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15/30

15.灯夜くんは重罪です!


「今日は視線がすごいね!いつも以上だよ!」


学校に行くと多くの生徒が俺と眞尋と琴音のことを見ていた。偶に周りから『なぜあんな協調性のかけらもなさそうな奴と雨宮様が…』と言いながら妬ましそうに俺のことを見てくる生徒もいた。


『あれ?そういえば、さっきまで隣にいたのに眞尋のやつどこに行ったんだ?』


そう思い俺は先ほどまで隣にいた眞尋を探すがどこにもいなかった。


「眞尋はどこに行ったんだ?」


隣にいる琴音に聞くと琴音は『ふふふっ』と微笑を浮かべた。


「眞尋さんならついさっき、『恥ずかしいから先に行く』って言って走って先に行っちゃったよ?」


確かに、眞尋の場合俺のことが本当は嫌いなわけで…そんな男と一緒にいたなんて噂を立てられちゃいやだよな。まぁ、俺と一緒にいるところなんて誰にも見られたくないだろうし…眞尋の行動は当然といえば当然だな。


そう結論付けて考え事を終わらせると琴音が急に近寄ってきて上目遣いで話しかけてきた。


「ねぇ、私達さ、今二人きりだしさ…手…繋がない……?」


ふいにとんでもないことを提案する琴音の顔を思わず二度見してしまう。いや、周りの子の視線を考えたら絶対に手をつなぎたくないんだけど…


「いや…それは…ちょっと…」


俺が断ろうとすると琴音は怒っていますアピールのつもりなのか『むぅ~!!』と言って頬を膨らませた。いや、それをされても絶対に嫌だから!手をつないだ場合の代償がでかすぎだろ!


「そうだよね、私の手って汚いもんね…」


ふいにしゃがみ込み『え~~ん!』と泣き始める琴音。いや、そんなウソ泣き通じないから!と突っ込めればよかったけど、どうやら琴音の嘘なきはチート級の効果があるらしい…


「おい、あの雨宮様を泣かせてるあの最低野郎はどこのどいつだ!?」


「琴音ちゃんを泣かせちゃうなんて…あの人なんてひどいことを言ったの?」


と、好きかって言いたい放題…何で琴音のウソ泣きってわからないんだ?普通分かるだろ!恐ろしい…学園の三本指に入る美少女様の演技。まぁ、ともかくここはいち早くこの場から逃げる事が先決だな!…


「…汚いとかの話じゃ無くてな?」


「じゃあ、私と手…繋いでくれるの?」


どうやら、琴音は俺と手をつないで登校することを諦めていないらしい。下から俺の顔を覗き込むようにして俺に言ってきた。いや、何でうっすら涙目になってんだよ。『か…可愛い』と不覚にも思ってしまった自分を殴りたい…


「だから…それは…」


「え~~ん!灯夜くん…なんでそんなこと言うの!?」


おいちょっと待て!ここでその泣き声を出されると…


「おい、ちょっとこの荷物持っていてくれないか?雨宮さんを泣かすあの野郎を一発ぶん殴ってやらないと気が済まねぇ」


なんか一人の男の子が、近くにいた友達らしき人物にカバンを預けて俺の方に近づいてきたんだけど…これ、野郎って俺のことを指してんだよね?もしかしてヤバいやつ?殴られたりしちゃうやつ?


「琴音、こっちに来てくれ」


俺は琴音の手を掴んで猛ダッシュでその場を後にしてあまり人気のない体育倉庫の前で手を放す。


「ごめんな、急に走っちゃって…顔赤いぞ?大丈夫か?」


「と…と…と…」


『と…』と連呼し、顔を真っ赤にして下を向く琴音。


「…と…灯夜くんが急に手をつないできたりするから!…」


あ、そうか…そういえばあの時は無心でその場から逃げることばかり考えていたから気が付かなかったけど手をつないだのか…

もしかしてその事で怒ってるのか?


「その…ごめんな…手…繋いだりしちゃって」


「うぅ!そんなつもりで言ったわけじゃないの!灯夜くんはもう少し乙女心を理解して!」


何故か怒られてしまった…そんなつもりで言ったんじゃないとしたら何のつもりで言ったんだ?俺には全く分からない。てか、俺、今さっき手をつないだんだよな?それだったら…


「ちなみに、さっき手をつないだわけだし琴音のお願いは果たされた事には…」


どう言い返されるか分かっていたけど一応聞くと琴音は再度顔を真っ赤にして顔を近づけてきた。


「ならないよ!ノーカンだよ!ノーカン!」


琴音は分かりやすく先程と同じように頬を『ぷく~!』と膨らませて怒ってますと俺にアピールしてくる。


「灯夜くん!私は今怒っています!なのであなたは罪を償うべきだと思うのです!」


おっと急に罪とか言い始めたぞ?…これは、何を要求してくるつもりなんだ?


「ちなみに罪状は…?」


「えっと…ふいに手をつないだ罪と鈍感主人公罪の二つです!」


今明らか考えてたよね?俺絶対無実なの分かってて有罪判決にしたよね!?


「この二つの罪は非常に重い!重罪です!なので灯夜くん!あなたには放課後、私と一緒に帰る時私の手を握りながらデートという罰で許してあげましょう!」


これ、ただの自己満足だよね!?しかも、公開処刑という意味では罰めっちゃ重いし…ていうか、俺と放課後一緒に帰るのって決まってたんだな…


「え…それは…何かの冗談なんだよな?」


冗談で言っていることを信じて俺は聞いたんだけど…どうやら本気らしい…


「本気だよ!だからダメだからね!?先に早く帰っちゃ…!」


何故考えていたことがバレた?だけど…あの視線を感じながら帰るのは流石に俺の心が…


「じゃあさ、せめて、同じ高校の生徒がいなくなってからっていうのはどうだ?」


俺の提案に難色を示す琴音…いや、琴音もあんな視線を感じながら俺なんかと手をつないでいるところなんて見られたくないだろ!?


「むぅ~!しょうがないからそれでいいよ!」


『はぁ、よかった』と思い俺は安堵のため息をつく。琴音と手をつないでいるところをクラスメイトとかに見られたら俺の学校生活の終了が確定してしまう…いや、今日のあの出来事の時点で俺の学校生活は終わったも同然か…まぁ、それは良いとしてなんでそんなに嬉しそうなんだ?琴音は。


「放課後が楽しみだね!」


「そりゃよかったな…」


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