすじにも書かせていただくのですが今後は
水曜と土曜と日曜のいづれも23:00に投稿させていただきますので今後ともこの作品を宜しくお願いします。そして毎度の事ですがこの話の続きが気になったり面白いと思ったらブクマとポイント評価を宜しくお願いします!