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ポーカーゲームの推理

1

星渡「はい皆さまこんにちは。毎度おなじみの、ポーと」

阿久津「カー。二人合わせて」

星渡.阿久津「ポーカーゲームと申します」

阿久津「拍手、少なっ。馬鹿にしてんのか」

星渡「おい、こら、お客様に向かって失礼な」

阿久津「ごめん、怒らないで。エーンエーン」

星渡「まさか泣いてんの?幼稚園児か?」

阿久津「あっ、そっ」

星渡「立ち直り早っ。というわけで僕らはコンビを組んで一年足らずの駆け出しお笑い芸人でございまして。こちらのムチウチになるくらい見上げるほどの背高ノッポが阿久津。

僕が星渡と申します」

阿久津「あっ、ずるい!こっちはムチウチなのに君には比喩がない!」

星渡「はっ?ヒユ?」

阿久津「そう。春に咲く土筆にも似た低身長の星渡です、とかさ」

「つくしかよ、まあいいや。次行くよ。そして我らのコンセプトは」

「ジャ、ジャジャーン!笑いとミステリーの融合です!」

星渡「融合とは周知の通り解け合って一つの物になる事。世界に溢れている謎を、お笑いに解けこませていくという、新感覚のコントをめざしてます。

おい!お前、鼻の下伸ばしすぎ!」

阿久津「だって、ほら、あそこのお客さん、眠い時や緊張しすぎた時に不随意に起こる、大きく口を開けて深く息を吸う呼吸動作をしてらっしゃる。

あまり大きく口を開けすぎると顎、外れますから気をつけて」

星渡「自分の知識を、さも自慢げにひけらかしますチックな回りくどいセリフ、それって、もしかして欠伸の事か?」

阿久津「はーい、よくできました、大正解」

星渡「大正解じゃないだろ?お客様に失礼だろ。すいませんね。

こんな二人ですが、これからも頑張っていきますので宜しくお願い致します。

それではそろそろお時間がきたようで」

阿久津「待て」

星渡「はっ?またかよ。今度はなんだ?」

阿久津「最後に一言」

星渡「一言だな?いいよ」

阿久津「出会った時や別れの際に相手の健康状態を伺う意味合いを込めて交わされる挨拶。

京都の宮中で発生して、近代以降は主に山の手言葉として使われた。さあ、なーんだ」

星渡「どこが一言だよ。今度はナゾナゾかよ。

知りませーん」

阿久津「答えはごきげんようさ。ではシーユーアゲイン、ミステリー」

2

十月五日 木曜日

胸の高鳴りは、恋愛感情が引き起こす作用ばかりとは限らない。

小瀬口瑠美(おぜぐちるみ)にとっては、病的なほど最悪な心の昂りに他ならないのだ。

いま彼女がやるべきは、自分のバックの中身を懸命に搔き回す!それに尽きる。

ずっと唱えてきた呪文を胸の内でリピートしながら、ひたすら時が過ぎるのを待つのである。

<ハヤクウセロ ワタシハジユウ ハヤクウセロ ワタシハジユウ・・・・・・>

「おい!いつまで待たせんだっ!たった一枚の領収書、さっさと出せって!」

再び背後から怒声が飛んだ!夫の輝久(てるひさ)だ!

と、次の瞬間「うっ!」激痛が瑠美の全身を貫いた!

昨夜バットで殴打した臀部を、彼が再び蹴りあげたのだ!

細身の体が前方に倒れこむ!同時にバックから何かが飛び出した!束の間彼女は目を剥いた!反射的に掴み、バックに押し込めた。

「お前さ、自分を何様だと思ってんだよ?

ライブハウスで呑気にコントだ?爪まで真っ赤にしやがって。結構な御身分だよな?専業主婦のくせに。

かせいでるのはこっちだぜ。無駄遣いは許さねえ!

どうせ領収書なんてとっくにポイだろ?

お前、俺が憎いか?悪態つかれて暴力振るわれて。

呪ってるか?ふざけんじゃねえよ。

俺は被害者だ。そうだろ?ひとり息子を奪われて。

高史(たかふみ)があんな事にならなきゃ、俺だってこんな風にならなかった。

お前はな、俺の人生をズタズタにしたんだ。

だからお前には一生かけて償ってもらうんだっ!

おれの奴隷としてな、フン」

勝ち誇ったような顔で瑠美を睨むと、彼はソファに座り煙草に手を伸ばした。

<何が奴隷よ!もう、たくさん>瑠美は腹の中で毒づいた。

唇を噛み締めながらソファを盗み見た。

結婚して六年余り。体重も五、六キロは増えたのではなかろうか?昔の面影は微塵も感じられない。

トレーニングウエアから見苦しくはみ出しているのは、たぷたぷとした贅肉だ。

チャームポイントだったえくぼも、今ではむっちりとした顔面にケロイドの如く張り付いて見える。

<もう、限界だ>瑠美は奥歯に力を込めた。

そうしないと涙が吹き出しそうだった。

輝久との出会いが思い出された。後から考えてみるとどこかリアリティのない妙なものに思えてならなかったのだがー。

突然すぎるびっくり箱のような出来事の連鎖!

もちろん恋愛の馴れ初めなど千差万別だろう。そう思い別段気にも止めないできたのだがー

それは七年前、瑠美が知り合いが経営するネイルサロンで、ネイリストとして働いていた時の事だった。


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