ドラゴンハンマー
俺は、異世界転生者だ。
10歳のある日唐突に前世の記憶を取り戻した。
神は言っていた、「人のTOPクラスの身体能力と無限アイテムボックスを上げるからガムバッテね☆」と
そして、残念ながら異世界なのに無限アイテムボックス以外の、異能とか魔法的な能力は無かった。
しかし、あれだな異世界TOPクラスの身体能力でNINJAを目指して訓練、いや修業か?をやったが。
凄かった、マジで、いやマジで!
YouTubeとかニコ動とか好きで、よく見てたがエクストリーム系の動きが余裕
バキじゃ無いが凄いNE!人体!
本気で、異世界最強とか気が狂った奴しか居ないのか?とか思ったもん。
まぁ、それでも所詮は子供だから 『俺はやれる!英雄に成る!』つって、14で家を飛び出した。
マジ厨二でした。
それからは、定番の冒険者ギルド(幸いにして存在した)で頭角を現し二十歳で一生遊べるだけの資産を貯めこんだ。
後は余剰資金で商会を設立して、その会社を貴族睨まれて二進も三進も行かなくなってた『出来る商人』に任せ、俺は純利益の3%を貰って左団扇だ。(商会は、複数の国で複数存在する)
で、今日は久々の労働だ。
内容は、貴族を凹ませる簡単なお仕事(異世界だからこそ貴族は偉いです)
そこのお坊ちゃんが、商会の看板娘に目を付けたのが発端では有るが、別に普通に口説いて恋人やら愛人やら妾にするなら、全く問題無かったんだが。
この坊ちゃん地位を笠に着て無理を通そうとした訳だ。
で、この坊ちゃん正妻の男児ながら上に同腹の姉が5人、更に妾腹の兄も4人、しかも長男は成人して既に王認の後継届け済みで誕生した恥掻きっ子(正妻腹)、甥の一つ下と言う非常に微妙な立ち位置で、更に正妻が甘やかしたので、お気楽ボンボンになった訳だ。
オマケに親族会議で、坊ちゃんの子供と長男の孫を娶せて、嫡流に戻すと確約することで正妻の不満の解消も図られている。
つまり、この坊ちゃん甘やかされた末っ子で、責任の無いうえ我侭放題の手の付けられないお貴族様なわけだ。
そこで、領内に新規出店した我が商会で見初めたのが看板娘の従業員、いや別に正妻にしろとかシリアスな話では無く、嫌がってるし諦めろよという話なんだが。
今まで断られた経験が無かったのか、変な執着心を刺激したらしく商会へ圧力を掛けて来た。
そして、いま俺の前には・・・・・・
元Bランク冒険者にして、坊ちゃん(正妻)の子飼いの護衛の屈強な戦士が
「お嬢ちゃん、素直に坊ちゃんの所にいかねぇか? 贅沢もできるし後継者でも無いから責任もそれほど無いし子供が生まれても、養育は領主様が責任もって遣ってくれるし」
とか、言いながら商会の看板娘に言い募っている。
おろ?割と苦労人なのか?
Bランクなら、実績と実力が有り それまでにそこそこの蓄えがあるから貴族相手でも物怖じしないのが一番の利点なんだが。(最悪、他国に逃げてもやって行ける)
対する受付嬢
「イヤよ、あんなヒョロイもやしっ子、年明けにはヘラクレス(ゴリゴリマッチョ)との結婚も控えてるの、迷惑なんです」(まさかの筋肉スキー)
で、ここまで拗れるとどうしようも無い所だが、中世風封建社会にはある制度が生きている。
その名も『決闘裁判』!
本人及び代理人による決闘を行い、勝った方の言い分が通るという単純にして野蛮な解決法である。
で、もやし坊ちゃんの代理人が件の元Bランク、受付嬢と言うか商会の代理人がオーナーたる俺な訳だ。
「とっとと終わらせてくれ、彼女との蜜月の邪魔者を排除したらママにボーナスを頼んでおくから」
「坊ちゃん、何度も言ってますが無理矢理じゃ心までは手に入りやせんぜ」
「五月蠅い! お前はあの男をぶちのめせば良いんだ!」
うぅん、コイツわりと良い奴なのか?
まあ、それでも従業員の方が大事だしね。
でも、一応は言っておくか
「なぁ、おっさん辞めねぇか?好きでやるんじゃ無いだろ?」
「イヤ、俺も乗り気しねぇがお前さんみたいな若造に引いちまうと後々に響くんでな。少しばかり痛いが我慢してくれや。
それとも、良い感じの落とし所があれば引けるんだが、如何にかなんのか兄ちゃん」
B級のおっさんが引いておかしく無い建前と状況かぁ おし、アレ出すか!
専用のウェポンバッグから、引き出したのは。
ハンマー本体は、素材を生かした鋼龍の頭蓋を金より重い魔重鋼で満たし、外殻は龍甲と龍麟で飾られている。
鋼龍の大腿骨を鍛えた柄を、オリハルコンスピアで貫いた跡に叩き込んだ。
ドワーフの匠に『ふざけんな!』と罵倒された一品
自慢の『ドラゴンハンマー』だ
引き出された得物をみて、固まったおっさんの顔色は青くなった後 紙の様な白になって俺の正体を悟ったのか、呻くように「勘弁して下さい」と跪いた。
まぁそうなるわな。
俺の戦歴で一番の大物である。『邪心の真神』を叩き潰した真正の神殺しの武器、人の作りし越神器。
教会に公式の聖者とされた、今代の勇者の得物だからな。
なぜ?こんな物騒なものを造り出したのか
いやそれほど大した理由ではないんだ、ただ単純に俺の筋力に耐えられる得物が欲しかっただけなんだ。
銅剣が曲がり 鉄剣がヒシャゲ 鋼の剣が折れ ミスリルの剣が砕け、オリハルコンの剣が溶けた。
最後に龍躯を活かした龍素材を使った『邪砕屠神槌』(ドラゴンハンマー)が造られたわけだ
俺は、『邪砕屠神槌』(ドラゴンハンマー)を担ぎながら
「じゃ、これで終わりということでよろしく!」
と、告げたのである。
ボンボンは、騒ごうとしたようだが、おっさんと他の護衛に物理で止められていた。
おれは、今代の勇者『ドラゴンハンマー』
強すぎて表に出て来るなといわれた強者、
たまにアホウと戯れるだけの投資家、
時々、度を過ぎた悪党を物理で消去する簡単なお仕事をこなしている。