20.私のアプローチ大作戦決行です!【中編】
「お、帰ってきたか!琴音、もう既に注文しておいたから早くケーキを選びに行かない?」
灯夜くんは私のことを待っていてくれたのか椅子に座っていました。注文までしてくれていたらしいのですが灯夜くんは何故か席に座っていました。それってもしかして…
「え!待っててくれてたの!?」
「あぁ、ケーキを選ぶわけだし、それなら二人で一緒に選んだほうが楽しいかなと思って…」
そういう気づかいをするから眞尋さんと冬雪ちゃんが灯夜くんの事好きになっちゃうんじゃん!
もぅ!それなのにこの私の気持ちに気づいてくれないのはズルいと思うんだけど!灯夜くん!
「ありがと!それじゃあ、さっそく選びに行こ!」
私は灯夜くんの袖を掴んでケーキを選びに行きます。実はこの袖を掴む瞬間も緊張しています。今までそんなことしたことなかったですし…でも、最近は灯夜くんに触れる機会が増しましたし!そういう意味では自分の気持ちに向き合ってよかったな!なんて思ったりもしています。
「灯夜くんは何を選んだの?」
「ショートケーキとフルーツタルトだよ」
私が灯夜くんの皿を見てみると、女の子みたいにショートケーキとカットされていたフルーツタルトが綺麗に乗っかっていました。それじゃあ、私はこの後のためにわざとチョコレートケーキとモンブランを乗せようかな!?
「へぇ、琴音ってモンブラン食べたりするんだな、いつもは欠かさずショートケーキ食べるのに…」
お!食い付いてくれました!しかも、私の好きなケーキを覚えていてくれてたみたいです!
「折角、食べ放題なんだからいろんなケーキを食べないと!だから灯夜くんのショートケーキも少しだけ食べさせてね!?」
「まぁ、それくらいなら全然構わないけど…」
「灯夜くん、ありがとうね!それじゃあ席に戻って食べようか!」
ふふっ!灯夜くん!あなたは今、私の罠にハマってしまったんですよ!
この後のことを考えると…ニヤケが…止まりません!えへ!えへへへへっ!
私と灯夜くんは席に座り、ケーキを食べます。途中、いろいろケーキについて話をしていたので食べ始めてから15分も経っていました。仕掛けるならそろそろですね!
「このショートケーキも相当美味しいんだろうな!」
あ!灯夜くんが今!ショートケーキを食べ始めました!よし!アプローチ大作戦!実行です!
「ねぇ、灯夜くん!そっちのショートケーキも食べさせて!」
私は机から身を乗り出す感じで灯夜くんに近づきます。灯夜くんが少し戸惑っていますね!でも、灯夜くん!これはまだ序の口なんだよ!
「え?琴音?急に近づいてきてどうしたんだ?」
「あ~~~ん!」
『あ~~~ん!』と言いながら私は瞳を閉じて灯夜くんが『あ~~~ん!』してくれるのを待ちます。これこそ名付けて『あ~~~ん!』大作戦です!
さぁ!灯夜くん!私のことを意識してください!
「おい、何待ってんだよ、そんなことしなくてもあげるから!皿をこっちに渡してくれ」
灯夜くんが戸惑っていますね!しかし、残念ですが灯夜くん!私は『あ~~~ん!!』してもらうまで諦めないですからね!
「あ~~~~ん!!」
「おい、ちょっと本当に早くその体勢やめてくれ!」
もう!私が何をして欲しいか気づいてるくせに!
「あ~~~~~ん!!!」
灯夜くんは諦めて『あ~~~ん!』してくれる気になったのでしょうか!溜息を吐いて私のことをじっと見てきました。
「もう分かったよ!でもそれをしたら間接キ…「あ~~~~~~ん!!!!」」
私は間接キスという言葉を言わせないように食い気味に言います。だって、言われちゃうと意識しちゃって恥ずかしくなっちゃうから…
「本当にしてもいいんだな!?後になって後悔しても知らないからな?」
後悔なんて絶対にしませんから!さぁ、早く来てください!
「はい、琴音…」
灯夜くんは優しく私にショートケーキを『あ~~~ん!』してくれます。嬉しすぎます!『今日私、死んじゃうんじゃないですか!?』と思うくらい幸福感で胸がいっぱいです!でも、これだけじゃあまだ私の目的が達成されたとは言えません!しっかりと灯夜くんにお返しをしないと!
「灯夜くん、チョコレートケーキ食べるよね!?はい!あ~~~ん!」
きっと灯夜くんはこの顔を見る限りまさかの展開に驚いているのでしょう。でも、私の十数年秘めていた妄想に比べればこれは優しい方です。
「いや、俺はいいから!」
灯夜くんが断ることは想定済みです!十年近く一緒にいる幼馴染を舐めないで欲しいです!
「ねぇ、灯夜くん、今はデート中だよ!?」
本当のカップルがこんなことをするのか私は知りません。彼氏がいたことがないので。告白されたことは何回もありますが灯夜くん以外の男の人に興味がないので断っていますし…だからこそ、こういう事を好きな男の子と一度は一緒にやってみたかったんです!
「わ…分かったよ…」
灯夜くんは負けを認めて目を閉じて私の『あ~~~ん!』を待っていました………
って!灯夜くん!口開けて!『あ~~~ん!』できないじゃん!
どうやって口を開けてもらおうかと思った時、私は一つの策を思いつきました。
…あ、でも…それなら…
私は『あ~~~ん!』しようとするのをやめて灯夜くんの顔に近づきます…
まぁ、もともとは灯夜くんが口を開けなかったのが悪いわけですし…
ダメだとは分かっていますけど…そんな顔で待たれたら抑えきれないじゃないですか…!
私はそっと灯夜くんの唇に近づき…そして………
「ちゅっ!!」
私は灯夜くんにキ…キスをしてしまいました。
20話です!
まだまだ話は続きますのでブクマとポイント評価をよろしくお願いします。