22、体育教師、川田武は女子高生が大好き
やった。やったぞ。
ついに念願の夢が叶った。
女だらけの秘密の花園、女子高への潜入。
女装して女子高へ入学し、ハーレムを築くという設定のエロゲーが俺は大好きだ。
だが、ゲームはあくまでゲーム。そんなこと現実には不可能だ。だから俺は“裏技”を使うことにした。
生徒ではなく、教師として合法的に女子高へ通うことにしたのだ!
しかも俺が採用されたのはただの女子高じゃない。
全寮制の高偏差値お嬢様学校、白薔薇女子高等学校。
一体どんな生徒がいるのか。さぞかしお淑やかで可愛らしい花のような女の子がいっぱいなんだろうなぁ……
なんてのんきなこと考えていた過去の自分を縊り殺したい。
「はぁぁぁ~い……じゃあみんな適当に走っててぇぇ~……」
俺は校庭に設置したビーチチェアに寝そべりながら、生徒たちにそう指示をする。
「またかよ! 適当すぎるだろ!」
「ちゃんと授業しろ!」
「なんだその椅子!」
「教師が仕事中にジュース飲んでんじゃねぇよ!」
うるさいガキ共だぜ。
俺は女子高生の輝く汗を眺めるために必死こいて教師になったんだ。
こんなクソ暑い中、あんな女装男共の太い脚を視界に収めるために勉強したんじゃねぇ。
っていうか、なんで誰もこいつらを退学にさせようとしないのか。
俺は何度もほかの教師に訴えたのに、誰一人俺の言葉に耳を貸す者はいなかった。
『川田先生、彼女たちは自分の体の成長に敏感な時期です。背の高い生徒、小さい生徒、体格の良い生徒、小柄な生徒。いろいろな子がいますが、それらはみんな生徒一人一人の個性ですよ。体毛の濃い生徒だっているかもしれませんが、この年頃の女の子たちはホルモンバランスが整っていなくて』
『あの……そういう問題じゃなくてですね。どう考えてもこの学校の生徒ほとんどおと――』
『川田先生! 今のは聞かなかったことにします。くれぐれも生徒にそう言った発言はしないように』
『ですが……』
『そういう性的な発言に厳しい世の中です。教師が生徒にそんな発言をしたら……下手すれば新聞沙汰ですよ。この学校の名に傷がつくことはもちろん、セクハラ教師として名前が載ればあなたも教師が続けられなくなります』
思い出してもむかつくぜ。
なーにがセクハラだ、ふざけやがって。
だがこんなとこで職を失うわけにはいかない。転職したいのはやまやまであるが、こんなに早く仕事をほっぽり出したら履歴書にも傷がつくしな。
というわけで、俺にできるのはなるべく生徒を視界に入れないようにしながら適当に授業をすることだけである。
「あの、川田先生」
「ああん?」
渋々視線を上げる。
俺の頭上にいたその生徒の姿に息が止まった。
「あ……あわ……」
「あのう、どうせ授業しないならランニングじゃなくてドッジボールやっても良いですか?」
はにかみながら、その小さな胸にボールを抱く少女。
そう、少女だ。ほっそりした手足、すべすべした白い肌、風になびくポニーテール。
あの娘の首筋を汗が伝ったら、どんなに素敵だろう。
「あの、先生?」
「あ、いや、うん……」
突然のことにどうして良いか分からず、俺はただ頷くことしかできない。
だが、彼女にはそれで十分だったようだ。
「ありがとうございます!」
彼女は笑顔でそういうと、後ろにいたクラスメイト達に声をかける。
「みんな、許可出たよ。ドッジボールやろ!」
彼女の一言に、女装男たちは歓声を上げる。
「うおおおおおおッ!」
「さっすが柏木さん」
「イエー! ドッジボール!」
子供というのはどうしてこうドッジボールが好きなんだ。
いや、無理もないか。
この地獄みたいな環境にあんな可愛い娘がいれば、誰だってテンションが上がる。
そう、誰だって。
******
「と、いう訳で先生テンション上がってプール作っちゃいました。来週までに水着を用意するように」
俺の言葉に生徒たちがざわつく。
一番気になるのは柏木さんの反応だが……おや、困惑しているようだ。
彼女はゆっくりと手を上げる。発言を許可すると、恐る恐るといった風に口を開いた。
「せ、先生? この学校にプールはないはずですけど」
「だから作ったんだって。みんな水泳の授業やりたいでしょ?」
微妙な表情の柏木さんとは対照的に、猿のように雄叫びを上げる生徒たち。
こいつら本当に女子高生演じる気ある?
まぁそんなことは良い。
俺は柏木さんの水着姿が見られればそれでいいんだ。
彼女の肌はどんなふうに水を弾くのだろう。
ようやく始まったぜ……俺の女子高生活が!