13.ねぇ、私のことを名前で呼んで?
寝不足であまり寝られなかった日の次の日の朝。俺は、その日早く寝たということもあり、冬雪もまだ起きていない時間に目覚めてしまった。
二度寝するのもありだとは思ったけど、二回目にちゃんとした時刻に起きれるか不安なので、起きようと思い、顔を洗ってから一階にあるリビングにとりあえず向かった。
「あ、鈴谷おはよう…ていうか昨日はそんな早く起きてなかったよな?どうしたんだ?」
鈴谷は俺の顔を見るや否やすぐさま下を向いて、何とかギリギリ俺に聞こえる小声で「おはよう」と返してくれた。
「その…今日からお弁当を作ろうと思って…」
ん?なんでそんなもじもじしながら喋るんだ?しかも、何故か恥ずかしがってるし…
「へぇ…」
こんな時俺は何て言えばいいのだろうか、美味しそうだね!と言うべきなのか…それとも、栄養面をしっかり考えて作られてるね!と言うべきなのか。鈴谷の作ったお弁当が気になったので俺はそっとお弁当を見てみる。え…普通に美味しそうなんだけど…
「あのさ、灯夜くんはいつも昼食を購買で済ませてるよね?」
意外と俺のことを鈴谷は普段から見ていたらしい。クラスの女子はきっとだれ一人俺が普段昼食を購買で買っていることを知らないだろう。ていうか、なんで鈴谷はそんなこと知ってんだ?
「偶に冬雪に作ってもらうけど…まぁ、うん、いつもはそうだけど…」
「えっと…その…朝ごはん準備したから先に食べていいよ!」
顔を真っ赤にしている鈴谷は話を逸らし朝食を俺に渡してくれる。
「ありがとうな、鈴谷!」
「違うでしょ?これから兄妹になるんだよ?」
違うってどういう事?何が違うと言うんだ?兄妹になる?それはそうなんだけどさ…何が言いたいのか俺にはさっぱり分からなかった。
「え!?違うって何が?」
「もう!何で分からないの?眞尋だよ?私の名前…今度から私の事はちゃんと名前で呼んで欲しいなぁ」
あ、そういう事か!確かに兄妹になるのに苗字呼びってのも変な話か。
「分かったよ、今後はちゃんと名前で言うよ…」
俺が、女子の名前を呼ぶのは琴音と冬雪を除いて初めてなので緊張が半端じゃなかった。なので俺は約束だけして二階にある自室に戻ろうとしたんだけど…なんで俺の袖を引っ張るのかな?
「ねぇ、今呼んでくれないの?」
やばい…どうしよう。女子を名前で呼ぶのって最初は本当に緊張するんだよなぁ…だから徐々に慣れようと思ってたのに…今言わないとダメなのか?
「え…それってどうしても…今なのか?」
「うん、今がいい…」
俺は唇を震わせながら、名前を少しずつ言っていく。
「その…ま…ひ…ろ…」
俺のこの謎に片言な呼び方に満足じゃない様子の鈴谷は、頬を膨らませて俺の顔に近づいてきた。
「ねぇ、今度はもっと早く言って!?」
からかわれるかもしれないのでとてもじゃないけど、【緊張してなかなか言えないんだよ!』とは言えなかった…
「ま……ひ……ろ……」
「むぅ!じゃあ、今度は眞尋、今日も可愛いよ!って言って!」
なんだよその完全にカップルみたいな言葉!その言い方だとまるでいつも俺が鈴谷に可愛いって言ってるみたいじゃねぇかよ…あっ間違えちゃった、眞尋か…
「それだけは、いやだぞ?」
「ダメ!だって私今日、頑張ったんだよ?お弁当作ってさぁ!そんな私のお願いを叶えてくれてもいいんじゃないかな?」
それを言われると逃げ場を失ってしまう。やばいどうしよう、本当に言わないといけないのか?それだけは何是が非でも回避したかったんだけど…もう、観念するか…
「分かったよ…」
「うん…は・や・く!」
急かされたが何とか平常心を保ち俺は、すっと鈴谷の顔を見る。
「その…眞尋…今日も可愛いよ…」
俺は絶対赤面してたと思う。何とか言い切り俺は鈴谷の顔を見るのをやめる。
「えへへっ!ねぇ灯夜くん…もう一回言ってくれない?」
まさか、二回目の催促が来るとは思わなかった。流石に二回目は精神がもたないんだけど…
「もう言ったからいいだろ?」
「ううん!ダメだよぉ!さぁ、もう一回!」
「眞尋…今日も可愛いよ…」
「もう!灯夜くんは口がうまいんだから~!」
二回目でも緊張したけどなんとか言えた様でよかった…
もう、時間通りに投稿するのは無理ですね…なので一応これまで通り23:00に投稿できるように頑張りますが投稿されていなくても朝起きたら投稿されていると思うので気にしないでください。本当にすみません。